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女聖騎士でしたが魔王の娘によって暗黒騎士にされてしまいました  作者: ヘラジカ
第十章:魔侯ライト・ヌーム

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10-4:秘密、バラしちゃいます

 城の建設について話し合ってから数日。

 その間、私たちは自分たちの町のダンジョンの深層でモンスターを倒していた。


 任務というよりは日課のルーチンワーク。

 私や町長の息子は、次に何らかの戦闘に備えてといったところだろうか?


 一方の魔王の娘は、町の衛兵が巡回していない深層の視察が主である。

 ダンジョンの中に入っている冒険者が上手くやっているかの確認。

 あるいは、ダンジョン内に不具合がないかどうかの管理業務だ。


 これらを三人で協力して行っているわけだ。


 そして、各々の仕事が終わった時、町長の息子が魔王の娘に話しかけた。


「ところで、エイラムさん。城の建設の件だけど」

「もしかして、作り始めていいの」

「驚いた、よく分かったなあ。父上との話が上手くいったのだ」

「それじゃあ、早速ドワーフさんたちに工事を頼んじゃおう。ダンジョンの保守も特に問題無さそうだし」


 どうやら、事は進んでいるようだ。

 だがそれは、暗黒騎士の正体を町の皆に明かす日が近づいているという事である。






 次の日、早速工事が始まった。

 だが、突然の工事、しかもダンジョンの真裏。

 当然ながら町の住民たちが困惑している。


「アイスくん? お城の工事始めたのはいいけれど、町の皆に話が伝わっていないみたいだけど」

「だから、説明会を町長から行う事になった」

「うーん、普通逆じゃない?」

「工事を始めてからの方が、それだけ町民の関心を引けるだろ?」

「それもそっか」


 魔王の娘は納得したみたいだけど……。

 その説明会で、まさか?


「エイラムさんも説明会に出るだろ?」

「当然!」

「それじゃあ、舞台上での説明よろしく頼む」

「えっ……? せ、説明だよね? わ、分かってたんだからッ!」


 やはり、魔王の娘の事もそこで説明するのか。

 と、なると私の事も……?


「ライト様も、宜しくお願いします」

「それは──ですか?」

「そ、それはエイラムさんの事を発表した時の結果次第です。上手くいけば……」


 つまり、それは当日次第というわけか。

 確かに、魔王の娘の事を発表して会場が混乱したら、私の正体どころではない。

 心の準備はしておくにしても、期待は……しないでおこう。






 そして、説明会の日。

 参加人数の関係上、城の工事現場前に集まる事となった。


「お城にはこういう時に皆で集まる広間も作らないとだよ」


 と、魔王の娘が不満そうに言う。

 野外での集合が不満だったようだ。

 だが──。


「そろそろ始めようか」


 どうやら、町長が説明を始めるようだ。


「えー、この城を着工するにあたって、町の皆に伝えなければならない事がある」


 町長の不安を誘う発言に、皆が鎮まった。


「実は、最近中央でいざこざがあった」


 町長のその一言に周りが少し騒めく。

 だが、町長は言葉を続けた。


「簡単に言うと、要は王室内での支配体制に変化があったわけだ」


 間違ってはいない。

 本当は国王を始めとした王城全体が魔王の手に落ちているが……。

 それをあえて伝えないつもりか……?


「それが原因で、ダンジョンを中心とした土地を治める領主が中央から新たに派遣された」


 皆が大きく騒めきだす。


「領主だと?」

「我々の生活はどうなる?」

「ダンジョンの利権を中央が根こそぎ奪うつもりか!?」


 町民たちからすれば当然の心配である。

 だが、町長は町民たちの騒めきに動揺せずに話を続けた。


「紹介しよう。皆もよく知る人のはずだ」

「じゃじゃーん。実はこのエイラムちゃんがそうなのです。色々心配もあるかもだけど大丈夫。町やダンジョンの事は、これまで通り町長さんに任せちゃうんで、皆は今までどおりだから」


 魔王の娘の唐突な挨拶に、皆が固まっている。

 そして、暫くして今まで通りな事に安堵したのか、町民たちの表情が柔らかくなった。


「色々と落ち着くまで隠しておいた方がよかったの、ごめんね」

「何だ、エイラムちゃんがそうだったのか」

「ビックリしたなあ」

「まあ、変わらないなら……」


 これも嘘は言っていない。

 しかも、伝えなければいけない事実のみを伝え、上手く隠している。

 これならば、混乱もなく上手く行けそうだ。


 こうして、まずは魔王の娘について上手く説明できた。


 そして、町長は次の話題へと事を進める。


「実は、もう一つ皆に伝えたい事があるのだが……それについては息子のアイスが説明した方がよさそうだな」

「町長の息子のアイス・アルデヒドです。先程、中央でいざこざがあったと父が説明しましたが、その一件で聖騎士団にも影響がありました」


 町民たちが静かになった。

 何か良くない事があるかもしれないという不安と話の続きが知りたい欲求。

 その二つが混ざりあった結果、一時の沈黙が生まれたのかもしれない。


「そのせいで、ある人物の命が危うくなり、死を偽装する必要が出てきました」


 これは嘘、作り話だ。

 聖騎士の私はそこで一度死に、暗黒騎士として生まれ変わった。

 だけど、この真実は伝える必要はないし、伝えない方がいいと思う。


 町長の息子は、何故こんな話を……?


「ですが、中央も落ち着いて、その人物の死を偽装する必要もなくなりました」


 町民たちが一気に期待のムードへと変わった。

 しかし、私はどうしたらいいのか?


「では、暗黒騎士。兜を外してください」


 !?

 唐突に私に振られた。

 ど、どうしよう?


 兜を外せと町長の息子は確かに言った。

 で、でも兜を外したら私の正体がバレてしまう。

 それは、つまり、この場で正体を明かせという事。


 町長の息子は期待の眼差しで私を見ている。

 町民たちも期待の眼差しで私を見ている。

 そして、魔王の娘は特に止める様子もない。


 私は、恐る恐る兜を脱いで、顔を見せた。


「ライト様!」

「ライト様だ!」

「生きていたのですね!!」


 皆が歓声を上げる。

 少なくとも歓迎されていないという最悪ではない。

 むしろ喜ばれている状態だ。


 しかし、どうしよう?

 何か言った方がいいのだろうか?

 と、とりあえず町長の息子の話には合わせないと。


「ご、ごめんなさい! 私が正体を隠していたせいで皆様を怖がらせていたみたいで」


 私は何を言っているのだ?

 まずは、死を偽装していた事を嘘でもいいから謝罪すべきなのに。

 でも、突然の暗黒騎士に町の人々が怖がっていたのも事実だし。


「そんな。知らぬ事とはいえ、謝らなければいけないのはこちらの方だ」

「それにしても、生きていてよかった」

「まさか、今日という日がこんなに喜ばしいとは!」


 こんなに温かく向かえてくれるとは。

 でも、これは聖騎士だった頃の私の功績によるもの。

 これから先どうなるかはわからない。


 けれど、聖騎士であれば今の状態はありえない。

 あの時、魔王の娘に殺されて二度と起き上がる事もなかったはず。


 ふふっ。

 ならば、私が成し遂げようではないか。

 聖騎士の私以上の事を。


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