10-3:お城、作ります
結局、私は侯爵になってしまった。
だが、侯爵になったところで何も変わらない。
そう、魔王の娘が公爵になったところで何も変わらないとの同じ様に。
城があるわけでもないし、侯爵としての仕事があるわけでもない。
おまけに『魔侯』という地位だ。
そもそも、今の国が魔王の支配下である事を本格的に知らしめなければ無意味。
だから、平和なうちは、今までと何も生活は変わらない。
そう思っっていた。
だが、魔王の娘による新たな提案で、事が動きそうである。
「お城、建てよっか」
魔王の娘の部屋に呼ばれ、お茶をしていた時の突然の発言だった。
その場にいた私と町長の息子は目を丸くして魔王の娘を見る。
「そんな、突然。そもそも何処に?」
「ダンジョン入口の真裏が開いているし、色々と便利だからそこにしよう」
「成る程、確かに……って、そうじゃなくて理由は?」
「私と暗黒騎士が住む場所を作らなきゃ」
えっ、私も?
そうか、侯爵と言っても結局は魔王の娘の補佐。
だから……。
「つまり、エイラムさんが本格的に支配者になると」
「私だけじゃないよ、暗黒騎士と二人での支配なんだよ。魔族側と人間側の代表二人でバランスを保つってわけ」
「な、成る程……」
「本当はアイスくんとの二人の予定だったけど、まあ、これはこれでいいかな?」
──成り行き、か。
確かに、いきなり魔族が支配するとなると町の人々を納得させるのは難しそうだ。
だからこそ、町長の息子を支配者側へと置きたかったのだろう。
それなら、今まで通りのやり方で何とかなる。
だが、紆余曲折あって、その役目が私に変わってしまった。
はっきり言って大丈夫なのかどうか、凄く不安だ。
「そういうわけだから私たちの暗黒騎士、貴女もこれからは領主らしく振舞ってね」
「ですが、そう上手く行くでしょうか?」
「大丈夫、大丈夫。結局は、私たち二人の夫であるアイスくんが表向きのトップに立つわけだから」
「…………」
町長の息子の妻二人であれば、確かに裏から支配するには好都合。
だけど、結局のところ爵位を持っているのは私と魔王の娘。
それで、町長の息子がトップだと言われても町民が納得するだろうか?
「エイラムさん、それは難しいんじゃないか?」
私と同じ様な事を考えていたのだろうか?
町長の息子が魔王の娘に問いかけた。
「アイスくん、どういう事?」
「ダンジョンの真の主を知る俺だからこそ、魔王様の御息女なエイラムさんの事は受け入れられた」
「うーん、そうかなあ?」
「エルフの拠点近くの村に行った時も、説明するのはけっこうギリギリだったと思う」
あの時の町長の息子は流石だと思った。
けれど、流石に町くらいの人数になると……か。
「じゃあ、どうするの? 隠していても事実は変わらないから、バレちゃうかもだよ」
「城は建てる。そして、その時に上手く二人の事を説明する」
「何て説明するの?」
「具体的な事は父上と相談して決める。町長の口から直接話した方がいいからな」
私と魔王の娘には内容は秘密……と。
上手く誤魔化したのか、それとも本当に決まっていないのか?
何れにせよ、その条件を魔王の娘は……?
「えーーっ、教えてよ」
「エイラムさんとライト様が支配者側に立てるようにはするつもりだ。それが無理だったらもう一度改めて二人に相談する」
「仕方ないなあ。町長さんと上手く話し合える事を期待しているから」
要するに町長次第。
その結果で魔王の娘が判断するのなら私も──。
「でしたら、私もそれで……」
「ライト様、これが上手くいけばきっと、実は生きていたと公表できるようになります」
「えっ、それは……」
「ちゃんと、約束しましたから」
そんな約束を、した気もする。
私にとっては忘れてもいいくらいの些細な事。
けれど、私はそれを町長の息子が覚えていてくれた事が嬉しい。
「覚えていて……くれたのですか」
「勿論です」
「嬉しいです」
「それは、上手く行ってから──」
「いえ、アイス殿が約束を覚えていてくださった事です」
町長の息子と二人で話していていると、魔王の娘が間に入ってきた。
「へえー、生きている事をバラすんだ」
何か言いたげそうな、そうでもないような、そんな口調で魔王の娘が語る。
「アイスくんが決めたのならいいんじゃない? 上手くいくといいね」
「──駄目だったかい?」
「そんな事ないよ。ただ、二人共アツアツだなって思っただけ」
魔王の娘にそう言われ、私と町長の息子は二人で顔を見合わせる。
そして、お互いに少し顔を赤らめた。




