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1-5:新生活は良いものになりそうです

「到着致しました。ライト様、この屋敷がそうです」


 町長の息子に案内されたのは、左右に広く二階建てであるが、しかし天井の高い見事なお屋敷であった。


 中に通され廊下を歩き、来客用と思われる個室に通される。

 予め来る事が分かっていたかのように部屋を使う準備が既にできている状態。

 そして、部屋の大きさも寝床の他に3,4人が話し合いをする場もあって広い。


「では、何かありましたら、何なりとお申し付けください」

「そんな。町のご厚意で泊めていただけるだけでも十分です」

「いえいえ、聖騎士様なのですから遠慮する事は御座いません。それに、来たばかりでこの町の事もよくわからないでしょう。ですので、お出かけの際にはお声がけください。私がご案内致しますので」


 そう言って、町長の息子は部屋から出て行った。

 どうやら、部屋の外での廊下で何やらメイドと放している様子である。


 私は、とりあえず荷物を降ろしたものの──。

 これからどうしようか?

 そう思っていた時、部屋の外で町長の息子と話していたメイドが入ってきた。


「失礼します。坊ちゃまより、何かあれば手伝うように言われていますので、まずは挨拶をと」

「あっ、はい。初めまして、ライト・ヌームです」

「はい、こちらこそです。ところでライト様、荷物の開封でしたらお手伝い致しましょうか?」

「い、いえ。私一人で運べる程度の量ですので、結構です!」


 メイドというものには慣れないなあ。


 こういった屋敷やメイドというものは、養子として騎士の家に入った時に経験はしている。

 聖騎士として人前に出ても恥ずかしくないようにと、厳しく躾けられたものだ。

 だから、その時の苦い思い出からか、若干の苦手意識があるのかもしれない。




「ふぅ、こんな感じでいいかな?」


 私が、着替え等の荷物を一通り整理し終えると、メイドがお茶とお菓子の用意をしてくれた。

「そんな……そこまで……」

「お茶はお嫌いでしたか?」

「い、いえ。そんな事は……」

「でしたら遠慮なさらずに。客人をもてなすのも仕事ですので」


 仕事……か。


 私がここに何をしに来たのかと、一瞬惑ってしまう。


 任務としてはダンジョンの調査……と、言うほどでもない。

 町を含めて何か異変が無いかとか、何か起きた時のための連絡係だ。


 しかし、この町の人たちは聖騎士の事を……私の事を期待している。

 ならば、それに答えるために、私も何かしないと。


 とりあえず、町を守るお手伝いから始めてみようかな?

 そういう人たちから話を聞けば町の事情も見えてくるかもしれない。


 出かける時は……そうだった。

 町長の息子に一言断ってから行かないと。

 居場所は……そこのメイドさんに聞いた方が早いか。


「あの……?」

「はい。何でしょうか、ライト様?」

「町長の息子さんは今何処に?」

「ああ、アイス坊ちゃまですね? 今、お呼びします」

「えっ……はい、お願いします」


 メイドは部屋を出て行く。

 そして、先程入れてもらったお茶を飲みながら待っていると、町長の息子がやってきた。


「呼びたててしまってすみません、出かける時には声をかけてほしいとの事だったので」

「とんでもない。それで、どちらに参られるのでしょうか?」

「この町を守護している方々に会って挨拶しようと思いまして。私が後から来たのですから、私から出向くのが筋かと」

「この町を今まで守ってきたのは自警団です。しかし、これからは聖騎士が自警団に代わってこの町を守護すると国がお決めになったのですから、そんなに急がなくともよいのでは?」


 ちょ、ちょっと待って!

 聖騎士が自警団に取って代わるだなんて無理、無理だって!

 この町には私一人しか来ていないのに!!


 まさか、こんなに話が「大きくなっていたなんて──。

 早く訂正しないと!


「えっ!? 自警団に代わってだなんて滅相も無い。私一人の力では、自警団の方々のお手伝いをするのが精一杯です」

「そうなのですか? てっきり、私は聖騎士であらせるライト様が自警団を指揮するものとばかり思っていました」

「まさか。私は聖騎士と言えどまだまだ若輩者。そのような偉そうな事はできません」


 正直、私が聖騎士の地位を利用すればできない事も無い話だけど……。

 だからと言って、そんな事をしたら絶対反感を買ってしまう。

 それこそ、聖騎士団を我が物顔で私物化した、あの勇者の様に……。


「わかりました。そういう事でしたら、まずは自警団の団長に私と一緒に挨拶に行きましょう。私が予め話を通した方が団長との話も上手く行くでしょうし。それに他の団員との挨拶も、まずは団長を通してからの方がスムーズに行くでしょうから」

「そうですか。私はこういう事が初めてですので、勝手がわかりません。アイス殿が色々とお世話して下さるなら、その方が助かります」


 ──よかった。

 誤解が解けた上に、町長の息子さんの理解も早いし、機転も利いている。

 この町長の息子、何となく頼もしい……かも。


 田舎町に左遷が決まった時はどうしようかと思っていた。

 けれど、町は立派だし何よりこんなに良くしてもらっている。


 これなら、私の左遷生活も明るいかもしれない。

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