9-2:魔王たちにとって勇者は脅威
未知なるエルフの拠点を攻める当日。
私と魔王の娘と町長の息子で、周辺地域をまとめる魔族に挨拶をしに行った。
「こんにちは、エイラムちゃん。それに、今日はあの暗黒騎士も連れて来たの?」
「こんにちは、ランチ姉。予定通りこれから出発するから」
彼女もまた魔王の娘の姉の一人。
つまりは魔王の子供たちの一人である。
「ごめんね、エイラムちゃん。本当は私が行きたいけれどダンジョン周辺も守らないといけないし」
「ランチ姉、そういう時のために私たちがいるんだから大丈夫なんだよ」
「それじゃあ、気を付けてね」
そう言われると、むしろ私たちの町を留守にしている事が心配になるのだけれど……。
思わぬところで新たな不安が生まれたが、周辺地域を治める魔族との挨拶も済む。
そして問題の場所は、この町から近い。
直ぐにでも出発できそうだ。
「あの、エイラムさん。今更だけど、うちの町だって留守にするのは良くないと思うのだが」
私が疑問に思ったことを、町長の息子が魔王の娘に聞いてくれた。
だが、この質問に彼女は何と答えるか──。
「もー、何のためにアイスくんを連れて来ていると思っているの?」
「ちょ、俺だけ助かっても意味が……」
「大丈夫大丈夫。うちの町の近くにはエルフいないし」
「言われてみれば確かに……」
町の近くにエルフがいれば目立つという事なのか?
それならば、いきなり襲って来るなんて事態にはなり難そう。
「それに、衛兵だってちゃんと育てたんだから大丈夫。だよね、私たちの暗黒騎士?」
「……え? は、はい。彼らは立派ですし、例えエルフが攻めてきても少しは戦えるはずです」
いきなり私に話を振られてビックリした。
けれど衛兵を育てたのは、私が聖騎士だった頃の話。
だから、今の彼らがどうなっているかはそれほど詳しくはない。
しかし、日頃からダンジョンで鍛えている彼らだ。
訓練を怠っていなければ、私が知るよりも遥かに優れた戦士に成長しているはず。
「それなら、うちの町は大丈夫なのかな?」
「そういう事。それに……」
それに──?
魔王の娘は周りに誰もいない事を確認して、こう言った。
「ランチ姉が自分の町を離れられないのは別の理由だと思うんだよ」
「別の理由って?」
「急がないの。もう、アイスくんはせっかちなんだからッ」
焦らされると、余計に気になる。
「自分の留守中に勇者が現れたら困るから、じゃないかな?」
「……え?」
「お父様の子供として、私たち兄弟姉妹にとって勇者の相手は大事な仕事なんだよ」
だが、私や町長の息子にとって斜め下の回答だった事に変わりはない。
「そ、そういう事なら、うちの町の心配はしなくてよさそうだな」
「うんうん、アイスくんに分かってもらえて嬉しいよ」
とにかく、無駄な心配は結果的に払われた。
私たちは町の外で待っていたドワーフたちと合流し、森の中へと進んだ。




