8-6:初めてのエルフの討伐
エルフの集落を壊滅させた後。
私たちは近くにある人間の村へと戻った。
「うーん、無理にってわけじゃないんだけど、トット兄に報告入れた方がいいかな?」
という、魔王の娘の発案によってだ。
確かに、この地域を支配する魔族には知らせるべきだと私も思う。
「おう、戻ったか」
「エルフの集落、潰してきたよ」
「だろうな。こっちに逃げて来たエルフは俺が殺しておいた」
見ると、その近辺にはエルフの死体が幾つかある。
そして、遠くから村人がこちらを、特に魔族の男の方を震えながら見ていた。
「ご苦労だったな。これでドワーフたちも喜ぶだろう」
「うん、私も暗黒騎士の事は労っておくよ」
「それに、あの町の連中も森に入りやすくなって喜ぶだろうな」
確かに、町に集まった森目当てのハンターたちにも朗報だろう。
「今後はこの村に来る人間も増えるだろうし、俺も支配者として大変だよ」
「トット兄はそんなに働いているように見えないけど……」
「なんだと! 俺だってそれなりにはやっているんだからな」
要するに、あの町からこの村に人が流れるという事か。
エルフたちによる支配が無くなって、人間たちが森の資源を利用しやすくなる。
そうなると、より近い場所にあるこの村が発展するのは必然。
次にこの場所に来る機会があれば、もっと発展していそうだな。
「そういえば、そこの暗黒騎士を侯爵にしたいって話だったな」
「何? まだ諦めていないの?!」
「そうじゃねえ。今回の働きから、俺も推薦してやろうと思っただけだ」
認められたのならば喜ばしい事だけれど……。
あの魔族の男が私を推薦するメリットがなく、怖い。
「理由はよく分からねえが、こいつを侯爵にしたいのだろ?」
「間違いではないけれど……本当はアイスくんの方を公爵にしたかったんだよ」
「そいつは可愛い妹の頼みでも無理だな」
魔王やその子供たちの事情はよく分からない。
けれど、私のためではない事は確かだ。
それが分かっただけで、少し安心した。
「しっかし、ここで待っていれば森から逃げ出した勇者に出会えるかもと思ったんだがなあ。そう上手くはいかないか」
「勇者?」
「エルフの集落ならば、勇者の一人くらいいるかもと思っただけだ。確証があったわけじゃない」
魔族の男が考えていた事は分かる。
しかし、あのエルフの拠点と関係ある勇者といえば、聖騎士団に出入りしていたアイツ。
「トット兄、その勇者って多分私が前に倒したのだと、思うよ!」
「アレか!! いや、詳しくは知らないが既に倒されているなら現れなくて当然か」
勇者……か。
アレへの直接的な復讐は叶わなかった。
けれど、魔王の娘やその兄である男までが気にかけている存在だったのか。
だが、私の知る限りではエルフと関係のあった勇者はあいつ一人。
今後、更にエルフの討伐を進めたところで勇者には出会わないだろうな。




