8-4:決戦直前
次の日。
私と魔王の娘、そして町長の息子の三人は、ドワーフの工房に集合していた。
「いよいよ出撃か」
「この日をどんなに待ちわびたか」
「エルフたちに俺たちの力、見せてやろうぜ!」
そう、この場に集合したのはドワーフたちと一緒にエルフの拠点を攻めるため。
今から、魔王の娘の転移魔法で移動するために集合している。
ドワーフたちは、いつもの中年男性顔の被り物だけではない。
手には斧か槌の武器を装備し、これからエルフと戦かおうと張り切る。
体には鎧に兜を身に着けていて、防御の面でも万全だ。
「ごほん! それじゃあ行こっか、みんな」
号令と共に魔王の娘が転移の魔法を使う。
行先は、先日のあの村。
エルフの拠点近くにある人間の村だ。
「とうちゃーく! みんな、ちゃんと揃ってる?」
私たちに続いて魔法のゲートを通ったドワーフたちが次々と到着する。
全員を私は知らないので揃っているかどうかは分からない。
けれど、魔王の娘が揃っていると判断しているのならば大丈夫だと思う。
──後は、向かうだけ。
「それじゃあ、道案内よろしく。私たちの暗黒騎士」
「では、森の中を案内しますので私に付いてきてください」
私たちが出発しようとした、その時。
急に新たな魔法のゲートが出現した。
まさか、敵襲?
いや、少なくとも転移の魔法が使えるのは魔族だけ。
だとすると──?
「よーし、間に合ったか?」
魔法のゲートから出て来たのは、周辺地域を担当する魔族だった。
そして、それに続いて新たにドワーフたちが出現する。
「トット兄……? もしかして、一緒に戦いたいの?」
「いや、俺はどっちでもいいんだがなあ、うちのドワーフたちが一緒に戦いがっていてな」
そういう事か。
魔王の娘がここに転移できるようになった。
だから、彼も転移できるようになったと。
詳しい事情は分からない。
けれど、魔王の子供たちで転移の場所を共有できるみたいだ。
そして、この地域のドワーフがエルフの討伐に参加できるようにしたのか。
元より彼らの担当地域なのだから、戦いに参加するのは必然。
拒む理由もない。
「お互い頑張ろうな!」
「おう!」
ドワーフたちは互いに喧嘩する様子もなく、共通の敵の討伐に張り切っている。
この様子なら、急な増員も問題もなさそうだ。
「それじゃあ、俺はこの村で留守番しているんで。朗報、待っているからな」
魔族の男は、軽い感じで魔王の娘にそう言った。
結局、増員はドワーフだけか。
でも、あの魔族の男が一緒でも気まずいので正直安心した。
──そろそろ動かないと。
「では、今度こそ。皆さん、私についてきてください」
森の中は特に迷うことなく進むことができた。
今のところ罠が仕掛けられていたり、奇襲を受けたりはしていない。
エルフたちにバレてはいなさそうだ。
だが、油断はできない。
拠点で戦闘の準備をしているのかもしれないし。
あるいは、既に逃げ出していて誰もいないのかもしれない。
もしも、逃げ出しているのならば制圧は楽そうだ。
だが、そう簡単に行くとも思えない。
「この調子なら、もう少しで着きそうです」
「よーし、今こそ積年の恨みを晴らすとき!」
「みんな、がんばろう」
「おーーー!」
私の言葉を聞き、ドワーフたちも士気を高めている。
しかし、慣れた道だ。
私が聖騎士だった頃はよく通っていたからな。
忘れようがない。
しかも、万が一の時のために町長の息子が地図を作っている。
これなら、エルフ側が森に何か細工をしていてもある程度対処できそうだ。
「向こうに、不自然な壁が見えますね……」
地図を作っていた町長の息子が、真っ先に気変に気付いた。
続いて私も確認すると──。
入口が塞がれていた。
見た感じ、木から伸びる蔦が絡まって壁を作っているようだが──。
「これって多分、魔法で作った障壁じゃないかな? 特定の条件を満たす存在しか入れない系の」
魔王の娘が壁を見ながらそう言った。
困った。
多分、私が聖騎士だった時はここを通れたのだろう。
けれど、今の私にはそれを壊すだけの力がない。
「でも、この私。エイラムちゃんがいるから大丈夫。一撃で壊しちゃうんだからッ」
そう言って、魔王の娘は鞘から自分の剣を抜く。
そして、その漆黒の剣魔力を込めて、黒炎を纏わせた。
「そりゃああああああ!」
両手で持ったその剣を勢いよく振り下ろす。
すると、目の前の壁がガラスの様に砕け散った。
前方に見えるのは、聖騎士だった頃に見たエルフの拠点の姿である。




