1-4:聖騎士の待遇
私は町長の息子に連れられて賑わっている街の方に出た。
「屋敷に行くには、ここを通る方が近いので。折角ですから、道中街中の紹介もできればと」
私は辺りを見回す。
辺境の田舎町とは思えない位に街は賑わっていた。
中央の様に落ち着いた立派なものではない。
が、活気に満ちた様子は中央のそれより遥かに優れているかもだ。
「ところで、聖騎士様。どうして、この様な田舎町に?」
えっ!?
い、いや、当然の質問……か。
しかし、何と答えよう?
町がこんなに発展しているのだ。
迂闊にダンジョンを否定して彼らの心証を悪くするのは得策ではない。
本来ならばダンジョンの監視や取り締まりをするべきなのだろうが──。
そのような否定的な事は言わない方がいい気がする。
──それに、私一人だけでやれる仕事じゃないし。
ならば、聖騎士団の本分として、こう答えるのが無難か。
「無論、ここの守護を任されての事だ。何、私一人だけで不安になるのも分かるが、何れ実力を見せる機会があればその考えも改まるだろう」
「無粋な質問でしたね、失礼致しました」
──よかった。
すんなり納得してくれたみたい。
私だって、それなりに強いのだ。
あの勇者には太刀打ちできなくても、町に襲い掛かる脅威くらいになら……。
ああッ!
勇者の事を思い出したらイライラしてしまいそうだ。
心を落ち浮かせないと。
そ、そうだ。
何か私からも話しかけて、間を埋めなければ。
「田舎町にしては随分と賑わっている様だな」
「これもダンジョンのおかげです。ダンジョン目当てで集まった冒険者たちがダンジョン近くのこの街にお金を落としますので、この辺り一帯だけは都会にも劣りませんよ」
「成る程、ここへの赴任が決まった時はどうしようかと……いや、騎士など必要なのかと思ったが、理解した」
ダンジョンから産出される富だけではなく、人々が集まって発展しつつあるのか。
ふむふむ、これは侮れないかもしれない。
それに、人口が増えれば治安も悪くなる。
ならば、そこに私が活躍できる場も出てくるはず。
「あの──」
「あっ、アイスくんだ。やっほー、聖騎士さんは見つかったの?」
私が続けて町長の息子に話しかけようとした、その時。
私たち二人に……いや、町長の息子に話しかけようと女性が飛び出してきた。
外見は私たちと同じか少し若いくらいの女性。
だけど、その褐色の肌色は中央では殆ど……いや、見た事は無かったかもだ。
肌の色以外では、ツーサイドアップの髪型が特徴的で若干幼く見せている印象。
「そちらは?」
「あっ、いや、彼女は私の友人で……」
町長の息子は若干困ったと言いたげな様子をしている。
だけど、友人と言うからには彼女もこの町の人間なのだろう。
私が臆する理由もないので、挨拶でもしておこうかな?
「そうですか。初めまして、お嬢さん。私の名はライト・ヌーム。今日からこの町に赴任してきた聖騎士です」
「えっ、はい。こちらこそ初めまして、わたくしはエイラムと申します。以後お見知りおきを」
エイラムと名乗った少女は、何か若干緊張しているみたいである。
が、それは私が聖騎士だからであろう。
「それじゃあ、エイラムさん。私たちは先を急ぎますのでこれで」
「待って! お屋敷にお戻りになるのでしたら、わたくしもご一緒致しますわ」
……?
「あのー? 一緒というのは?」
「……長くなりますので、道中お話し致します」
長くなる諸事情に若干の疑問と不安を感じながら、私は二人と共に足を進めた。
「実は、うちには他に来訪者がいまして……」
「何を隠そう、わたくしは今、町長さんのお屋敷に泊っているのですわ」
──何だ、そんな事か。
むしろ私は泊めていただく立場なのだから、気にする事はないのに。
「そうでしたか、エイラムさんも町長さんのお屋敷に滞在していると」
「はい、町長である私の父とエイラムさんの御父上が商業上の取引をしていまして、その関係で私たち二人も仲良く」
「今はこの町を更に発展させるために、お父様とその娘であるわたくしがお手伝いをしていますの。その関係で、わたくしも現在はこの町に滞在しているのですわ」
町長さんの取引先のお嬢さん、でいいのかな?
何処となく、彼女の言葉遣いが不思議なのは育った環境の違いなのだろう。
しかし、そんなに大切な客人がいるのに、私まで増えて大丈夫なのか?
「しかし、本当に私もお屋敷でお世話になってよろしいのですか? エイラムさんもいらっしゃいますのに」
「心配ご無用。今の屋敷は元より客人を泊める事を前提として大きくしたものです。ですので、むしろ使って頂いた方が建てた甲斐があると、父もそう思っているはずです」
「成る程、そういう事でしたら私も安心してお世話になれます」
思ったより広いのか。
もっと田舎を想像していたから、屋敷と言っても高が知れていると思っていた。
しかし、道中の街の発展具合からして期待してもいいかもしれない。
そんな事を考えながら歩いていると、本当に大きく、そして立派な屋敷が見えてきた。




