7-4:宴
町へ行った私たちはパンを買って戻って来た。
森の中にある家。
この地を担当する魔族が住んでいるあの場所だ。
買ったものは町長の息子が一人で抱えている。
重さ的には大した事はないと思う。
けれど、量が多くて若干動きにくそうだ。
「エイラムさん、やっぱり量多くないか?」
「私たちだけじゃなくてトット兄も食べるから、これくらい必要なんだよ」
魔族の娘の提案で、パンは三人分の倍以上の量を買った。
加えて、売っていた野菜や果物等の食材や飲み物も購入している。
魔王の娘が「トット兄」と呼ぶあの魔族、そんなに食べるのか?
結局、これではどちらが食事を用意しているのかわからない。
というか、向こうは何を用意してくるの?
「あそこに荷物を降ろして。座るところもあるし」
丸太小屋の近くには、複数人が利用できる大きさのテーブルと長椅子が設置されていた。
丸太素材を中心としてで作られた木製。
片側に三人が座れ、両側を使えば最大六人が座れる。
「トット兄が帰ってくるまで、軽く食べてよっか。でも、大物を捕ってくると思うから、あんまり食べちゃダメだよ」
魔王の娘がそう言うので、私たちはお昼代わりにパンを軽く摘まんで食べながら待つ。
しかし、魔族の男が戻る気配はない。
その後、私たちはお茶とお菓子で談笑しながら待つ事にした。
お菓子だけは魔王の娘が買ったものを自分で持っていたようだ。
その用意の良さに私は感心してしまう。
「ふうん、聖騎士団を壊滅させた後、聖騎士の実家に行ったんだ」
「ええ。けれど、そんなに面白い事は……」
「でも、そのヌーム家の現当主って、聖騎士の時の貴女の許婚ってのじゃないの?」
「え? そうなのですか?」
などと会話で盛り上がって時の事だ。
「捕って来たぜ。大物だ」
魔族の男が猪を一頭担いで現れた。
だが、彼一人ではない。
ドワーフたちと一緒だ。
「紹介するぜ。俺の狩猟仲間だ」
「あのダンジョンを作ったドワーフたちじゃないの?」
「ああ、そうだ。今はこの森をダンジョンに作り変えるのがメインの仕事だな」
それなりの人数──。
これなら、魔王の娘がパンを多めに買った理由も納得。
「おいおい、何だこの食材は?!」
「肉だけだと味気ないと思うんだけど?」
「そうだな。気が利くじゃねーか、ガハハ」
魔族の男は、たき火を起こし始めた。
これで、肉を調理するつもりなのだろうか?
「それじゃあ、一丁やるか」
魔族の男が獲物を解体する。
そして、一塊の肉塊を棒で刺して炙り始めた。
その手際のよさに、私は関心すると同時に呆れもしている。
この地域の支配もダンジョンの運営も中途半端。
なのに、森での狩りはその後の処理を含めて、こんなにも優秀なのかと。
「このパン、使っていいんだな」
「そのつもりで買ってきたんだけど」
魔族の男はパンを切り、肉をそれにはさんでいく。
非常にシンプルで雑な料理。
だけど、作りたてのそれは焼いた肉の匂いも含めて美味しそうではある。
「よおし、できたぞ。食え」
完成品を手渡された魔族の娘が、更にそれをリレー形式で配る。
こうして、私や町長の息子、そしてこの場にいるドワーフたちの全員に行き渡った。
「どうだ、美味いか?」
「うーん、偶にはこういうのもいいかも」
シンプルだけど、美味しいとは思う。
特に、肉の油がいい感じにパンと合う感じが。
「そうか。じゃあ、どんどん焼いていくか」
「これ全部焼くの?」
「余ったら氷の魔法で冷凍保存すればいい」
魔族の男は、どんどん肉を焼いていく。
そして、何時の間にかドワーフたちが酒を用意していた。
おかげで、ちょっとした野外の宴が始まってしまう。
「もー、しょうがないなあ。私たちも呑もっか」




