7-1:変わり者の魔族
この町以外にダンジョンは七つある。
魔王は、この国の外周に合計八つのダンジョンを出現させ。
ダンジョンの周辺は挑む冒険者たちが過ごすための町へと発展した。
──そして、その町を影で支配するのが魔王の子供たち。
今回目指すエルフの拠点に行くため、一番近いダンジョンへと向かう事となった。
正確には、そのダンジョン近隣の町。
そこに、魔王の娘の魔法で移動するわけだ。
「転移の魔法も万能じゃないんだよ。知らない場所にはいけないんだから」
先日、魔王の娘がそのような言い訳をしていた。
が、兄姉たちのいる他の七つのダンジョン近くにはいけるらしい。
私には魔法の原理や細かいルールはわからないけど、便利ならいいのかな?
「とうちゃーーく!」
転移魔法のゲートから飛び出した魔王の娘が、元気よく叫ぶ。
私と魔王の娘、そして町長の息子の三人で移動したわけだが……。
ダンジョンが見当たらない。
「あれ? ここは確かトット兄の管轄だったと思うけど、何でこんな場所に?」
魔王の娘も不思議がっているので、これが想定外の事だというのは分かる。
──トット?
魔王の娘の兄の一人だろうか?
この辺りを支配する魔族なのだろうが、肝心の場所が……。
とりあえず、辺りを見回すとここは森の入口。
そして、森の反対側には街道が見える。
街道沿いに見えるのは……町?
村と呼ぶには少しばかり大きく、それなりに建物が建っている。
「うーん。とりあえず、向こうに見える町に行けばわかるかも?」
魔王の娘が町の方へと向かう。
それを見て、私と町長の息子も後から付いていく他なかった。
とりあえず町へと入った私たちだが、めぼしいものがあるわけでもない。
街道近くにあるのは商店に宿。
旅人のための施設がそろっているが、今の私たちには必要ない。
そこから更に奥には錬金術師の工房がちらほら。
町の人間が出入りしていそうな雑貨屋に酒場があるくらい。
「むむむッ! 他より少しだけ立派な建物が。あそろにトット兄がいるかも?」
見れば、うちの町の町長の屋敷程ではない、それなりに立派な建物があった。
担当の魔族が居なくても、この町の町長には会えるかもしれない。
とりあえず、話だけでも聞きに行ってみる価値はありそうである。
「こんにちはーー。誰かいますか?」
魔王の娘が建物を尋ねると、恰幅いい男が出て来た。
少なくとも、この人は魔族には見えないが……。
「貴方がこの町の町長?」
「如何にも。その見た目、魔族か?」
「魔王の娘エイラムだよ。トット兄に会いに来たんだけど、何処にいるか知らない?」
この町の町長は、私たちが来た森の入口を指差してこう言った。
「ああ、トットなら町外れの森に住んでいる」
「そうなの? 何で?」
「知らん。俺は魔王様から町の事とトットの事を任されてはいるが、あいつが好きにやった結果だ」
私たちの町でも町長が魔王の娘に直接意見しているのを見た事が無いからな。
ここの町長の言い分もわかる。
「だって。仕方ないから森の入口まで戻ろっか」
私たちは今来た道を戻り、森の中を少し進む事にした。
魔法のゲートで出た場所に戻ってみると、森に向かって道が伸びている。
「ゲートのポイントを設定したのはトット兄だから、この道を通れば行けるかも」
仕方なく、森の中に向かって伸びている道を進む。
程なくして私たちは丸太小屋を見つけた。
「誰かいますかーー?」
魔王の娘が丸太小屋の入口の扉を叩きながら声をかける。
すると、一人の男が中から出てきた。
「トット兄、何でこんなところに住んでいるの?」
「挨拶代わりに質問かよ」
「町を見に行ったのに居なかったし、追い出されたのかなって」
「そんなわけあるか」
この魔族の強さは知らない。
けれど、ここにいる魔王の娘と同じくらい強いとしたら──。
追い出せるなんて真似のできる人間はいないと思う。
「それで、一体何しに来たんだ? 一応この前会ったばっかりだし、顔を見に来たなんて理由じゃあなさそうだが」
「エルフがトット兄の担当区域にいるから、倒しに来たんだよ」
「んな、俺の領内で勝手に……って、だから事前に挨拶に来たのか」
「うん、そういう事」
話が早い。
これなら簡単に事が進みそうだ。
「それで、何でこんなところに住んでいるの?」
「おい、まだ俺は返事をしていないんだが」
「えーっ、ダメなのーー?」
「わかったわかった。この件には言いたい事もあるが、答えてやる」
──言いたい事?
というのも気にはなるけれど、今は何故この魔族が森の中に住んでいるのかだ。
「地上に来てから、この『木』ってのが気に入ってなあ、森の中に住むことにしたんだ」
だからといって、町から離れた場所に住まなくてもいいと思った。
「──それで、本題に入っていい」
「やっとかよ。それで、具体的には何をどうするつもりなんだ?」
「えっとね、まずはエルフの拠点近くにある人間の村まで行って、ゲートを開けるようにしたいの」
「って事は、エルフの居場所までわかっているのか」
私が教えたからだ。
しかし、考えてみるとエルフについて知る手段は限られている。
特に、数少ないエルフに関する情報源の一つである聖騎士団を私が壊滅させてからは。
「まあ、そういう事なら好きにしていいぞ──と、言いたいところだがなあ」
「えー、ダメなの?」
「今のままじゃな。俺はその暗黒騎士の実力を知らない」
私の……実力……?
「なあに簡単だ。実力を見せてくれればいい。ちょっと、そこのダンジョンで戦ってもらおうか」
「うーん、仕方ないか。それじゃあ、見せちゃおっか、私たちの暗黒騎士」
「……はい」
魔王の娘が了承してしまった以上は仕方ない。
知らないダンジョンに入る事に不安はあるけれど、戦闘だけなら大丈夫なはず。
万が一無茶な要求なら、魔王の娘が何とかすると思うし。
「よーし、決まりだな。この前飯食った時に会っていると思うが改めて自己紹介だ。俺は魔公トット。魔王の息子の一人で、そこにいるエイラムの兄貴だ、よろしくな」




