6-5:侯爵を目指す事になりました
「少し、外を歩きませんか?」
エルフの討伐について話し合った後、町長の息子が私に声をかけてくれた。
「私……ですか? エイラムさんではなく……?」
「そうです。ライト様と一緒に歩きたくて」
嬉しい。
町長の息子に誘われた事に対して、素直にそう思った。
「ふーん、二人で行ってきたら? 私は少しやる事があるから一緒には行けないし」
近くにいた魔王の娘が私たちにそう言った。
──用事が無ければ付いてくる気だったのか?
だが、魔王の娘の許しもあるので、気兼ねなく町長の息子と同行できる。
「わかりました。是非とも一緒に!」
「そ、そんな大げさなものではないです。散歩程度に歩くだけですので」
いけない!
嬉しさのあまり、つい返事に力が入ってしまった。
「は、はい。散歩ですね。では行きましょうか」
私は、はやる気持ちで声が多少裏返りながら、町長の息子と二人で外に出た。
屋敷から外に出て、向かった先はダンジョン近くの街だった。
街はダンジョンに出入りする冒険者たちのおかげで、今日も活気に満ちている。
冒険者たちがダンジョンの戦利品を売る事で、お金が動く。
そして、彼らが街中で飲み食いする事で、またお金が動いて助かるらしい。
「今日も平和そうで何よりです」
街中にはまた衛兵もいる。
彼らが巡回する事で、冒険者たちによる治安低下が防がれるわけだ。
──私が聖騎士だった頃は、彼らと一緒に巡回したなあ。
少し前の思い出に浸っていると、町長の息子が話しかけてきた。
「外で常に鎧を着込まなければいけないのは、やはり辛いですか?」
「い、いえ。この鎧、見た目と違って着心地いいですし」
ドワーフたちの技術のおかげで着心地がよく、辛さを感じないのは本当だ。
しかし、私が外で常に兜で顔を隠しているのは、やはり辛そうに見えるのだろう。
それに、私は外を出歩くより家の中にいる方が好きだ。
仕事で外にでるのが嫌というわけではない。
けれど、聖騎士だった頃も仕事以外では部屋に籠っていた。
だから、外に出辛い今の生活はむしろ気に入っている。
「ごめんなさい。私が聖騎士の方のライト様を説得できてさえいれば……」
「そんな事を言わないでください。悪いのは私でアイス殿のせいでは……」
前にも似たようなやり取りをした気がする。
そして、今回改めて町長の息子が思いつめたのは、私が相談したせい。
「二つに分裂したもう一人を何とかしたいのは本心です。ですが、以前の生活が恋しいとかそういうのではなく、むしろ今の生活は気に入っています」
これで、分かってくれるかな?
「そう言ってもらえると、生活面で色々と用意している私も助かります」
──よかった。
けれど、町長の息子に余計な心配をかけてしまった私も悪い。
今後は気を付けないと。
「ですが、その……やはり、常に正体を隠しているのは大変そうです」
──それもそうか。
「では、こうしましょう。エルフの討伐に成功して功績が認められれば、私は侯爵になります。そうなったら暗黒騎士の正体を町の皆に告白しましょう」
「しかし、それでは死を偽装した理由の説明が」
「それは、聖騎士団の壊滅から守るためとか幾らでも説明できます。それに、侯爵が顔を隠しているわけにも行きませんし」
「確かに……」
侯爵の地位なんて、町長の息子を守る以外ではどうでもいいと思っていた。
が、今のでささやかながら侯爵になる理由ができてしまった。
エルフの討伐、頑張らなきゃ。




