6-1:鎧のメンテナンス
次なる討伐相手はエルフ。
先日の一件で、それが決まった。
その後、町へと帰還した私はどうすべきかと悩んでいる。
エルフたちの拠点は、一つではない。
この国だけで数か所の森に拠点あり、他国がどうなっているかは不明。
国内全てのエルフの森を潰すには骨が折れそうだ。
とにかく、まずは一つ潰したいところだけど……。
──魔王の娘に相談した方がいいか。
「あの……」
私が魔王の娘に声をかけようかとした時。
向こうから逆に声をかけてきた。
「あっ、そうだ! ドワーフさんたちに暗黒騎士を連れてくるように言われてたんだった」
「えっ……?」
「装備のメンテナンスをしたいんだって」
それならば、今の私は暗黒騎士の装備一式を身に着けている。
なので、このままの姿で行けばいいか。
──エルフ討伐については、また後にしよう。
私は、ダンジョンの裏口から、ドワーフたちの工房へと向かった。
「よっ、すっかり元気になったな」
「えっ……ええ……」
工房に入るなりドワーフの一人に声をかけられる。
気さくに声をかけられて、私は少し驚いてしまった。
「あの……装備のメンテナンスの話で……」
「おっ、そうだったそうだった」
「鎧……今、脱ぎますので」
「そうか。じゃあ、先に剣から見ておこう」
私はドワーフに剣を手渡す。
そして、まず兜を脱ぎ、それから全身鎧の各種パーツを一つずつ外していった。
「どうだい、鎧の着心地は?」
「今まで着たどんな鎧よりも軽くて驚いています。それに、とても動きやすくて……」
「ほうほう、そうか。それはよかった」
鎧を脱ぎ終え、私はドワーフにそれを渡した。
──メンテナンスが終わるまで何をしようか?
今は兜が無い上に、他に顔を隠すものがない状態。
誰かに顔を見られるわけにもいかないので、街中どころか屋敷に帰る事もできない。
そんな事を考えていると、ドワーフの一人が話しかけてきた。
「今度、エルフと戦うんだろ?」
「は、はい……」
「遂にか……これで、我らの悲願も叶うってもんだ」
ドワーフとエルフの仲が悪い事は何となく知っている。
そして、魔王側とドワーフ側が協力関係である事も。
「聖騎士団との戦いはどうだったか? 奴ら、エルフが用意した武器防具を使うんだろ?」
「暗黒騎士の装備が素晴らしく、神樹で作られた装備は相手になりませんでした」
「成る程、剣も鎧も殆ど傷んでいない事からも、よく分かる」
実際、あの時の聖騎士団の鎧は紙同然にも感じた。
聖騎士の剣も鎧も聖魔法の強さによって強度は左右される。
しかし、あの場にいた聖騎士が劣っていたなんて事はない。
それだけ、ドワーフが作った装備が格上だという証拠だ。
「よし、これだけ強ければ安心だ。持っていっていいぞ」
「もう、終わったのですか?」
「見るところは見たし、壊れていたわけではないからな」
「そうですか」
「騎士様に万が一があっては困る。念のため、見ておきたかったのだ」
私は、ドワーフから剣と鎧を受け取り、それらを装備した。
「我らの悲願、頼んだぞ」
──期待されている。
皮肉なものだ。
かつて聖騎士だった私は、聖騎士でなくなる事で存在価値が無くなる事に怯えていた。
だが、暗黒騎士となった今の方が遥かに期待されている。
「(どうだ? 今の方が輝いているぞ、私)」
「(そんな……だとしても、そんなやり方は許されない!)」
「(認めろ! 私を捨てた聖騎士団やエルフが何だというのだ)」
私の中にしつこく残るもう一人の私。
聖騎士の部分に問いかけてみるも、消えはしなかった。
何故、そこまでして善なるものに拘る?
先日の中央を見ても分かった事だ。
今の状況では魔王側に付かなければ守れない。
人間も、この町も、そして私に良くしてくれた町長の息子の事も。
町長の息子か……。
何となく悩んでいた時、彼と話してスッキリした事もあったなあ。
話して……みようかな……?




