4-6:聖騎士団団長の最期
団長の部屋まで行くには、そう苦労はしなかった。
元より内部構造は熟知している。
途中、勇敢にも襲い掛かってきた聖騎士たちを殺し、部屋の前までたどり着いたわけだが……。
ここで扉を開けて中に入るのは簡単だけど、罠かもしれない。
だけど、罠を感知したり突破したりは私にはない。
今装備している鎧ならば、どんな罠にも耐えられそうだけど、どうしよう……?
──扉は木製。
聖なる魔法で強化した神樹の鎧すら切り裂くこの剣ならば。
私は扉を剣で斬って中に入る事にした。
「な、何だ貴様は!」
私が団長の部屋の中に入ると、団長は執務机の椅子に座っていた。
しかし、とても待っていたという様子ではない。
明らかに私が部屋の扉を破った事に驚いている。
「他の聖騎士は何をしているのだ! ま、まさか……?」
そのまさか……だ。
それに気付かなかったのか、気に留める程の事でもないと思ったのか。
今の今まで部屋の中にいるとは呆れた。
「だが、相手が悪かったな。この私に勝てると思ったか!」
聖騎士団の団長は急いで装備を整え、私に襲い掛かる。
装備を整える前に殺してもよかったけれど、それは流石に気が引けた。
だがしかし、団長といえど聖騎士の装備があろうが無かろうが同じ事。
私は団長の剣に一撃を加える。
すると、聖騎士団団長の神樹の剣は簡単に折れてしまった。
「ひっ、ひぃぃぃぃ……」
先程までの威勢は何処に行ってしまったのか?
剣を折られた途端、団長は狼狽してしまった。
「そんな……光の勇者を除けば私が最強の筈なのに……」
「…………」
「何故、こんな事を……? 貴様は、何者なんだ……?」
理由も分からずに殺されるのも辛いか。
いや、理由を分からせられて、絶望しながら死ぬ方が辛いかも。
「──魔王の娘の命令だ。聖騎士団を壊滅せよ……と」
私のその言葉を聞き、団長はやはり青ざめた。
「そんな……魔王の力の片鱗だけでこれ程とは……」
ええ、ショックであろう。
私も、魔王の娘に一度殺された時はそうだった。
だが、私が誰であるのかも知れば更に驚くだろう。
私は、頭全体を覆っている兜を外し、顔を見せる事にした。
「貴様は!? 我々を裏切ったのか、ライト・ヌーム!?」
「最初に私を裏切ったのは貴方たちだ!」
裏切っておいて、その言葉なのか。
「裏切った……?」
「危険な場所だと分かっていながら、私をたった一人で送り込んだくせに!」
おかげで私は殺された!
この恨み、今ここで晴らしてくれる!!
「危険? 私はただ、エルフたちダンジョンを調べるよう命じられていただけだ」
「嘘をつけ! 危険な場所だと知っていたから私を一人で行かせたのだろう!」
「違う! あの場所は不人気で誰も行きたがらなかっただけだ。危険かどうかなど知らぬ!」
──どの道、誰もやりたがらない仕事を体よく私一人に押し付けた事には変わりない。
「おのれ、これだから『偽物』は……」
「偽物……?」
「そうだ。血縁でもないのに名門のライト家に潜り込みやがって、この偽物が!」
聞いた事がある。
聖騎士の血統を重んじるあまり、養子を取って存続しようとする聖騎士を許せない派閥があると。
そうか、だから……。
「つまり、団長は私が気に食わないから私一人に仕事を押し付けたと」
「ふん、それがどうした? 偽物のくせに名門面しやがって」
──呆れた。
「貴方という人は……殺す価値も無い……」
聖騎士団の団長は、私のその言葉を聞いて、少しほっとした表情を見せた。
「だが、生かしておく価値もない!」
私はそう叫んで剣を振り回し、団長の首を吹っ飛ばす。
希望が絶望に変わる瞬間の表情の顔が、床に落ちた。
──終わった。
こんなにも、あっけないとは。
聖騎士団の団長を殺し、本部にいた殆どの団員も殺した。
数名は逃げ出したようだけど、これで聖騎士団は壊滅したと言っていい。
これで、よかったのか……?
いや、これでいい。
どの道、聖騎士団は滅ぼされるが定め。
けれど、何かが引っかかる。
でも、それはきっと、聖騎士たちを殺しただけでは満足できないから。
その証拠の一つなのか、もう一人の私はまだ……消えていない。
「(ああッ! どうして……どうして、こんな事に!)」
「(諦めろ。あの団長は元よりそういう人間だった)」
「(それでも……それでも……)」
「(そんなものはない!)」
──未練がましい。
答えはとっくに出ていて、こうなる他に道はない事も分かっていただろうに。
それでも聖騎士でありたいのか、もう一人の私は!
そんな事を考えていた私は、ふと思い出した。
未練といえば、聖騎士の家があった……か。
私がかつて聖騎士になった原因である聖騎士の名門ヌーム家。
うーん……魔王の娘が言っていた夕方にはまだ時間がある。
折角だし、聖騎士団を壊滅させた事実と共に別れを伝えに行こうか?
相手の出方次第では、ヌーム家も皆殺しにしてしまうかもだ。
けれど、そこにピリオドを打てば、今度こそもう一人の私も──。




