4-4:聖騎士団の本拠地へ
あれから数日後。
町長の息子が私に相談を持ちかけてきた。
「エイラムさんの用事で明日から中央でのイベントに出る事になってしまって」
──魔王の娘が言っていた例の話だ。
「それで、急な話なのですが一緒に来てくれませんか?」
「はい、エイラムさんからは前もって聞いていたので問題ありません」
「ええッ!? 知っていたのなら教えてくださいよーー」
町長の息子には何も知らせていなかったのか?
理由は分からないが──。
魔王の娘にも何か事情があるのかもしれない。
「いえ、私も近々中央に行くという話だけで日程までは……」
「なんだ、そうだったのか……失礼、少々取り乱してしまいました」
「…………。でも、明日から中央だと移動は……?」
この町から中央に向かうには馬車でも数日かかる。
明日からのイベントだと間に合うのは難しそうだけど……?
「それは、エイラムさんが何とかするので大丈夫かと」
魔王の娘が……?
いったいどんな手を……と思ったところで町長の息子が話を続ける。
「彼女、移動の魔法が使えるので、中央へも一瞬で到着するかと」
そんな便利な魔法があるとは。
私は聞いた事がないし、魔王側にしかない魔法なのかもしれない。
「……それは……便利そうです」
「魔界からこの町までも遠いみたいですし、こういう魔法が無いと不便なのかと思います」
──言われてみれば。
そうか、だから明日突然行くなんて発想になるわけだ。
移動が一瞬だと、近くに出かけるのも遠くに出かけるのも変わらないし。
「でしたら、特に大した準備はしなくても大丈夫でしょうか?」
「それが、エイラムさんの話だと中央で一泊するとの事で、泊まりの準備をお願いします」
「えっ……はい。わかりました」
魔法で移動できるなら、泊まる必要なんて無いはずだ。
けれど、あえて泊まるという事は、それもイベントの一つなのかも。
「何でも、観光の一環として泊まってみたいらしくて」
──深読みするような事ではなかった。
用事って結局、魔王の娘が中央を見たいだけ?
「それでは、イベントというのも観光……?」
「いえ、明日の昼間は観光で、それから夜のイベントに参加との話でしたので違うかと」
イベントが夜だけなら夜に行けばいい。
観光だって別の日にゆっくりの方が。
なのに、あえて昼間に観光……?
そうか。
昼間に魔王の娘と町長の息子が中央観光している間に、私は──。
明日の昼、私は中央の聖騎士団を壊滅させる。
そのための時間を魔王の娘は作ってくれたのだと思う。
夜のイベントというのがよく分からないけれど。
これは、明日の夜になるか魔王の娘に聞いてみるかしないと分からない。
だけど、復讐の一つを達成するのが明日だというのは確実だ。
「分かりました! 明日、頑張ります!!」
「は、はい。宜しくお願いします」
思わず力を込めてしまった私に、町長の息子は若干引いていた。
次の日.
私と町長の息子は、魔王の娘が出現させた魔法のゲートを通って中央に来た。
──本当に一瞬で中央に着くとは。
「とうちゃーーく!」
魔王の娘が元気よく、そう言った。
三人とも、若干の荷物を持っている以外は普段通りの格好だ。
とは言っても、町長の息子は普段からある程度整った上等な服を着ている。
そして、暗黒騎士である私は漆黒の全身鎧に身を包んでいる状態。
夜のイベントが何であるのかは知らないけれど、少なくとも失礼にはならない。
けれど、昼間私が町長の息子たちと一緒に歩くには少々不釣り合い。
そんな感じだ。
「じゃあ、例の用事よろしく。私たちの暗黒騎士」
「分かりました!」
思った通りだった。
「あの、エイラムさん? 聞いてないんだけど」
町長の息子が少々怪訝な顔をしている。
どうやら、知らなかったみたいだ。
だけど、魔王の娘が伝えていないのならば、私が答えない方がいいだろう。
「アイスくんも夜になれば分かるから、それまで楽しみにしていて」
「嫌な予感しかしないんだけど……」
「夕方にこの場所に集合だから、忘れないで。私たちの暗黒騎士」
「……分かりました」
こうして、私の聖騎士団討伐が始まった。




