4-1:聖騎士団を潰す時が来ました
「お父様から、聖騎士団とエルフを潰すお許しが出たんだよ」
魔王の娘が唐突に放ったその言葉から、次なる目標が決まる。
「……潰すの……ですか?」
「そうだよ。約束通り、貴女にやってもらうから」
聖騎士団──特に団長は復讐の相手。
私を、捨て駒としてこの地に放り込んだのだ。
その仕打ちを許すわけにはいかない。
そして、エルフは聖騎士団の親となる存在。
聖騎士団の団長がダンジョンによる魔王の脅威に気付いているとは考え難い。
私の憶測だけど、ダンジョンの調査もエルフが聖騎士団に命じての事だと思う。
要するに、私の復讐は聖騎士団とエルフを潰すまでは終わらない。
正直、聖騎士から解放された今となっては無理にやるような事ではない。
奴らが私に対して行った仕打ちは許せないけれど、今は幸せで満足している。
それに、きっかけを作った勇者は死んでしまったし……。
けれど、魔王の娘が聖騎士団やエルフを潰す事を望んでいる。
だったら、是非とも私がやらないと。
他の誰かにやられるくらいなら、私がこの手で奴らを皆殺しに!
「(やめて! 聖騎士団やエルフを潰すだなんて許すわけには!)」
「(黙れ! 今まで私を散々苦しめ、そして使い捨てにした連中だ! そんな連中が死のうが気にする事ではない!)」
もう一人の私、私の中にいる聖騎士の私が止めようと心の中で叫ぶ。
しかし、そんな聖騎士に暗黒騎士の私は一喝してそれを黙らせた。
──みじめな聖騎士だ。
その正義感に何の意味があるというの?
……いや。
それに今も縛られているから、私の中に今でも──。
だったら、まずは大切な聖騎士団を壊す事でわからせないと。
「はい! 聖騎士団の壊滅、必ずや成し遂げてみせます!!」
逸る気持ちを抑えらずに、私は魔王の娘にそう答えた。
しかし、聖騎士団の本部は中央。
行けないわけではないし、むしろ行き易い場所だけど。
この町を暫く留守にしてまで単身突撃するのは気が引ける。
不思議なものだ。
聖騎士の私がこの町に左遷された時は、あんなに中央に帰りたかったのに。
今は、あの人……町長の息子との生活の方が大切だなんて……。
「(いけないのに……いけないのに……求めてしまう……)」
「(ふふッ、ふははッ! それでいいじゃないか)」
「(でも、やっぱり無理やりは……)」
聖騎士の私は、町長の息子の事でもまた苦しんでいた。
仕事で優しくしてくれる彼に、淫らな思いを寄せてしまった事。
そして、その彼を思い通りにできる甘い果実を魔王の娘から与えられた事を。
果実を食べなければ耐える事もできたであろう。
しかし、暗黒騎士の私がその果実を貪り、味を覚えてしまった。
町長の息子を好きにできる快楽と、無理やり弄ぶ事への罪悪感。
この双方に抗えない事もまた、聖騎士の私を苦しめているのだ。
「焦っちゃダメ。近々、私たちは中央に向かう予定だから」
「私……たち?」
「私と貴女、それとアイスくん!」
私と魔王の娘と町長の息子の三人。
何故、この三人で中央に向かうのかは分からない。
けれど、理由はどうあれ中央に行くという事は……?
「その時に、まずは中央にある聖騎士団を潰してもらうから」
やはり、そういう事……。
「わかりました! 必ずや、ご期待に沿えてみせます!!」
「えっ……? うん、頑張って……」
何処となく、魔王の娘が若干引いている。
逸る気持ちを前面に出し過ぎた……かな……?
「それより、いい機会だから貴女がどうして聖騎士になったのか、教えて」




