3-4:魔王の娘に仕える暗黒騎士になりました
「はいはい、今日はここまで」
唐突に、魔王の娘が部屋に入って来た。
私と町長の息子は慌てて離れ、魔王の娘の方を向く。
「もっと欲しいなら、暗黒騎士として働きなさい」
「……はい」
元より、そのつもりだ。
命を助けてもらった恩義には報いたい。
でも、先程の快感を得た後ではもう……。
あれを手に入れるためならば、可能な限り何でもしたい。
そう考えてしまう程に貪欲になってしまった。
「へへっ、よろしい。では、魔王の娘エイラムから、私たちの暗黒騎士へ武器を授けます」
そう言って、魔王の娘は私に鞘に入った長剣を渡した。
「抜いて、確認してみて」
私は魔王の娘に言われた通り、受け取った長剣を鞘から抜く。
すると、黒く光る刀身が露わになった。
「黒曜石の剣だよ。すっごく強くて、地上にはまだ出回っていない品なんだから」
「よ、よろしいのですか!?」
改まって希少品だと説明されると、私も貰う事に気が引けてしまう。
「か、勘違いしないでよね。暗黒騎士には、それだけ強力な敵と戦ってもらうってだけだから!」
──ああ、そういう事。
それから、魔王の娘は私の耳に口を近づけ、ひそひそ声でこう言った。
「これは、アイスくんにはまだ内緒だけど、お父様のお許しが出たら『聖騎士団』や『エルフ』の連中をやっつけてもうらんだから、覚悟しておきなさい」
私に復讐の機会を与えてくれるというのか!
この町に私を左遷した聖騎士団、そしてそれを操るエルフたちを。
「(何て事を! そんな事、許されるはずが──)」
「(黙れ! 私はそいつらのせいで一度死んだのだ。許してなるものか!!)」
もう一人の私が当然の如く反発しようとするが、それを私は無理やりねじ伏せた。
ダンジョンへの魔王の関与を調べるために、私を捨て駒にしたのは聖騎士団だ。
しかし、それを行う様に色々と指図をしたのはエルフたちのはず。
ならば、奴らもまた許してはおけない。
「わかりました。その時が来れば必ず」
こうして、私は剣と鎧を手に入れ、ようやく暗黒騎士らしい形になってきた。
後は、それを使って働くのみ。
「エイラムさん、今日は騎士様も一緒でいいのか?」
「うん、三人で一緒に帰ろうか。あっ、でも暗黒騎士は鎧をちゃんと装備して。でないと、バレちゃうから」
「……わかりました」
私は、再び鎧を着込み、そしてフルフェイスの兜を装備した。
地上の町を歩く時、常に顔を隠さなければいけないのは、まあ面倒ではある。
──慣れるだろうか?
そんな事を考えていると、不意に町長の息子が私に話しかけてきた。
「申し訳ないですが、部屋は移ってもらいます。表向き聖騎士ライト・ヌームは死んだ事になっていますので」
「かまいません。元々居候の身ですし」
「荷物は、折り合いを見て移動しましょう」
ここでの私物なんて、本くらいしか元々なかったし、大丈夫だと思う。
「あのさあ、アイスくん。理由はそれだけじゃないよ。彼女はアイスくんの側室なんだから、それに見合った部屋にしてあげないと」
「そうだけど、側室用の部屋って?」
「うーん。私が認めた相手なんだから、ちゃんとした失礼のない部屋にして」
「それ、今までと変わらないと思うんだが」
──二人共、仲がいいなあ。
私は町長の息子と恋仲であったわけではない。
だけど、町長の息子と魔王の娘が仲良くしていると、もやもやした感情が湧き上がる。
正直、嫉妬していないと言ったら嘘になると思う。
だが、一度殺し合った結果でのことだ。
受け入れるしかない。
「とにかく今日は、ライト様の復活祝い……いや、新たに暗黒騎士を迎える祝いだな」
「ばっちり、御馳走の用意もしてるからねッ!」
「はい……お屋敷での食事も久しぶりで……楽しみです」




