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10 発現

 目覚めると辺りはすっかりと暗くなっていた。

また放置されたようだ。期待はしていないが、何かやるせない気持ちが沸き上がるが気づかないふりをする。

体の痛みは嘘のように感じないが、倦怠感がとにかく酷い。初めて人間ドックのフルコースを受けた後を思い出す。


「さて、終わったようだねぇ。」


婆さんは相変わらず私を覗き込みながら、ニヤニヤと笑っていた。

手には占い師が使うような拳大のガラス玉を握っていて、空いた手を私に差し出してきた。

体を起こすのを助けるためでは無いことは確かだ。それに先程の件の直後に手をとるわけがない。


私は震える腕に力を込め、重く沈みこんだ体を起こす。それすらも興味深そうに婆さんは静かに視線を向けてくる。

何とか直立した直後、素早い動きで婆さんは私の手首を握り、ガラス玉越しに私を見やる。


「喜びな。成功だよ。」


急に無表情になった婆さんはそれだけ言うと小屋に戻っていく。


「説明は明日だよ。」



婆さんの姿を見送った私は脱力し、尻餅をつく。

何て日だ…。正直死ぬかと思った。

顔を擦ると、鼻の穴周辺には硬い血の塊がポロポロと剥がれ落ちた。口の中も傷だらけのようで頬の内側は腫れ上がり、舌を這わせるとザラザラした感触と鈍い痛みを感じた。


鼻血を撒き散らしながら、ガタガタと歯を食い縛ったのだろう…


モヤモヤとした恐怖と婆さんへの怒りが沸き起こり、大声で叫びたかった。

ただでさえ見知らぬ土地では1人なのに…

思いっきり走り回りたかった。


酒とカラオケが欲しいと強く思いながら、現実の私は水桶で顔を洗い明日のために眠りについた。





翌朝、テーブルを挟み向かいあった私たちは静かに見つめあっていた。

これが若い女性であれば眼福なのだか現実はゴワゴワのローブをきた婆さんだ。

婆さんはテーブルに昨夜のガラス玉を無造作に起き私に手を載せるように指示をしてくる。


「あの…マリーさん。これは…」


私はガラス玉に手をのせながら婆さんに尋ねるが、返ってきたのは沈黙だった。


「いいから黙って見てなね。」


仕方なくガラス玉を見ていると次第に色々な色が混じり始める。水面に油が浮いているときに光を当てた時のようにグネグネと色が混じる。

興味深く見ているとうっすらとした暗い赤色のみが残り突然消えた。


「見えたかい?今のがあんたのスキルだよ。」


いや、分かるわけないだろ…

内心イライラしながらも顔に出さないように平静を装う。


「どうゆうことです?」

婆さんはタメ息をつきながら説明を続けてくれた。何でも世の中には色によりスキルの系統が別れるらしい。赤・青・緑の三種類として。

その色は明るい色から暗い色で別れており、

明るければ正義 暗ければ悪として認識されるそうだ。また色の濃さは強さを意味するらしく、濃ければ濃いほど強く影響を与えるそうだ。


「あんた前の世界での仕事は殺生が多かったようだね。それも火を扱う関係だ。」


そりゃ、開発関係なんだ年間に何百tと家畜や魚介を調達してはいたが殺生と言われると嫌な気分だ。ましてや人なんだから火を扱うのは当たり前だ。車に料理に、電気だって火を使い発電していたんだ社会が火で成り立っていたのだ。


「さて理解力が追い付かないあんたに、この玉をプレゼントだ。私の師匠のだがね。」


スキルの傾向が分かろうとも、何のスキルか分からなければ意味がないと婆さんは首を振りながら、突然ガラス玉に載せていた私の小指に小さい傷をつける。


「血を吸わせると詳細が分かるんだよ。」


ガラス玉は暗く薄い赤色を再度映した後に文字を形作る。


着火・解体・毒耐性・植物知識の4種だ。


「どれも金にならないねぇ。強いて言えば知識くらいかね…」


首を振りながら婆さんはタメ息をつく。



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