大手スーパーの休憩所にあったお菓子の山
この話は、1995年(平成7年)の出来事です。
当時、自分は大手スーパーの建物管理の仕事をしていました。
そのスーパーの1Fのバックヤードには、従業員が自由に使える休憩所がありました。
休憩所の中央には大きなテーブルがあって、そこを囲うように椅子が置いてありました。
建物管理員は、14時になると屋上の日陰に掛かっている温度計を記録して、休憩所に貼ってある方眼紙に折れ線グラフで外気温度を記入していました。
食品担当者は、そのグラフを見て食材の発注をしていました。
業務的には、それ以外で休憩所に入る事はないのですが、いつも中央のテーブルに沢山のお菓子が置いてある事が気に掛かっていました。
それも、殆どが食べかけのまま放置してあるのです。
翌週、いつものように休憩所で外気温度を記入していると、食品統括マネージャーの久世さんが入ってきました。
そこで、テーブルに置いてあるお菓子について聞いてみました。
「あー、それは発売前のお菓子だよ、味見して良さそうな物はいずれ棚に置くんだ、メーカーさんは棚を取りたくていつもここに置いていくんだよ」
「因みに、このお菓子は食べていいんですか?」
「あー、いいとも、但し食べたらそこの紙に感想を書いて投書箱に入れてね」
「分かりました」
「でも、一番大事なのはこの中だけで食べるって事だよ、外部に知られたら非常にマズいんだよ」
それだけ言い残して業務に戻って行きました。
それからは、14時に休憩所に行くのが楽しみでした。
ただ、新商品には微妙な味の物も多く、開封したものの幾らも食べないうちに放置されているのも数多くありました。
それを久世さんがたまに見て、ダメなお菓子だけを試食してからメーカーに伝えていました。
本来は、久世さんと部下の人達が試食するのですが、とても食べられる量ではないので就業員に協力してもらっていました。
それをいいことに、金欠の従業員はお菓子でお腹を膨らせていまいた。
自分もそうでしたが、お菓子を食べるだけではなく真面目に投書をしていましたが、翌月急にお菓子が置かれなくなりました。
不思議に思って久世さんに聞いたところ、アルバイトの1人が持ち出してはいけないお菓子を、家に何個も持ち帰ったからでした。
後日、そのアルバイトはクビになり、休憩所のお菓子の試食も廃止になりました。
それからは、休憩所に貼ってある方眼紙に、外気温度を記入するのを忘れがちになる事がよくありました。