表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

大手スーパーの休憩所にあったお菓子の山

作者: きつねあるき

 この話は、1995年(平成7年)の出来事です。


 当時、自分は大手スーパーの建物管理の仕事をしていました。


 そのスーパーの1Fのバックヤードには、従業員が自由に使える休憩所(きゅうけいじょ)がありました。


 休憩所の中央には大きなテーブルがあって、そこを(かこ)うように椅子(いす)が置いてありました。


 建物管理員は、14時になると屋上の日陰(ひかげ)に掛かっている温度計を記録して、休憩所に()ってある方眼紙(ほうがんし)に折れ線グラフで外気温度を記入していました。


 食品担当者は、そのグラフを見て食材の発注(はっちゅう)をしていました。


 業務(ぎょうむ)的には、それ以外で休憩所に入る事はないのですが、いつも中央のテーブルに沢山のお菓子が置いてある事が気に掛かっていました。


 それも、(ほとん)どが食べかけのまま放置してあるのです。


 翌週、いつものように休憩所で外気温度を記入していると、食品統括(とうかつ)マネージャーの久世(くぜ)さんが入ってきました。


 そこで、テーブルに置いてあるお菓子について聞いてみました。


「あー、それは発売前のお菓子だよ、味見して良さそうな物はいずれ(たな)に置くんだ、メーカーさんは棚を取りたくていつもここに置いていくんだよ」


(ちな)みに、このお菓子は食べていいんですか?」


「あー、いいとも、(ただ)し食べたらそこの紙に感想を書いて投書箱に入れてね」


「分かりました」


「でも、一番大事なのはこの中だけで食べるって事だよ、外部に知られたら非常にマズいんだよ」


 それだけ言い残して業務(ぎょうむ)に戻って行きました。


 それからは、14時に休憩所に行くのが楽しみでした。


 ただ、新商品には微妙(びみょう)な味の物も多く、開封(かいふう)したものの(いく)らも食べないうちに放置されているのも数多くありました。


 それを久世さんがたまに見て、ダメなお菓子だけを試食(ししょく)してからメーカーに伝えていました。


 本来は、久世さんと部下の人達が試食するのですが、とても食べられる量ではないので就業員に協力してもらっていました。


 それをいいことに、金欠の従業員はお菓子でお腹を(ふく)らせていまいた。


 自分もそうでしたが、お菓子を食べるだけではなく真面目に投書をしていましたが、翌月急にお菓子が置かれなくなりました。


 不思議に思って久世さんに聞いたところ、アルバイトの1人が持ち出してはいけないお菓子を、家に何個も持ち帰ったからでした。


 後日、そのアルバイトはクビになり、休憩所のお菓子の試食も廃止(はいし)になりました。


 それからは、休憩所に貼ってある方眼紙に、外気温度を記入するのを忘れがちになる事がよくありました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お菓子っておいてあったらついつい食べちゃいますよね。 でも、さすがに持ち出すのはNGだわ(^-^;
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ