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くまどうわ  作者: 暦田カレン
5/5

ロボット

とある国に ある王子がいました


王子は他の兄弟たちよりも

民にも城の者たちにも愛されて慕われていました


王子の身の回りの世話をしているのは

侍女の セラム


しかしセラムは王子の幼い頃を知りません

王子がもう青年になった頃に城へ来たからでしょう


セラムは城へ来る前に 育ての親である コペルに

こう言われました----


「よいか。セラム。

お前はこれから城へと行く。

それは レオ王子の身の回りのお世話をする為だ。

その為にお前を今日まで育ててきたのだ。。

王子の幸をよくよく考えて、お仕えしなさい。」


もう二度と会うことはないであろう 育ての父のコペルは

そう言うと、愛犬のシュタインを連れて海岸へ散歩にでかけました..


やわらかで しずかな潮風は

コペルの白いシャツ揺らしました

その寂しげな背中は

おろしたての朝日をいっぱいうけていました..


セラムは その光景を さほど思い出しはしませんでした

王子のそばにいると 王子のことで頭がいっぱいになるからです


レオ王子の幼い頃を知らない セラムは

自分を侍女として迎えてくれるかどうか 不安でした

いくら侍女ロボットとは言え 王子のすべてのデータを

保有しているわけではないのです..


しかし レオ王子は すぐにセラムの事を認めてくれました


どこへ行くにも セラムを同行させ

王子の 入浴 就寝の時でも そのそばにセラム置きました


そんなレオ王子に縁談の話があがったのは

セラムが 城へきて 2年になろうとしていた頃でした


丁度メンテナンスの為にロボットドックへ入っていたセラムでしたが

王子のその縁談を心(感情CPU)から喜んだのでした


セラムが城へもどると 王子のそばには 新しい者がいました

それは婚約相手である隣国の姫でした


光が薫るような 美しさと気品をただよわせる姫。

見る者の言語を失わせました


事務官が言葉を無くしてるセラムのところへ来て


「セラムよ。

お前は今日から 王子の侍女ではなくなっている。

初期化をするから マシン室へ来なさい。」


「初期化とはなんですか?」


「メモリをクリアするのだ。」


「どうしてですか。

私は 王子様を生涯お世話する侍女です。

初期化されては 十分なお世話ができかねます。」


「良いのだ。

お前はレオ様の侍女を昨日付けで解任されている。

次に御仕えする方が決まるまで 侍女倉庫にスタックされる。」


「そのようなお話は伺ったことがございません。

わたしは 父コペルからは・・・」


事務官に食い下がるように立ち向かうセラム..

そんなセラムを事務官はおろか城の誰もこれまで見たことがありませんでした


事務官は辺りを ひとつ見回してセラムに言いいました


「あまり抵抗をするな。

不具合発生ロボと判定されてしまうと

お前は廃棄処分になるのだ。

それこそ忍びない。。大人しく指示に従え。」


事務官の目には 涙が少し浮かんでいました


セラムは 入浴 就寝まで共にした レオの事をずっと思い出していました

マシン室へと歩いている間中ずっと・・・

これから消えてしまうメモリを。。

もう二度と思い出すことができないメモリを。。


「これも レオ様のため・・」

そう セラムがつぶやいたときでした


セラムは急に あの光景を思い出したのです


おろしたての朝日を背中に浴びて 砂浜を歩いていく背中を。。

そばを一緒にあるく シュタインを。。

白いシャツを揺らす 潮風を。。


セラムの胸はみる間あつくなりました


何もかもが消えてしまう!

消えてしまえば この絶望感すら消えてなくなる

実は 心(CPU)の支えとなっていた 想い出のすべてまでが..


気がついたら セラムはそこから逃げ出していました


「よせ! はしるな!」

事務官が叫んだ!


城内の警備システムが、突発行動を起こしたセラムを捉える

そして一斉にエマージェンシーアラームが鳴り響く。。


自動警備システムは 一斉に暴走ロボであるセラムを処理しようと動き出しました


まっすぐ正門へ向かうセラムを、

大小40のレーザー銃が待ち伏せしていたのです


そうとは知らずに必死に走るセラムの耳に

事務官の声が聞こえてきました...


「----正門はよせ。

----西の側壁へ向かえ。」


それだけで声は消えました


セラムは一気に進路を変えた!

涙ぐんでいた事務官の心を信じたのです

西の側壁へ走ると、そこは修復中で、その為の足場がありました

セラムはそれを利用して 外へと逃れることができました....



セラムが海辺のコペルの家にたどりついたのは

もう夕暮れ近くでした


家には誰もいませんでした..


セラムは記憶を頼りに、コペルの散歩道にそって 探しました

すると 雨岬と呼ばれる 青い草で覆われる岬に

コペルと シュタインの姿を見つけました...


コペルは 一つの墓を前にして 買ってきた肉まんを

シュタインと食べているところでした


セラムは涙を拭いて

笑顔で、そして忍び足で近づいていきました...



【CAST】

セラム...王子の世話役ロボット。

レオ王子...王国の王子。

シルク王女...隣国の王国の王女。王子の妃。

ドルフ...事務官。王国本城の事務官。

コペル...博士。セラムを作った博士。元王国兵器開発局研究室長。

シュタイン...博士の愛犬。

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