伝説残る港町
あれから、ギレーアに案内してもらって、たどり着いたのは港町。潮風と、停まってる船と、魚をいれておく、なんだろ? よく入札みたいな事をしてるとこ。こういう所って、何となく幻想的な雰囲気あるよね。
「頭上に、電線通ってる時点で、ファンタジーも何も無いんだけど」
「お前、もしかして童話か何かから知識を得てたりするのか? そろそろ日が暮れるし、さっさと宿を借りるぞ」
なんか、アンバランスだと思うのは私だけなのかな? 悪魔が居て、なんか凄い能力みたいなのがあって、普通に電線が通ってるんだもんなー。因みに、場所によっては風力だけど、基本的には火力で賄ってるんだって。
「そういえば、お金ってどうなってるの?」
「あー、お前にも渡しておくよ」
渡されたのは、銀貨とか、銅貨じゃなくて、カードでした。いや、なんで? それに、ただのカードというか、まるで小型のタブレットみたいな、モニターまで付いてて、現在0って表情されてる。
「ねぇ、これ、もしかして」
「今はもう、殆ど硬貨なんて使われてない。無くすなよ? それ自体けっこう高いからな」
いや、急に文明レベル上がりすぎじゃない? レアルさんの所は別としても……。そういえば、なんで私はファンタジーな世界だって思い込んでたんだろ? まだ少しの範囲しか見てないし、もしかしたらSFかも知れない。
「こういうのって当たり前にあるものなの?」
「いや、今回の世界じゃオーバーテクノロジーだ。こういうのを造るのは大体レアルの仕業だと思っておけば良い。……全く、こういう役立つものだけを造ってれば良いのに」
あ、レアルさんが造ってるんだ。ほんと、あの人だけ世界観違うよね? タイムスリップして過去に飛んできた人みたいな感じかな。人じゃないけど。そういえば、他にはどんなのを造ってるんだろ。
「レアルさんって、他にどういうの造ってるの?」
「今は気にしなくて良い。どうせその内会うだろ」
その内会う? もしかしたら、私みたいな人なのかな? そうなると、見た目が同じ? 同じ見た目の人がたくさん居るって何か、なんか奇妙な感覚だね。モブキャラになった気分がするよ。
「なーんか、世界観が良く解らないよね。何となくファンタジーぽい、なんて思ってたら、レアルさんは明らかにSFだし、私は何の力も使えないしー」
「お前の言ってる意味が解らん。そもそも、権限を使えないのは個人の問題だろ」
個人の問題って言われても、何の事だかさっぱりだよ。ギレーアは自分も使えないって言ってたけど、あの高速移動とか、変身するのとか、私と違って何かの力あるじゃん! って思っちゃうんだけどなー。
「あぁあー。どっかの物語みたいに、聖剣とかなんか、あったりしないのかなー」
「聖剣? あるぞ」
「そんな都合の良いものは無いなんて、流石に学んだ……。ええっ!? 在るの!?」
いや、在るんかい! そんなものあるわけ無いだろって言われると思ったよ! そんなファンタジーなものがあるなら見てみたい! やっぱり聖なる山とか、そういうところにあるのかな!
「選ばれし者だけが引き抜ける聖剣だったか? 俺は自前の剣があるから要らないけど、挑戦者がけっこう居るらしい」
きたきた! ファンタジーの王道設定! それ引き抜けたら凄い力とか、加護とか、あるやつだよね! 挑戦者がけっこう居るって話だから、意外と町とかにあるのかな?
「それって何処にあるのかな! 私見てみたい!」
「この町にあるぞ」
「えっ?」
「この町の観光名所だ。パンフレットにも載ってる」
わぁー、これがいわゆるご都合主義ってやつ? それに、パンフレットにものってるって、凄くフランクだよねー。うん、きっと考えるだけ意味ないんだよね、そういうものなんだよね?
「それなら、ちょっと行ってみたい」
「先に宿決めた方が良いだろ? 明日でも良いんだし」
「いいじゃん、いいじゃん。少し見に行くだけだから、まだ日が落ちてる訳じゃないし良いでしょー」
折角聖剣なんてものがあるのに、見に行かないなんてもったいない! って説得したら、物凄く嫌そうな顔されたけど、何とか説き伏せて案内してもらう事になった。やった! 勝った! それからどれくらいかかるのかなって思ったけど、十分もかからないで広場的なのに着いたじゃん! こんなに近いなら別に嫌がらなくてもいいでしょ。
「ほら、この広場の中心の台に、剣が刺さってるだろ? あれが聖剣らしい」
「へぇー、あれがそうなんだー」
広場の中心にかなり大きな剣、大剣って言ったらいいのかな? それが台に完全に刺さってた。まぁ、あれだね、物凄くありがちなやつ。せっかく来たんだから引き抜けるか挑戦しないとだよねー。掴んで引っ張ってみるけど、うん、抜けない。そりゃそうだよねー。
「その剣だけど、噂によると壊れない剣らしい。まぁ、眉唾物だけど」
すごいなー、壊れないなんて。これ、どれだけ力を入れても大丈夫って事だよね。それなら、全力で引っ張ってみようかな! 何か引っかかってる感じがするんだよね。もしかしたら、引き抜けるかも?
「えぇい!!」
バキッって音がして、剣が引き抜けてそのまま後ろに倒れちゃった。って、さっきの音何!? 壊れてないよね! 抜けた剣を見てみると、傷とかも無かった。凄い丈夫何だねー。ギレーアは、唖然としてるというか、不機嫌そうにしてるというか。
「おい、絶対めんどくさい事になるぞ」