友情への一歩
「あー、オリジンスフィア。長いからスフィアで良いか? 俺の事はギレーアで良い。お前は何が目的なんだ? もしかして、レアルから逃げ出したとかか?」
「うん、私の事はスフィアで良いよ。んー、逃げたって言うか、捨てられた?」
明らかに興味を失ってるような感じだったし、そう表現してもおかしくはないと思う。それよりも、気になるのはね、そんなにレアルさんがヤバい人だったのかって事。だって、不憫とか逃げ出したとか、普通は思いつかないよね? 一体何してたんだろう。
「あんなに従者を創る事に躍起になってたのに、捨てた? どういう事なんだ?」
「ええっと、私には権限っていうのが使えなくて、それで失敗作って言われたんだよ。だからそのせいだと思う」
レアルさんの態度が変わったのは、明らかにあの後だった。だから権限を使えないって言うのが一番問題だったんだと思う。私もそういう特別な力みたいなの使ってみたかったな。どんなのが良いのかな、難しいのだとよく解らないかもしれないから、火を出すとか? ファンタジーとかだと序盤に覚える魔法って感じがするけど、実際使えたら便利そうだよね。
「お前も、俺と同類なのかも、知れないな」
なんか、遠くを見つめるような、何とも言えないような表情だ。もしかしたら、ギレーアも権限が使えなくて、それで苦労してるのかもしれない。それはそうと、美形だとどんな表情でも絵になるよね。限度はあるだろうけど
「ギレーアも権限を使えないの?」
「俺は、俺の在り方を未だに受け入れられてないからだ。権限をまともに扱えないどころか、存在そのものが不安定になりかねない……。他の奴らは、もう権限を自分の力にしてる、アストアでさえも、精神面が未熟なだけで、権限を扱う素養は既に持ってたんだ……。俺は、ただの落ちこぼれだよ」
何となく、悲痛というか、なんだろう。すごく伝わるんだけど、違和感が何となくあるんだよね。うーん……、まるで、ゲームでもやってる気分なんだ。登場人物の感情を読み取れても、共感することができない。
「私は、なんだろうね? 現実だと思えなくて、うーん、なんて言ったら良いかな? ゲームしてる感覚?」
「それは、まだ誕生したばかりだからじゃないのか? もしくは、それが混沌の従者の特徴なのかもしれないな」
うーん。たぶん違うと思う。なんか、こう! って説明できないんだけど、なんか違うって解るんだ。だけど、説明出来ないから、笑って誤魔化すことにしよう。
「今をあーだこーだ言っても仕方ないし、なるようになれー、だよ。その方が気がらくになると思うなー」
「ははは、それもそうだな。なるようになれ、か。そういうのも悪くはないかもな」
うん、やっぱり悲しそうにしてるよりも、笑ってた方が良いよね。折角なら、楽しい方がいいに決まってるよ。悲しかったり、苦しかったりで良いなんて言う人は居ないと思うしねー
「あ、そうそう。海沿いにあるいてたら港町につくかなーって思ってたんだけど、あったりする?」
「お前、町に行くつもりなのか?」
「えっ、なんか不味かった?」
なんかぎょっとしたような表情されてるんだけど、私不味いこと言ったかな? 機械が人の住む町に入っちゃダメとか? でも、黙ってれば解らないと思うんだよね。断面見ないと、私だって良く解らないんだから。
「お前……機械だからって、その格好は無いだろ……。端から見れば、いや、普通に変質者にしか見えない」
「あっ……。あー、それは、そう」
そっか、逆に機械だって解らないから、この格好は問題だよね。すっかり忘れてたよ。というか、余計に不味くなってるのはギレーアのせいだよね? 唯一の服がボロボロだよ。あ、目を逸らされた。
「解った、解った。俺が用意してやる。だから、少し待ってろよ」
「やったね!」
「……。後で費用は返してもらうからな……。それで、どっちが良い」
費用返してもらうって、私一文無しなんだけどなー。何というか、一着くらいサービスしてくれても良いのに。それにしても、どっちが良いって、何がどっちなんだろう? 特に思い当たる物は無いんだけどな。
「どっちって、何がどっち?」
「あぁ、そうか。機械は自分の身体を自在に変えられる訳じゃないのか」
そう言うと、ギレーアの姿が変わって……。面影はそのままに、男の姿から、女の人になっちゃった! え、従者ってそう言う事も出来る感じなの? あ、でもよく考えたら、私機械なんだから、見た目を変える事も出来るんだよね。まぁ、出来るのかって言われると、出来ないけど!
「凄いな―。でも、その翼とかは消さないの?」
「姿を変えるにも制限があるんだよ。大きく姿を変えすぎると、それだけ力が削がれるんだ」
姿を大きく変えるって言うのは、別人みたいになるって事かな。確かに、ギレーアの今の姿は、性別だけが変わったって感じの姿してるよ。翼とか無くすことが出来たら、普通の人の中に紛れ込めたと思うんだけどねー。
「それなら、子供の姿とかも出来ないの?」
「大きく姿を変える事になるからな……。というか、なんで子供の姿に?」
「可愛い方が良いじゃん」
「はぁ、そんな事はどうでも良い。少しそこで待ってろ。服を持ってきてやるから」