第一章:団欒
ルバーム国にあるフーグス村。その村の端辺りに一軒の屋敷があった。
「ふ…ふぁぁぁ〜……」
ベッドの上で欠伸をしたのは少女のようだ。容姿は綺麗な部類に充分入るだろう。中でも目を見張るのは、その白い髪に赤い眼だ。
その少女の隣では、一人の男が寝ている。此方も中々の顔つきで、歳は三十代といった所だろう。
「父さん…朝だよ。起きて」
少女は男の体を揺すりながら声をかける。
「んん…おはよう、レイ。…またベッドに忍び込んだのかい?」
「だって落ち着くから」
「はぁ……言ってくれればちゃんと一緒に寝てあげるのに」
サラッと言うレイに、男は疲れたように言う。
それもそのはず、レイは何度も忍び込んでいるのだ。
その後、レイと男が少し話をしていると、部屋の扉を叩く音が聞こえる。
「ラグ、レイ、朝食の準備ができたわよ」
「ああ、わかった。今行くよ、マリー」
「早くしないと冷めちゃうわよ」
マリーはそう言うと扉の前から去っていく。
「早く着替えようか、レイ」
マリーが行ったあと、ラグはそのまま部屋で着替え、レイは自分の部屋で着替えてから朝食をとりに向かった。
「父さん、母さん、おはよう」
「おはよう、レイ」
「レイ、おはよう」
レイはマリーとラグに挨拶をする。ラグとは起きた時にした筈なのだが、そこには誰も触れない。
三人が朝食を食べていると、マリーが突然言い出した。
「そろそろレイ学園に通わないといけないわね」
「そうだね、時期的にも良い頃だ。どうかな、レイ?」
「行く。私、学園に行ってみたい」
「あら、結構乗り気なのね。てっきり私達と居たいと言うと思ったんだけど」
「確かに母さん達とは一緒に居たいけど、やりたい事があるから」
「やりたい事を見つける事は良いことだよ。所で、レイはどこの学園に通いたいんだい?」
「リーバルト学園」
「リーバルト学園ね、わかったわ。明日から色々と用意があるから忙しいわよ」
マリーは嬉しそうな顔で言う。
「もう少し早めに言えば良かったね…ごめんなさい」
「なに、レイが謝る事じゃない。それに、可愛い娘の頼みだ、これぐらいわけないよ。」
「………本当に?」
レイの問いに、二人は笑顔で頷いた。それを見たレイも、笑顔になった。
その夜、レイは自分の部屋で一人夜空を見ていた。
「父さん、母さん、ごめんなさい。私はやっぱり、あいつらを………」
レイはブツブツと何か言ったあと、ベッドに入り眠りに就いた。
夜空には、満月が怪しく輝いていた。