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今後の方針

「それで、日向と三村はこれからどうするつもりなんだよ?」


「僕は一度、家に帰りたいと思ってる」


「私も。お父さんとお母さんが心配だから」


 まぁ、当たり前か。普通に考えればそうだよな。

 皆自分の身内が大切だし、一旦自分の家に戻り家族の様子を見たいって気持ちもわかる。

 俺は別に家に戻らなくても構わないが、仲間が増えることは悪くない。

 その人達にjobを覚えさせれば、何をするにしても今よりはずっと楽になる。

 仲間を増やしながら、安全な場所を目指す。現状ではそれが最善だな。



「わかった。そういうことなら、俺もついて行く」


「ありがとう。もちろん山村君の家にも寄っていくから、心配しないで」


「悠里ちゃん」


「私、何か変なこと言った?」



 三村はキョトンとした表情で俺達のことを見た。日向はばつの悪そうな表情をしていて、何かを気にしているようだった。



「日向、別にいい。気にしてない」



 確かに昔は色々あって、その事に対して日向にも辛く当たったこともある。

 だけどそれは過去のことだ。むしろあのことが起きたから、今の自分があると思っている。

 だから気にしてもないし、気にするだけ無駄だ。



「本当に大丈夫?」


「あぁ、大丈夫だ」



 日向は中学時代俺の家のことについて話してるから、ある程度の事情は分かっている。

 だからこんなに気にしているのだろう。家族のことについて。



「三村、俺の家は1番最後にしてもらって構わない。まずは日向と三村の家に行こう」


「もしかして山村君‥‥‥」



 そこまで言って、三村は口を閉ざした。何か触れちゃいけないことだと思ったのだろう。しばらく沈黙が続く。



「そうだ。山村君は会いたい人っていないの?」


「会いたい人?」


「そう。山村君が大切に思っている人。今1番顔を見たい人」



 会いたい人。そんな奴はいないはずだ。そう思っていたのに、ただ1人頭の中に出てきた奴がいた。

 木内桜、俺と日向の中学の後輩で中学時代は日向達と一緒につるんでいた可愛い後輩である。

 俺を育ててくれた人よりも桜のことを思い浮かべるなんて、つくづく自分は冷たい人間だなって思う。



「そんな人はいないな」


「いないの」


「ああ。だから俺は2人についていくだけでいい」



 三村に俺はあえて嘘をつく。できれば桜の存在は三村には知られたくない。

 もしそのことを三村が知ったら、いつものように俺のことをいじってくる。それは火を見るより明らかだ。



「それよりも、どちらの家に行く? 出来ればここから近い所を選びたいんだけど」


「私はここから歩いて30分ぐらいかかるわ」


「僕は10分ぐらいだよ」



 徒歩10分か。それなら日向の家に行った方が早いな。



「それならまず日向の家に行って、日向の両親の無事を確認してから三村の家に行こう。三村もそれでいいな?」


「うん、それで私も大丈夫よ」


「なら決まりだ」



 三村が納得してくれた所で方針が固まった。

 正直三村の性格上、私の家から行きたいというと思ったが、思いとどまってくれてよかった。



「三村さん、本当に大丈夫? お母さんのこと心配じゃないの?」


「うん、私は大丈夫。それに日向君の家に行く方が効率がいいでしょ?」


「確かにそうだけど‥‥」


「三村がそういってるんだから、少しは好意に甘えとけ」


「わかった。ありがとう、2人共」



 渋々日向が了承したことで決まりだ。俺達はまず日向の家に行く。

 これで方針も決定したし、後は行動に移すだけだ。



「それじゃあ行こう。2人共、準備は大丈夫か?」


「私は大丈夫だよ」


「僕も」


「よし、まずは日向の家に向かおう。日向、案内してくれ」


「任せて。ちゃんと家までの道のりをナビゲートするから」



 自信満々に日向はそういう。さっきまで三村のことを心配していた面影はもう見えない。

 全く。ようやく調子が出てきたようだな。元気がない日向なんて調子が狂う。



「日向君の家って一軒家?」


「うん。一軒家だよ。そんなに大きくないけど」



 楽しそうに話す2人のことを見ながら、俺もその後ろを歩く。

 モンスターが出現する世界、何故こんな世界になったのか。jobとは一体なんなのか。考えることは山積みである。

 それでも俺は、いや俺達はこの変わった世界で生きていかなければいけない。



「僕の家には望遠鏡もあるから、夜は月や星が見れるんだよ」


「日向君って天体観測の趣味もあったのね」


「全く、お気楽だな」



 つかの間の平和。それを味わいながらも、これからの旅路を思うと胃が痛くなる

 お気楽な2人を見て、思わずため息をついてしまうのだった。


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