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jobとスキル 2

『山村空のレベルが上がった』


「何言ってるんだよ、日向? 急にレベルが上がったとか、おかしなことを言わないでくれ」


「僕じゃないよ。でも、その声が聞こえてきたなら大丈夫だね。次は悠里ちゃんもやってみよう」


「わかったわ」



 そういうと日向は三村の所へ赴き、持っていた剣を握らせる。三村は重すぎて持てないようだが、そこは日向が三村の両手を掴み支えていた。

 はたから見ると結婚式のケーキ入刀の花嫁と花婿のようにも見えた。包丁ではなく剣を持ち、ケーキではなくゴブリンを一刀両断しようとしているんだがな。

 どうやら2人は俺の事なんて眼中にないようだ。



「おいちょっと待て! 俺のことを放置するな‼︎ これからどうすればいいんだよ」


「あとはその機械の音声に従えば大丈夫だよ」


「待った日向。物事はちゃんと説明してからは話せ」



 俺の叫び声などお構いなく、機械音声の話し声は続く。



『レベルが上がりましたので、jobを取得できます。以下の中からjobを選んでください』


「job?」



 その声と共に俺の頭には4つのjobが浮かんだ。

 見習い銃士、見習い冒険家、見習い剣士、見習い弓使い。

 これがどうやら俺が選べるjobらしい。



「さて、どうしよう?」



 4つも表示されているが、俺はどのjobを選ぼう。

 見たところ日向は剣士系のjobだから、俺は遠距離系の方がいいか。

 となると弓使いか銃士のどちらかになる。このどちらかを選ぶなら、銃士の方がいいな。なんか格好いいし。

 それに銃なら弓よりも遠距離の敵も狙い打てる。俺にその技量があればの話だが。



「決めた、俺は見習い銃士にする」


『山村空は見習い銃士になった。ハンドガンを手に入れた。スキル、狙撃、危険感知、気配遮断、身体強化を手に入れた』



 スキルも決まったみたいだが、スキル名を見る限り狙撃以外にまともな攻撃スキルがないな。

 それに気配遮断ってスキルは便利そうだけど、これって暗に俺は日向の影に隠れていて、影が薄いって言っていることだよな?

 理不尽だろ? このスキル構成。実用性があるのはいいが、もう少しまともな名前のものがほしかった。



『特別スキル アイテムボックスを手に入れた』



 うん? 特別スキルって何? さっき手に入れたスキルと何が違うの? スキルもそうだけど、一切説明が無いぞ。



『固有スキル 勇者の従者を手に入れた。各スキルは使用して体感してください』



 ちょっと待て、説明が少なすぎる。体感してくださいって、どんなスキルかわからなければ体感も出来ないだろ?



『では貴方の未来に神の祝福があらぬことを』


「待てよ。説明がないと何もわからないぞ。一体どうなってるんだよ」



 俺がその場でいくら叫んでも、頭に響き渡っていた機械音声は何も答えてくれない。

 何なんだよ、あの声は。無機質で冷たい機械音に義務的なアナウンス。その上重要なことが一切触れられていない。

 日向はスキルの説明が聞けるって言っていたのに。何で俺に対してはその説明が一切無いんだよ。



「空、終わった? こっちは悠里ちゃんのjob選び終わったよ」


「こっちも今終わった。だけど、jobもスキルの説明もないから、何が何なのか俺には全くわからん」


「そうなんだ。ちなみに職業は何にしたの?」


「見習い銃士だ。日向は何にした?」


「僕は見習い剣士だよ。悠里ちゃんは薬師を選んだ」



 薬師か。そのjobは俺には無かった職業だ。人によってなれる職業が違うらしいな。

 それにしても三村が薬師を選ぶとは驚いた。三村が人を治療する所等考えられない。



「そういえば三村はよく俺に毒を吐き続けていたな」



 薬といっても、一概にいい薬ばかりではない。毒薬だって薬の一つに数えられるのだ。



「毒薬を作る三村‥‥‥なるほど、ぴったりだ」


「山村君、今何か余計なことは言わなかった?」


「別に何でもないからな。だからそんな今にも人を殺すような目つきで、俺のことを見るな」



 相変わらず三村は俺に対してだけ辛辣だ。できれば、いつも他の連中にやっている当たり障りのない対応をしてほしいものだな。

 絶対そんなこと三村はしないってわかってるけど。



「それよりjobの他にスキルも色々手に入れたんだけど、いまいち説明が無いからどんな効力があるかわからないんだよな」



 あの機械音は俺に対して何も言ってくれなかった。一体どういうスキルを取得したのか、詳しいことがわからない。

 なんとなく名前で能力の想像はついているけど。



「えっ? 山村君は何も説明がなかったの?」


「うそ? 三村はあったの?」


「もちろん。ヘルプってスキルで自分のスキルを確認できるみたい」


「ヘルプ? 何だよ、そのスキル」


「もしかして空は、ヘルプのスキルを持ってないの」


「そんなの持ってない。変わりにへんてこなスキルをいくつか手に入れたけど」


「今自分のステータス画面は見れる?」


「ステータス画面はどうやってみればいい?」


「頭の中でステータスって思えば見えるよ」



 なるほど。どうやら俺にはそういう説明すらないらしい。よっぽどあの機械音声は俺のことが嫌いみたいだな。

 日向に言われたとおりステータスと念じると、今自分が持ってるjobやスキルが頭の中に浮かんできた。





山村 空


見習い銃士Lv1


装備 ハンドガン


スキル 狙撃Lv1、危険感知Lv1、気配遮断Lv1、身体強化Lv1


特別スキル アイテムボックス


固有スキル 勇者の従者





 改めてスキル欄を確認するがヘルプのスキルはない。

 様々なスキルを手に入れることが出来たが、そんな便利なスキルは見当たらない。

 もしかして、jobを持っている人達は全員そのスキルを持ってるの?



「しょうがないな、特別に僕がどんなスキルか確認してあげるよ」


「大丈夫だ。なんとなくだが、どんな能力かわかる」



 狙撃や危険感知は多分そのままの意味で、銃弾の命中率を上げるスキルと危険が迫った時に知らせてくれるスキルだろう。

 身体強化は自分の身体能力を伸ばす為のスキルで、気配遮断は周りから認識されなくなることだと思う。

 アイテムボックスのスキルはよくわからないが、これも予想だがRPG等でよくある物を保存できるものだろう。


 だが勇者の従者という固有スキルに関しては俺もさっぱりわからない。

 わからないが、このスキルは放っておいてもいいだろう。マイナスな能力を持つスキル等普通に考えればあるわけが無いから、放っておいても特に問題はないはずだ。



「空、せっかくだからお互いのスキルを確認しよう」


「それはやめておこう」


「何で?」


「何でって? よく考えてみろよ。自分のスキル構成を明かすってことは、自殺行為だぞ」



 自分の取得したスキルを教えることは、敵に自分の手の内を教えているようなものである。

 もし相手が自分のことを陥れようと画策していたらどうする? どうぞ、攻撃してくださいといっているようなものだ。

 よっぽどの自信家かバカじゃない限り、絶対人には教えないはずだ。



「それに、日向や三村が嘘のスキルを教える可能性もある」



 スキルの項目が自分しか確認できない為、相手が嘘のスキルを教える可能性もある。

 それを100%信じることはないし、そんなリスクを負ってまで、自分のスキルを話したくはない。

 例外的にRPGだと鑑定というスキルがあれば相手のjobやスキルも調べることが出来るはずだが、これは手に入らないと思った方がいいだろう。

 相手のスキルがわかる能力等、レアスキル以外のなにものでもないからだ。



「空は、僕が嘘をつくと思ってるの?」


「ものの例えで言っただけだ。それより日向は何で俺のスキルを知りたいんだよ? 俺が嘘のスキル構成を言うかもしれないだろ?」


「確かに。用心深い空のことだから、その可能性もあると思う」



 わかってるなら聞くなよ。

 相変わらず日向はお人よしだ。俺がスキル構成に関して嘘をつくかもしれないのに。

 その可能性を考えた上で、質問なんかするなよ。



「でも、空は嘘をつかないよ」


「何でそういいきれる?」


「僕と空は幼馴染歴4年の仲だからかな」



 自信満々に日向は言ってるけど、色々とおかしいぞ。

 まずなんだよ、幼馴染歴4年の仲って。俺達は一緒に行動してきたが、そんなに仲がよかった記憶はないぞ。

 いつもなんだかんだいい合いをして、俺が折れて日向に協力する。そんな日々の繰り返しだ。

 それに俺は日向のことを幼馴染だと思っていない。あくまで日向と俺は腐れ縁だ。



「それにこれから僕達は一緒に行動するんだよ。お互いのスキルがわかってれば、何かあった時に対策も立てやすいじゃん」



 確かに日向の言っていることも一理ある。

 これから行動を共にするのであれば、お互いのスキルを知っていた方が行動もしやすいだろう。

 だけど‥‥‥‥。



「日向、まだ俺はお前達と一緒に行動するって言ってないぞ」


「大丈夫。空は必ず僕達と行動するから」


「何でそんなことを言い切れる?」


「だって僕と空は親友だから。それに空はお節介だから、僕達のことを見捨てることはしないと思う」



「もちろん、僕も空のことを見捨てないよ」と日向は付け加えた。


 あぁ、そうか。こういう所だ。俺は日向のこういう所が苦手なんだ。

 何でも当たり前のように、俺なら絶対に協力してくれるっていう無常な信頼。そして日向が純粋にお願いしている分、その頼みは断りづらい。

 そして日向と行動して苦労させられる分、俺にもちゃんと見返りがくる。どんなことがあっても、日向も俺のことを見捨てない。

 それは中学時代、日向と一緒に行動してわかったことだ。だから、どんなことがあっても日向が俺のことを裏切ることはないだろう。

 今まで1度も日向に裏切られたことはないからだ。



「はぁ。わかった、降参だ。降参。俺も日向達と一緒に行動すればいいんだろ?」


「ありがとう、空。だから僕、空のこと大好き」


「わかったから抱きつくな。それと三村。まるで親の敵を見るような目で俺のことを見るな」



 隙あらば俺に抱きつこうとする日向のことを押しのけながら、日向のことが好き過ぎて俺に殺意を向ける三村の事を見る。

 このコンビとこれから行動を共にすると考えるだけで、胃が痛くなる。

 願わくばこれから先、何もないことを祈るばかりだ。



「そしたらまずはお互いのスキル確認だね」


「わかったよ。ただしさっきの約束を守る代わりに、まずは日向と三村のスキル構成を教えてくれ」


「いいよ。僕のスキルはね‥‥‥」



 それからしばらくの間、俺達はベンチに座りお互いのスキル構成を確認するのだった。


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