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壊れゆく世界で

 俺達達全員がクレープを買い終わると、近くの公園に移動してベンチに座る。

 ベンチの並び順は俺、日向、三村の順になった。



「わぁ、おいしそう」


「そうね。日向君のクレープもおいしそう」



 三村と日向がイチャイチャしているせいで、再び1対2の構図になる。

 どう考えても俺が1人ハブですね。わかります。



「僕このクレープ好きなんだ」


「私もよ」



 ちなみに日向はチョコクレープで、俺がイチゴクレープを買った。

 三村に至ってははデラックスブルーベリーイチゴクレープというよくわからない豪華そうなクレープを買っていた。

 てかブルーベリーにイチゴって何だよ。ブルーベリーにイチゴ入ってるよ。



「うん、このクレープおいしいわね」


「そりゃよかったな」


「山村君には聞いてないから」


「へいへい、そうですか」


「ちょっと、本当にへこまないでよ」



 別に悪気があって言ってるわけじゃないのはわかってる。現に俺のことを見ながらクスクスと笑ってるし。

 気にしてない。そう、ちょっと心に深い傷を負っただけだ。



「でも、こうしてクレープを食べてると‥‥‥」


「食べてると?」


「いや、なんでもない。忘れてくれ」



 ふとこのクレープを食べていると、中学時代よく遊んでいた後輩のことを思い出した。

 いつも俺の後ろをくっついてきた可愛くて大切な後輩。確かあいつも甘いものが好きだったっけ。

 この話をしたら絶対だだをこねるから、今度予定が合えば連れて来てやるか。



「三村さんのクレープ、おいしそうだね」


「それなら日向君も食べる?」


「えっ? いいの?」


「構わないわよ。その代わり日向君のも少しもらうけどいい?」


「全然いいよ。じゃあ一口もらうね」


「どうぞ」


「それじゃあ、頂きます」



 日向が三村のクレープをかじる姿は幸せそのものだ。

 その後三村が日向のクレープをかじり、2人で感想を言い合っている。

 側で見ている俺からしたら、2人の姿はただのバカップルにしか見えない。

 なんだ、この空間? こんな雰囲気なら、俺なんかいなくてもいいんじゃん。



「全く、平和な世の中だな」



 そういってため息をつこうとした瞬間、俺達の足元が大きく揺れた。

 思わず前のめりに倒れてしまい、その場でうずくまってしまう。



「何? 何? どうなってるの?」


「三村、落ち着け。ただの地震だ」


「悠里ちゃん」


「日向君」



 日向は三村に覆いかぶさるようにして、その場に倒れた。

 俺はというと、うずくまった体勢のまま辺りを見回していた。

 この地震は今まで経験したことのない規模の揺れで、その場に立ち上がることすら困難である。

 ただこの揺れは何かがおかしい。何がおかしいのかわからないが、妙な違和感がある。



「収まった」


「何だろう? 今の地震すごかったね」


「そうね。怪我もしなくてよかったわ」



 起き上がった2人見て、怪我一つなかったことにほっとした。

 もちろん俺自身もすり傷1つない。

 辺りの安全を確認して、その場に立ち上がる。

 その時ふと何かがおかしいこときづいた。



「なんだ? この違和感」



 辺りを見回すが、周りの様子で変わったことは特にない。

 元々閑散としていた公園が、余計に静かになった気がしたぐらい。



「日向、この地震おかしくないか?」


「おかしい? 今の地震が?」


「あぁ、なんか変な気がする」



 なんだこの違和感? やっぱり何かがおかしい。

 再度周りを見渡す。周りは地震前と何も変わらない。


「そういうことか」


「どうしたの?」


「違和感の正体がわかった」



 地震前と地震後、その様子は何も変わらない。

 そう、何も変わってないんだ。それがおかしいんだ。



「普通その場に立つことが出来ない地震が起きたとして、周りの建物とかはどうなると思う?」


「う~~ん、窓ガラスが割れたり家屋が倒壊したりするかな?」


「そうだ。だけど周りを見てみろ。建物が倒壊したり木が倒れたりするどころか、家屋の窓ガラスすら割れてない。何も変わってないんだ」



 地震前の状態そのままだ。普通こういうことがあれば、何かしらそういう不測の事態が起きるはずだ。

 だが、そういうのは一切ない。耐震性が高かったとか理由を挙げればきりが無いが、それでもこの状態はおかしく思えた。



「できれば、もう少し周りの様子を確認したいな」


「空の言うことはわかるよ。でもごめん、申し訳ないけど、僕一旦家に帰りたい。お父さんとお母さんが心配だから」


「私も。自分の両親が心配だわ」


「そうだな。ここは一旦解散して、それぞれ家に帰るか」



 それがいいだろう。日向の意見に賛成だ。

 俺の好奇心に付き合って、変に歩き周り怪我をするのはまずい。

 ここは日向の意見に従っておこう。



「じゃあ決定だね。三村さん、家まで送ってくよ」


「うん、日向君。ありがとう」



 日向と三村はその場に立ち上がり、身支度を整える。

 俺と三村は鞄を持ち、日向は鞄の他に剣道で使用する竹刀まで持っている。

 何故日向が竹刀を持っているかって?そんなの俺も知らん。

 ただあいつのじいちゃんばあちゃんの家が有名な道場をしていることは知っている。

 昔日向と雑談していた時、剣道は嫌いという話を聞いたことがある。嫌いな剣道をしない為に、サッカー部に入ったということも。

 もしかしたらだけど、日向は剣の腕も上級者レベルなんじゃないか。もしそうなら、どんな奴が来ても、三村のことは日向が守ってくれるだろう。



「よし、帰ろう」


「そうだな」


「ちょっと待って。あっちの方から何か聞こえない?」


「僕は何も聞こえないけど? どこから聞こえるの?」


「俺も」


「あっちの林の奥だよ。何か聞こえない? かなきり音みたいな? 変な音」



 三村が指を指す方向を見ていると、確かに林の方ががさがさと動いている。

 動いているだけならまだいいが、三村の言う通りかなきり音まで聞こえる。

 それもただのかなきり音ではない。人を不快にさせるような、嫌な音だ。



「確かにあの林から聞こえる」


「何だろう? 僕が見てこようか?」


「ちょっと待て、日向。お前は三村を守らないといけないだろ?」


「それじゃあどうするの?」


「俺が行って見て来る」



 日向よりも俺の方ががたいがいいから、何があっても大丈夫だろう。

 それに姫を守るのは王子様の役目だ。偵察任務は2人の従者である俺が行くべきだろう。



「山村君。大丈夫なの? もし不審者だったら危ないわよ」


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。ちょっと見てくるだけだから。心配するな」



 そういって俺は1人で林の方を覗きに行く。

 林に近づくについてかなきり音が大きくなる。

 そして林を覗くとそこにいたのは‥‥‥。



「何だよ、こいつは?」



 林の奥にいたのは緑色をした人間のような生き物だった。

 身長120cmぐらいの小さな化け物。短い手には包丁サイズの鋭利なナイフを持っている。

 赤い帽子を被り、帽子の奥から光る目はギラギラと輝いていて、口からは犬歯が見えた。



「もしかして‥‥‥」



 俺はこいつを見たことがあるし、よく知っている。

 ただそれは、現実では無い。見たことがあるのはゲームの世界だ。

 こいつは‥‥‥‥こいつの名前は確か‥‥‥‥。



「ゴブリン?」



 俺が独り言を言った瞬間、目の前のゴブリンと目があった。



『やばい!? 殺される!!』



 そう思った瞬間、ナイフを持ったゴブリンは俺に飛び掛ってきたのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 必要十分な量の情報でまとまっていて、流れがしっかり繋がっている。 [一言] 一話だけでみると理不尽な二人がただ不愉快な感じだったけれども、意外と付き合いがあって仲が良い(?)ことが判明した…
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