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VSコボルト

「銃なんてどうやって取り出すんだよ?」



 job固有の武器が手に入っても、取り出し方がわからなければ意味がない。丸腰で戦うのと同じだ。



「そういえば日向のやつ、武器の取り出し方の説明を一切してなかったな」



 こんなことになるなら、予め取り出し方を聞いておけばよかった。

 完全に俺のミスだ。



「出てこい! 銃、銃!!」



 銃と言っても何も出てこない。両手を見るが、それらしきものも見当たらない。

 一体どうしたら武器が取り出せるんだよ。



「くそ! ハンドガン出ろ!!」



 その瞬間、右手に鉄の感触がした。感触のあった右手に目を落とすと、俺の手元には装備品のハンドガンが出てきたのだった。



「そうか、武器の名前を言えばいいのか」



 もしくは武器の名前を念じるんだな。

 日向も武器を取り出す時何も言ってなかったが、頭で念じてから取り出していたのか。



「無理するなよ、日向」



 これでやっと戦える。コボルトに銃身を構え、いつでも銃を撃つ態勢が整った。

 だが、日向がコボルト4体に対して大立ち回りをしているせいで、うまく狙いが定まらない。



「突っ込みすぎだ! もう少し下がれ!!」



 1人単身コボルトの群れに突撃する日向。上手く攻撃を避けながら、4体のコボルトを相手にしている。

 敵に致命傷を与えられてはいないが、若干コボルト達の動きも鈍くなってきている。

 4体も相手にしているのに、日向のほうが押しているように見えた。



「押してるからいいが、日向の野郎。完全に理性が飛んでやがる」



 先程から俺の言葉が届いていないみたいだ。

 一心不乱に剣を振り続けて、コボルトを倒そうとしている。



「今援護する。日向はそのまま4匹を引きつけて‥‥‥‥ってあれ? どうして」



 銃の銃身をコボルトの頭に定め、引き金を引こうとするが引けない。

 何かの力が働いているように堅い。



「何でだ!? どうして」



 何が間違ってるんだよ。いくら引き金を引こうとしても動かない。

 銃って引き金を引けば勝手に弾が出るんだろ?



「わかった、安全装置か」



 銃に安全装置がついていることを思い出す。

 何故思い出したのかはわからないが、はずし方まで全て手に取るようにわかった。



「やぁ!!」



 向こう側では、日向が1体のコボルトの剣を弾き飛ばしていた。

 そして剣が無くなったコボルトの首を一閃、跳ね飛ばしたのだった。



「後3体か」



 コボルト達も気を引き締めなおしたようで、残りの3体が連携して日向に襲い掛かる。

 それを1人で捌いているが、さすがに限界だ。徐々に押し返され始めた。



「これで大丈夫。後は奴の頭に‥‥‥‥」



 日向とつばぜり合いをしているコボルトの頭部めがけて銃身を合わせる。

 頼むから当たってくれ。そう願いながら、片手で持った銃の引き金をコボルトの頭部に狙いを定め引き金を引いた。



「うわっ⁉︎」



 引き金を引いた瞬間、辺りに乾いた音が鳴り響く。 

 同時に銃の反動で思わず俺は後ろにのけぞってしまう。



「弾は? どこにいった?」



 慌てて起き上がり弾丸がどこにいったか確認するが弾は見当たらない。

 どうやら俺の弾はコボルト達がいるところよりもっと上の方に飛んでいったみたいだ。

 あれだけのけぞってしまえば、銃弾も上にいってしまうだろう。

 だが、一瞬でもコボルトの気を引くことには成功したみたいだ。一瞬でも隙が出来れば、日向の奴が。



「くらえ!!」



 つばぜり合いに勝ち、そのままコボルトを押し返す。そしてコボルトがよろけた所をそのまま横にないで上半身と下半身が2つに分かれた。

 狙いから外れてしまったが、結果的にコボルトを1体倒せた。これで後2体だ。



「空!」



 どうやらコボルトも日向以外の存在に気づいたらしい。

 この群れのボスらしきひときわ大きいコボルトが剣を振りかぶり、俺の方に襲い掛かって来た。



「逃げて!!」



 日向は叫んでいるが、逃げるって一体どこに逃げるんだよ。こいつ等を倒さないと俺達は結局ここで仲良く殺されるだろ?



「大丈夫だ。こっちは任せろ」



 何故だろう。今にも殺されそうだって状況なのに、全然怖くない。

 むしろ、コボルトを見ながら別のことを考えていた。



「銃の反動って、意外と大きいんだな」



 ハンドガンといえど、片手では打つのは至難の技だ。ゲームや映画のようには上手くは行かない。

 でも片手で打てないなら、それはそれで他に方法がある。



「だったらこれでどうだ? 銃を両手で押さえつけるように‥‥‥‥」



 今度は両手でコボルトに向かって銃を構える。片手で反動が大きいんだから、それを押さえ込むように両手で構えれば、上手く打てるはずだ。



「山村君!!」



 どうやら後ろにいる三村までが、俺の心配をしているようだ。きっと側から俺が危ないように見えるんだろう。そう思う理由もわかる。

 今俺のことを見るコボルトは遠目でもわかるように笑っている。

 まだ銃を使いこなせていないのがわかっているせいか、襲い掛かってくるコボルトは銃を向けられているのに全く怯えていない。



「なめやがって」



 さっきのようには行かないぞ。

 ギリギリまで引きつけて、的が大きくなるのを待つ。

 そしてゴブリンが剣を振り上げる時を待つ。一瞬動きが止まる瞬間。その瞬間を俺は待ちわびていた。



「当たれ!」



 そうつぶやくと同時に引き金を引く。

 その弾道は先程とは違い真っ直ぐ飛び、コボルトの頭に命中した。



「まだまだ」



 巨体を揺らしたコボルトに向けて連続して発砲する。

 パン、パンという空気の乾いた小気味のいい音と共にコボルトの頭に何発もの弾丸が命中した。

 その数5発。その全てが、コボルトの頭部を捉えていた。



『カチン、カチン』


「弾が無くなった」



 どうやら弾が無くなったらしい。

 先程外したものも含めると6発。どうやら6発がハンドガンで打てる限界みたいだ。



『リロード時間5秒』



 頭の中に機械の音声が鳴り響く。どうやら弾の補充は勝手にやってくれるらしい。

 リロード5秒ってことは、5秒間ハンドガンは使えないってことか。

 でも、今はそれよりコボルトだ。



「やったか?」



 ここでコボルトを倒せていないと、俺が殺されてしまう。

 フラフラと揺れていたコボルトが剣を落とし、力なくその場に崩れ落ちる。

 ドサッと倒れたと同時にコボルトの身体が光に包まれ、消失したのだった。



「やった」



 俺がコボルトを倒したことを実感した瞬間、日向の方もけりが付いたみたいだ。

 最後の1匹を日向が剣で切りつけ、日向の方にいたコボルトも消滅したのだった。



「終わったんだよな」



 日向がコボルトを倒した姿を見て安堵してしまい、俺はハンドガンを手放して仰向けになり、天を見上げてしまう。

 あぁ、しんどい。戦うのがこんなに神経を使うものだとは思わなかった。



「そうだよ、終わったんだよ」



 こんな情けない姿をさらす俺を覗き込むのは日向である。

 日向もコボルト達相手に大立ち回りをしたのに、汗1つかいてない爽やかな笑顔を浮かべている。

 こっちは額から背中まで冷や汗ダラダラなのに。さすがは勇者、うらやましい限り。従者の俺とは大違いだ。



「立てる? 空? 腰抜けたりしてない?」


「バカにするなよ。こんなことで腰が抜けるわけないだろ。それよりお前は三村の介抱をしてやれ」


「わかった」



 強がりを言ったつもりだが日向は信じてないようだ。にっこり笑ったまま俺の方に手を差し出してくる。



「少しは俺を放っておいてくれよ」


「ダメ」



 どうやら日向は俺のことを放っておく気はないようだ。

 俺が1人になりたいのがわからないのかよ。いや、わかっていてやってるんだろうな。

 せめてもの抵抗で、日向に聞こえるように舌打ちをして、しょうがなくその手を取った。



「疲れた」


「僕も」


「正直こんな命のやり取りが、どれくらい続くんだろうな」


「僕達を襲う奴がいるなら、ずっと続いてくよ」


「ずっとか」



 そう考えると果てしないな。これからもこんなギリギリのしんどい戦いを続けるのは。

 だが、そんな感傷に浸る暇も俺達にはない。今は俺達が生き残ることだけを考えないと。



「そういえば、悠里ちゃん」



 日向は三村を見つけると、そっちの介抱へと行く。

 先程の戦いを見ていたからか、腰が抜けて動けないようにも見えた。



「どうせ日向の奴が見ているし、放って置いても大丈夫だろう」


『山村空はスキル 両手打ちを覚えた』


「相変わらず、このアナウンスだけは平和でいいな」



 アナウンスが遅いわ。と心の中で突っ込みながら、日向達がいる方へと歩いていく。

 この時俺はある決心をした。



「絶対にこの腐った世界を終わらせてやる」



 そう心に誓い、俺は三村を介抱する日向の下へと向かったのだった。

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