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第二話 姫騎士と魔導姫

 冷たい感触に薄寒い空気を感じて目を覚ました。


 トラックに乗っていた筈だったが……投げ出されたか……?


 最後に見たのは二十メートル以上の落差の川だった筈だ。

 落ちたら無事では済まない筈だと思いながら身を起こす。


 何処だここ……病院にしちゃ……。


 床がひんやりと冷たい。

 どうやら石畳の様だ。


 まさか……墓の中とかか?


 昔読んだ小説に、仮死状態で霊廟に安置されて息を吹き返した男の話があったが、生憎と俺の家はそこまでの裕福ではない。


 目が慣れてくると、部屋の様子が分ってきた。

 どうやら二十畳ほどの部屋の様だ。

 壁周りは石積みで、高い位置に灯された松明が何本も置いてある。


 夢にしてはリアルすぎる床の石の冷たさに、手元を見ると円の中に何やら幾何学模様や見慣れない文字が彫ってある。


 もしかしてこれ魔法陣って奴か……?


 俺は拘束もされておらず、服装は仕事してた時の会社の制服であるジャケットにポロシャツとカーゴパンツ姿。

 財布もスマホもちゃんとある。

 だが、スマホはうんともすんとも反応しない。


 ふと右側に木造りの扉を見つけ、開けようとしたがびくともしない。

 外から閂か何かで閉じられてるようだ。


 仕方なく中央に戻って、胡坐座りで考えを巡らす。


 両手で頬を二回叩き、その痛さでやはり夢でないのを自覚する。


 何だろ? 寝てる間に誰かに誘拐されて閉じ込められた……?


 でも誰が何の為に……?


 そもそもしがない弱小ブラック運送企業の平ドライバーを攫うメリットが何処の誰にある……?


 やはりあの夢の通り異世界に転生したのか……?


 それならこんな古めかしい地下牢みたいな所にいる説明は付かないでもない……。


 しかし余りにも突拍子無さ過ぎる……。


 確かに『神様』と名乗った存在は俺に『創造』と『叡智』そして不老不死の能力を与えると言った。


 だが俺自身特段何か変化があったようには思えない。

 仕方なく目を瞑って能力の事を考える。


 確か『叡智』で調べろって……。


『叡智』、『叡智』、『叡智』~教えろ『叡智』~。


 適当に念じていると、俺の頭の中に言葉のイメージが浮かんできた。


『転移完了、これより神技スキル及び身体能力の最適化を始めます。なお終了までは元の世界と同じ能力しか使えません』


 てっきり視界に文字が浮かび上がってくる物と思っていたので、少々拍子抜けした。

 まぁ、目の前にあれこれ文字や図形が浮かんでも実際は鬱陶しいだけかもしれないしな……。


 でもなんだよ最適化って……ハードディスクじゃあるまいし……。

 とにかくその最適化とやらが終わるまではじっとしていた方が良いな……。



 そんな俺の希望を掻き消すかのように不意に扉が開いた。


「⁉」


 暫く空いたままの扉から女が二人様子を伺いながら入ってきた。


 一人は騎士風の鎧に身を包んでおり、蜂蜜のような濃い金髪のショートカットの後ろ髪だけ伸ばしている。

 凛々しい顔立ちは何処となく中性的でもあり、それが鎧姿になんともマッチしている。


 もう一人は肩まで伸ばした淡い金髪で、濃い緑のドレス風の服の上にローブを着込んでいて、手にはなにやら紫色の水晶のような石を嵌めた杖を握っており、魔法使いと言う感じがピッタリのいで立ちをしている。


 緑色の瞳? カラコンとかじゃないのか……。


 二人の装いはファンタジー世界の騎士と魔法使いと言った感じだが、面立ちといい服装といい、どこかお姫様っぽい雰囲気を醸し出してる。


 二人が部屋に入ると再び扉が閉まった。


 しばらく二人は俺をじっと見つめている。


「あ……あのぉ……こんにちは」


 試しに初めての納品先でするみたいに話しかけてみるが、二人には通じていないらしく、俺の挨拶を無視していたがやがて相談を始めた。


「アルジナ カレオチオ?」


「……ベレブリヌ」


 今度はこっちがさっぱり理解できない。

 やべぇ、異世界に来て言葉が分らないなんていきなり詰んでるじゃねぇか……。

 どうにか言葉が分らんもんかな……。


 不意に俺の頭の中にスキル『叡智』のイメージが湧いた。


神技スキル最適化完了、続いて身体能力の最適化を始めます』


 続いて『神技作成――言語変換』のイメージが湧く。

 すると、


「どう見てもただの人だろ、コレ。しかも何言ってるか判らないし」


「……やっぱり失敗」


 おお! 言葉が判るようになったぞ。

 なるほど、何となく神技がどういう物か分かってきた。

 多分イメージしたものがその通りになるんだな。

 で、『叡智』が細かい部分を補佐してくれる。

 だから漠然と念じれば良い訳だ。


「あの……こんにちは」


 あらためて挨拶しなおすと二人ともギョッとした顔になった。


「な、なんだ普通に話ができるのか……」


 鎧娘がつぶやく。


「……あの、貴方様はティンパン・アロイ様?」


 ローブ娘が尋ねてきた。


 ティンパン? なんだそりゃ……。


「いや、俺は牧島大悟って名前ですが……」


 それを聞いて少女達は絶句した。


「マキシマダイゴ……やはりティンパン・アロイじゃないのか……はぁ……失敗だな……」


 鎧娘が溜息をつきながらに呻く。


「……やっと成功したと思ったのに……」


 ローブ娘も盛大にガッカリしている。


 ティンパン・アロイって誰だ? さっぱり解らん……。


 そう思った俺の頭の中に『叡智』のイメージが浮かんできた。


『ティンパン・アロイ……この世界の通称東大陸の一部で信仰されてる架空の英雄神。召喚の儀式によって顕現し多くの軍勢を打ち倒す力を発揮すると信じられている』


 成程ね。


 その英雄神とやらをこの二人は召喚しようとしてたが、架空の神だから当然実現しない……。

 そこに俺が送り込まれた訳か……。

 神様も冗談キツイな……。


「……この人どうする?」


 ローブ娘がばつの悪そうな顔でこっちを見ている。

 あからさまに俺は余計な者という認識の様だ。


「うーん、間違いとはいえ召喚された男だ。もしかしたら何か特別な力を持ってるのかも知れないな」


 そう言うと鎧娘は腰の剣をスウッと抜いた。


「へ?」


 何となく首から後ろに冷えるような痺れる様な感覚が襲ってきた。


「マキシマダイゴとやら、貴殿は武技や魔法の心得は有るか?」


 剣を構えながら鎧娘が尋ねてくる。


「い、いや、そういうものは余り得意では……」


 つか魔法なんて手品くらいしか知らんがここで言ってるのは絶対違うだろうな……。


 自慢じゃないが生まれてこの方、武道なんて高校の授業の剣道くらいしかやってないし……。


「貴殿の力、見せてもらおう。本気でかかってこねば命を落とすと覚悟してもらう」


 鎧娘の目が座った。

 戦いに関してド素人である俺でもこの状況が危機的なのは感じ取れた。


 オイオイオイ! この鎧娘は脳筋かよ! 転移していきなり戦闘とか勘弁してくれよ……!


 どうする? まだロクに力の使い方も判ってないのに戦闘なんかしたら下手すりゃ又死ぬぞ……。

 あれ、死なないんだっけ……?

 取りあえず時間を稼がない事には……。

 脳をフル回転させて時間稼ぎの方策を考える。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 慌てて手を前に出して振って叫んだ。


「何だ?」


 剣先をこちらに向けたまま鎧娘の動きが止まった。

 取りあえずチャンスだ。


 おい『叡智』! 何か身を護るとか攻撃手段とか無いのか……⁉


 するとまたイメージが湧いてくる。


『現在最終段階更新中、もう少々で完了します』


 ああー! パソコンみたいにそっから長かったらシャレにならねぇぞ……!


 と、とにかく時間稼ぎだ……!


「い、いきなり人を呼び出しといて剣を向けるなんて、ず、随分だとは思わないか?」


 心の中で冷や汗を掻きながら、精一杯の虚勢を張って鎧娘に尋ねる。


「何が言いたい?」


 鎧娘がジリジリと間合いを詰めながら聞いてくる。

 俺もジリジリと間合いを取りながら、しかも必死で考えながら答える。


「言いたいじゃなくて聞きたいんだ。まずここが何処であんた達は誰なのか。そして何で俺をこんな所に呼び出したのか」


 取り敢えずは疑問の基本三点セットだ……。


 三Wだかなんだか英語の時間に習ったような気がするが、とにかく現状が分らない事にはその次の判断が付かん……。


「ここはボーガベル王国、私たちはそこの人間、何で呼び出したかは魔法陣の召喚だ!」


 鎧娘が即答した。

 答えになってねぇ……。

 つか何一つ判らないじゃないか……。


「いや、もっと具体的にだな……」


 その時『叡智』が「最適化完了」のメッセージを送ってきた。

 おし! すぐに……防御と攻撃手段! 早く……!


『武器は使用しますか?』


 んなモン無ぇ! アレだ! 格闘! 早く……!


『絶対物理防御作成、絶対魔法防御作成、究極格闘技作成、状態異常無効作成』


 お? おおおっ! おおおおお!!!


 頭の中に様々な格闘技の技術が濁流のように流れ抜けていく。

 具体的には古今東西の様々な格闘者の動きが次々と頭の中に浮かび、それがまるで自分が為しているかのような感覚だ。



「これ……? 成功したのか?」


 格闘技術はともかく防御は何も変わってないようだが……。


「てええええええい!」


 隙と見た姫騎士が上段から裂帛の気合いで打ち込んでくる。


『無刀取り』!


 頭に瞬時に技名が浮かび、すかさずかがみながら踏み込むと振り下ろされる鎧娘の両手に向かって伸びを利用してアッパーカット気味の掌打を放つ。


 パン!


「なっ!」


 鎧娘の持っていた剣は掌打に弾かれて俺の後方に落ちた。


 一瞬あっけにとられた表情していた鎧娘だったがすぐに正拳を叩き込んで来る。

 だがそれをすぐさま手で捌く。

 すかさず上段から捻りを加えた回し蹴りを飛ばしてくる。


 鎧娘は剣技だけではなく格闘術にも心得があるようだ。

 それを受けるとすかさず身体を捻った。


「なぁっ?」


 鎧娘の身体が巻き込まれるように回転し、床に叩きつけられる。


「あうっ!」


 プロレスでドラゴンスクリューといわれる技だ。

 勿論俺はプロレスなどテレビで見る側であってやっても、小学生の頃の四の字固め程度でこの様な高等な技など掛けた事すらない。

 それをプロレス愛の高い名選手の如く流麗な流れで容易く掛けることができた。


「ぐっ」


 鎧娘が起き上がろうとした所をすかさず脇固めに取る。


「ぐぅ! は……なせ!」


 やっぱり「くっ殺せ」とか言わないもんだな……。


 少しだけ落ち着けたせいか下らない事を考えた瞬間、目前で何かを呟いていたローブ娘の持つ杖の水晶が鈍く光り、火の塊が俺目掛けて飛んできた。


「げぇ!」


 慌てて鎧娘を掴んでいた腕を離し転がりながら火の玉を避ける。

 すると拘束が解けた鎧娘がすかさず剣を拾ってまた斬り込んできた。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 俺はアンタ達と戦う気はないんだっつーの!」


「やかましい!」


 横薙ぎの一閃を避けるとそこに狙ったように火の玉が飛んできた。


 やべ! 避けれね……。


 そう思う間も無く火の玉が直撃し、全身が炎に包まれた。


「やった!」


 鎧娘が叫んだ!


 が、


「ぎゃあああ……あれ?」


 暫く燃えていた炎だったが直ぐに燃料が尽きた様に消えていった。

 そこにいたのは全く火傷のやの字も無い俺。

 実際熱くも何とも無く、服すら焦げてもいない。


「……どうして? 何で何ともないの!?」


 ローブ娘が驚いた目で見ている。

 そこへ鎧娘が再び斬り込んできた。


「えやああああああああああっ!!!」


 キィイイイイイン!!


「ぐあっ!」


 十分に斬ったと思った鎧娘の剣は、まるで鋼にでも当たったかのように鎧娘ごと弾き飛ばされた。


 衝撃でゴロゴロと転がった鎧娘にローブ娘が駆け寄る。


「メアリア!」


「っ、大丈夫だシェアリア。なんだ!? 帷子を着込んでるのか? 炎撃を使うぞ!」


「……分かった!」


 メアリアと呼ばれた鎧娘が立ち上がり再び剣を構えた。

 そしてシェアリアと呼ばれたローブ娘が呪文を唱えると、メアリアの持っている剣に嵌っている紫の水晶が輝きだし、剣に炎が浮かび始めた。


「お前ら……本当に人の話聞こうとしないな……」


 相手の攻撃が通じないと分かったせいで心に余裕が出て来た所為か、少々苛ついてきた。

 女に手を挙げるのは趣味じゃないんだが、こうもしつこいとなぁ……。

 双方が同時に攻撃に移ろうとした刹那、扉の外から、


「おやめなさい!」


 と力強く、それでいて澄んだ声が響いた。

 それを聞いた途端2人の動きが止まる。



 重々しく扉が開き、声の主が駆け込んできた。

 青い瞳にプラチナブロンドのウェーブが掛かった足元まで届きそうな豊かで長い髪。

 非常にととのった中にも愛くるしさをもったその相貌は、まさに王女と呼ぶにふさわしい。


 中にいる二人もかなりの美少女なのだが、彼女はワンランク上を行っている。

 変わったところでは、まとっているドレスが良くあるシルク地の艶々した物ではなく、何となく粗末な感じのドレスだ。

 だがそれを差し引いて有り余るほどの美しさだ。


 だが顔色は蒼白で狼狽と怒りの表情が浮かんでいる。


「エルメリア……どうして」


 メアリアが戸惑いの表情を浮かべながら尋ねた。


「メアリア! 英雄神様にいきなりの腕試しを挑むなど無礼が過ぎます!」


「しかし、こいつはどうして見てもティンパン・アロイじゃない。ならば……」


「だからといっていきなり剣を向けてどうするのですか! 貴方は礼節を重んじる騎士でしょうに!!」


「っ……す、すまない」


 メアリアがエルメリアの剣幕に押され直立姿勢で頭を垂れた。


「謝罪するならまず英雄神様にでしょう」


 メアリアは俺を罰の悪そうな顔で見ると、


「すまなかった」


 と頭を下げた。


「メアリア!」


「っ! すみませんでした!」


 オカンとムスメか……。


「シェアリアも」


「……大変ご無礼を働きました。申し訳ありません」


 シェアリアはすんなりと頭を下げた。


「取り敢えず謝罪は受け取って置くよ。であんた達は一体何者で、そもそもここは何処なんだい?」


 エルメリアの目が大きく見開かれた。


「この二人はそれも説明してなかったのですか……」


 それを聞いた二人が必要以上に縮こまっている。


「大変失礼しました、英雄神様。私、ボーガベル王国第一王女でエルメリア・ラ・ファルファ・ボーガベルと申します」


「私はメアリア・ラ・エルケス・ボーガベル。エルメリアの従姉妹で第二王女。近衛騎士団長をしている」


「……シェアリア・ラ・クルファルマ・ボーガベル。同じくエルメリアの従姉妹で第三王女で魔導士筆頭」


「その英雄神様は止めてくれ。俺は、マキシマ・ダイゴ……名前が先ならダイゴ・マキシマか」


「分かりました、ダイゴ様。ここはボーガベル王国の王都パラスマヤにある私たちの居城です」


「で、チンパン何とかがどうとか言ってたが、何の話なんだ?」


「チンパンじゃない! ティンパン・アロイだ!」


 メアリアが唸った。


「……ティンパン・アロイとは我がボーガベル王国の開祖ゴルシオイの窮地に顕現し、開国を助けたと言う伝説の英雄神。城の書庫にゴルシオイが使用した召還魔法の書がありそれを使って何度も術を試してようやく成功したと思ったら貴方が現れた」


 と、シェアリアが説明した。


 まぁ神様があんなのじゃ無理だって言ってた位だからその本は眉唾モンだろう……。


「でなんでそのチンパンを呼ぼうとしたんだ?」


「だから! ティンパン!」


 更に唸るメアリア。怒った顔はなかなか可愛らしい。


 エルメリアが切り出す。


「今、我がボーガベル王国は隣国エドラキム帝国の侵略を受けています。帝国は西方二都市を占領し、今まさにこのパラスマヤに迫ろうとする勢いなのです」


エルメリアは視線を落として、ため息をつくと続けた。


「国王以下主だった貴族達は総力を挙げて西のモラス平原に防衛陣を構え、帝国軍を迎え撃とうとしてますが帝国は五千以上の軍勢に対し我が方はわずか二千人程……」


「なるほど、明らかに多勢に無勢、で俺を召喚したって訳だ」


 実際は召喚された訳ではないんだが、敢えて話を合わせる事にした。


「仰る通りです」


「しかし、他所に援軍を頼むとかしなかったのか」


「もちろん古い盟約に従って各国に援軍を求めましたが、皆帝国の矛先が自分に向くのを恐れて断られました。唯一帝国と対峙しうる兵力を持つ南のバッフェ王国も、内政に問題を抱えているらしく色良い返事をもらえません」


 で、国王から総出で防衛戦に出払ったって訳か。

 そりゃ英雄神に頼りたくもなるわ……。


「例え英雄神ティンパン・アロイ様では無くとも召喚の儀で呼ばれたお方、よくぞおいで下さいました」


 エルメリアが跪き、深々と頭を下げた。

 メアリアとシェアリアも慌てて跪く。


「そこで召喚しておきながら身勝手なお願いと承知の上ですが、何卒そのお力をお貸し願えませんでしょうか」


 顔を上げたエルメリアが潤んだ瞳で見つめてくる。


「うーん」


 心情的にはもちろん力を貸してやりたいが、こちとらまだ転移したばかりで能力がどうなのかさっぱりわからない状態で「はいそうですか」とは安請け合い出来ないよな……。


「勿論それなりのお礼は致します、ただ現在王国は帝国との戦争により困窮しており、多くの謝礼をお支払いすることが出来ません。」


 ん? なんか世知辛い話になってきたな……。


 英雄神って金で動くものか……?


「も、もしわ、私を……差し出せとおっしゃるのでしたら……」


 最後の方はゴニョゴニョになってたが、真っ赤になりながらエルメリアは言った。


「へ? そ、それってまさか……」


「「エルメリア!!」」


 メアリアとシェアリアが同時に叫んだ。


「お前第一王女だろう! 言ってる意味を解ってるのか? 王室を離脱するって事だぞ!」


「その時は第二王女のシェアリアが継げば良いことです」


「……この人を召喚したのは私なんだから、私が……」


 そう言ってるシェアリアも顔を赤くする。


「いや、二人にそんな事はさせられない。ここは私が、その、あの、なんだ……」


 やはり顔を赤らめながら明後日の方を向きしどろもどろになるメアリア。


 まぁ三人ともウブ丸出しなのは仕方ないのか……。


「とにかく、いきなりの事で気持ちの整理がついてないんだ。ちょっと落ち着かせてくれないか」


 転移してからまだ一時間も経ってないだろうに展開が急過ぎる……。

 自分の能力を含め色々考える時間が欲しい……。


「そうですね、大変失礼しました。ではちょうど晩餐になりますので、ご一緒にお召し上がりください。こちらへ」


 そんな時間だったのか……。

 そう言われて初めて腹が減ってきた。


 しかし、いきなり殺されそうになるとか大丈夫なんかな……。


 そんな事を心の中でぼやきながら俺は三人の後を付いて薄暗い部屋を出ていった。

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