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スーパーのレジ打ちとお客さま  作者: 美々少年
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男性客編  5話 日曜日の昼

Kスーパーの彼女の白い肌とキラキラとした瞳を間近で見たい。



あの柔らかい指先にもう一度触れたい。



10年前、昔の彼女と別れるまでは飽きるほど女性と肌と肌を触れ合わせていたが、その感触の記憶はほとんどない。



むしろその彼女に裏切られて女性不信に陥ってからというもの女性の肌と触れ合うことに拒否反応さえ覚えてしまう。



しかしKスーパーの彼女の手と手が触れ合ったときの衝撃、あの心地よさは未だにはっきりと覚えている。



僕の住処はKスーパーからバイクで10分ほどの距離、家賃60000円のアパート独り暮らし。



今日は日曜日で仕事が休みなので、早起きして部屋の掃除をし、溜め込んでいた洗濯物を洗濯機に放り込んだ。




そうだ、今日はお昼ご飯をKスーパーに買いに行こう。




現在気になる女性、そうレジ係の彼女と近距離で会う可能性があるので体臭だけは気をつけたい。


女性は化粧で多少は誤魔化せるが、男性はスッピンで勝負しなければならないので、年齢的にはアラフォーのオッサンの僕だから、せめて身体だけは常に清潔にしておきたいのだ。



女性は臭い男が大嫌いなのだ。一度でも臭い男と認定されたらアウト


挽回不可能。



幸い、彼女と初対面のときは会社でシャワーを浴びた直後だったので、第一印象で臭い男とは思われていないはず。



お風呂に入り念入りに頭皮と身体をゴシゴシと洗う。


髪のセットは生まれつきのストレートなのでドライヤーで乾かしてブラシでとかすだけで出来上がり、ベタベタと不潔っぽく見えるのが嫌なので整髪料は一切不要なのだ。



洗濯物を干したあと玄関を出る。



Kスーパーの駐輪場にバイクを停め携帯電話の時間を見ると11時25分だった。



店内に入り、今日はついでに切らしていたトイレットペーパーを買いたいので入り口付近に積んである買い物かごを掴んだ。



店内を見渡すと夫婦や恋人どうしで仲良く買い物に来ている男女がちらほらと目立つ。


しかも日曜日のお昼どきのせいか店内は買い物客でごった返していた。



正直な気持ち、男独りで買い物かごを持ってスーパーの中を歩くのは照れ臭い、誰も僕のことなんか気にしてないだろうけどね。



いつもの唐揚げ弁当と500mlのペットボトルのお茶、ついでに炭酸飲料も3本かごに入れた。



それからスナック菓子を3袋、お煎餅を2袋、トイレットペーパーの8ロールで買い物かごは満タンになった。



さてここからが本題、今日は彼女はいるのか?



恐る恐るレジコーナーに近づくが、全てのレジに平均4人のお客の列ができていて、彼女の居場所が確認しにくい。



すると引き寄せられるような感覚で何気に端っこのレジに視線を向けると、彼女の斜め後ろからの横顔の白い肌が認識できた。



これだけ大勢の人混みの中なのに彼女の姿が瞬時に判別できた。



僕はなんの躊躇もなく彼女のレジに並んだ。



厳密にはバーコードスキャン係と会計係の二人制なので、もうひとりの店員さんが並んでお仕事をしている。



ちなみに彼女はスキャン係だ。



僕の順番までお客は3人、約10分間、いつもより長く彼女の近くに居ることができる。



さすがに彼女の横顔を凝視し続けるような不審な行動は非常識なので避けたいが、数回チラっと見るだけなら許せる範疇だろう。



並んでいるとき、視線のやり場に困るので、真っ直ぐな方向、即ち彼女の向きと90度の方向を向きながら横目で彼女の手元を見ていた。



凄い速さだ、まるで全商品のバーコードの位置を記憶しているかのごとく。


驚いたのが、ただ速いだけではなく、商品ひとつひとつを丁寧に手に取り、会計済みの買い物かごに丁寧に並べている。

しかも商品を潰さないようにの配慮か?大きくて重い商品は下段、軽そうな商品は上段に整頓されている。全く乱雑ではない。まさに芸術。



いよいよ僕の順番が回ってきた。




「いらっしゃいませ」




彼女は僕の立っている方向に身体ごと向いて僕の顔を見ながら会釈してくれた。



買い物かごをレジ台に置き、僕も彼女の顔が見ながら軽く会釈した。



当然、彼女に初めてレジを打ってもらったときのように買い物かごが落下するようなハプニングは起きない。



ほんの一瞬彼女と目が合った。



混雑中のレジ作業のせいか疲れた表情ではあったが、目だけは優しく穏やかに笑っていた。


感受性が強い僕はそういうところに敏感なのだ。



お互いに顔は斜め下向きだが、中間に設置してあるスキャンの機械に挟まれながらも約50センチほどの距離で、僕と彼女は真正面に位置している。



僕はレジ台にピッタリくっつくほど接近しても、彼女は後退りすることなく淡々とスキャンに没頭している。



このまま時間が止まればいいのに、それも束の間



「では、お会計の方へお願いいたします」



僕は彼女が目の前に立っていることで緊張してしまったのか、首が硬直して顔を上げることができず、斜め下を向いたまま軽く会釈して、会計係の方へ横移動した。



会計を済ませ、商品を袋詰めして店を出る帰り際に、チラっと彼女の方を見ると、お客の行列と、必死にレジの作業をしている彼女の姿が目に入った。



帰宅して昼食と食べながら、レジでの彼女とのやり取りを思い出す。



彼女が一瞬、僕のことを見たときの目は拒否している目ではなく、優しい目だった。



そして、左手薬指には指輪を嵌めてなかった。



あんなに綺麗な女性を男性が放っておくわけがないと思うのだが、ちょっとだけ安心感を覚えた。



そして、なぜか僕の順番のときは商品のスキャンスピードがゆっくりだったような気がしたのだが?



つづく。


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