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39話 その槍は稲妻が如く

 ノアたちを背に、オレとガルターはガルナの前に立つ。

妙にいけ好かねぇヤツだ。

相手にするには丁度いい。


「いいんですか?

 私はたしかにザサンよりは弱い。

 ですが、黒き太陽の祝福がある今、貴方たちが勝てる要素がありません」


「アレなら連れが何とかする。

 それに、アレが何であろうと関係ねーな」


「そうだ。

 我輩、いや我輩たちは、目の前の敵を倒すのみ」


「……やれやれ、そういうのはザサンだけで充分です」


 言った瞬間に、ガルナが消えた。

後ろから攻撃、横から攻撃、下から攻撃。

見えねー攻撃が色んなとこからとんできやがる。


 見えねー攻撃は防げねー。

守りを固めてガルナの疲労を狙うか……?


 いや、無理だ。

そもそもアイツ、疲れんのか?

生きてる以上疲れねーってことはないだろうが、疲れる前にやられる可能性もある。

手加減してるってこともありえるしな


「騎士のおっさん。

 見えるか、アイツが」


「見えん」


 素直に言うじゃねーか。

オレも見えねーんだけど。


「奇遇だな。

 オレも見えねーんだ」


「確かに、見えん。

 だが」


 ガルターは守りを固めながら、目を閉じた。

しばらく攻撃を受けたあと、剣を構える。


「ここだ!」


 虚空に剣を振るうと、大きな金属音がした。

それはガルターの剣と、ガルナの翼がぶつかって鳴った音だった。

空中にガルナが現れる。


「……ほう。

 私を捉えますか」


「消えているわけじゃない。

 早いだけなら、音でわかる」


「なるほどな。

 本当なら、オレの方が得意なんだろうな、それ」


 姿を現したガルナに槍を放つ。

硬い翼で槍は防がれるが、一本、羽が抜け落ちた。

しかしすぐに再生し、新しい羽が生えてくる。


「面倒なヤツだ。

 はえーし、かてーし再生まですんのか」


「全部抜ければ、再生に時間がかかるのでは?」


「相当な労力だな。

 ま、やってみるしかねーか」


 ガルターに目で合図を送り、左右に分散。

左右から挟撃をしかける。


 高速移動で逃げようとするガルナを、ガルターが音で追う。

目の動きから場所を予測して、オレは槍を放った。


 金属音、当たり。

次は……こっちか。

しかし次は外れ。

なら……ここだ!


 薙ぎ払うように槍で攻撃。

金属音、当たり。

何本かの羽が抜け落ちるがすぐに再生。


 再生速度は落ちていない。

全部抜けても、これじゃすぐに再生しちまうだろう。


「おっさん、やっぱあの話は無しだ。

 無理だぜ、こりゃ」


「そのようだ。

 と、なれば、できる限り致命傷を狙うしかあるまい」


「ってもどーするよ。

 翼が邪魔で大体防がれちまうぜ」


「どうにか動きを止められれば……」


 直後、ガルターが吹き飛んだ。

どこかからの攻撃。

音で高速移動の範囲を予測しているはずのガルターが、攻撃を受けた。


「チッ!」


 闇雲に槍を振るう。

だが、攻撃は当たらない。


「クソ、匂いもわかんねーし。

 これじゃどうしようも――」


 真下からの攻撃。

宙を舞ったかと思えば、腹に強烈な一撃。

勢いよく床に叩きつけられ、床の一部がぶっ壊れた。


「……くっそ!

 店壊したら怒られんだぞ……!」


 槍を構える。

ガルターも体勢を整え剣を構えた。

依然として、ガルナの姿は見えねー。


 コツコツと、屋根に何かが当たる音がした。

すぐに大量の雨粒が降ってくる。

雨だ。


 だが、雨にしては妙に量が多い。

あっという間に喫茶店が浸水しちまうレベルだ。


「……おい、こりゃやべーんじゃねーか」


「そうだな。

 このままでは二人とも、沈む」


「……バカが、沈んでたまるかってんだ」


 空間に目を凝らす。

……そういや、カーミラが『見えない相手には範囲攻撃』とか言ってたな。

なら。


「わりぃな、おっさん!

 後で弁償するからな!」


 テーブルをぶっ壊し、空中へ放り投げる。

槍を振り回し、テーブルを砕きながら、それを投げるように飛ばす。


 一瞬で大量の木片が、特定の範囲に向けて放たれる。

その中の1つが、何かにぶつかって地面に落ちた。


「ぬぅん!!」


 それを見たガルターは、剣を振り下ろす。

金属音が鳴り、ガルナが姿を現した。

両翼でガルターの剣をガードしている。


「正直、油断しましたね。

 ですが、ここからはそうもいきません」


 ガルナが姿を消す。

同時、左腕を何かが掠めた。

見ると、鋭い何かで切り裂かれたみてーな傷が腕に。


 ハッとした瞬間には、オレの身体は切り刻まれていた。

鎧があるとは言っても、ダメージは勿論ある。


「ぐっ……!

 クソが!」


 痛みをこらえ槍を振る。

しかし攻撃は全く当たらない。


「この世界は、王によって滅ぼされます。

 この雨はやがて世界を満たすでしょう」


「そりゃ……困ったな。

 あいにくオレは泳げねーんだ」


 どこかから聞こえるガルナの声に答える。

喫茶店は浸水し、かなり水位が上がっていた。

このままだと、地面に足をついて戦うのが困難になる。


 そもそも戦いが長引けば、水に足や身体をとられて動きにくくなる。

どうにか、さっさとケリをつけねーと。


 そう思った矢先、窓が割れて大量の水が流れ込んできた。

オレとガルターは水に飲み込まれ、流される。


 店が壊れ、屋内が屋外になった。

周りを見れば、浸水とかいうレベルじゃねーことがわかった。

家ごと流されてるとこもある。

なんとか足のつく場所までたどり着き、立ち上がった。


「どうすんだ……」


 そう言った瞬間、背後に気配を感じた。

同タイミングで、真上から攻撃される。

気配と、攻撃が分離してやがる。


 見えないところからの連撃にたまらず膝をつく。

向こうでガルターが吹き飛ばされたのが見えたと同時に、オレも気がつけば吹き飛ばされていた。


 思いっきり入水し、ぷかぷかと水に浮かぶ。

意識が吹き飛び、夢のようなモヤがかった景色が見えた。

クイーンと戦うねーちゃんたち、ルクスと対峙するノア。

そして、諦めが見えるカーミラ。


 ……そうじゃねーだろ。

何で、お前が諦めんだ。


「ま、ヴァンパイアの女王っつっても、まだガキだししゃーねーか」


 思わず口に出た。

すると、聞こえてたのかカーミラが反発する。


『な、なんじゃとこのネコ坊主!

 貴様に言われる筋合いはない!』

 

 叫んだ瞬間、魔法の威力が上がった。

やっぱそうじゃねーか。


 諦めたら終わりだ。

意志の強さ、感情の強さ。

それが魔法を強くする。


『こ、これは……』


「いいかげん気づきな。

 そんなんじゃダメなことくらいわかってんだろ、女王様。

 感情も力の一部だ。

 ノアが覚醒した時のことを思い出せ」


「ノア……が……」


 あん時のノアは、覚悟に満ちていた。

何者にも敗けない、強い心。

それが奴を強くした。


 自分を守ってばっかじゃ強くなれねー。

オレは親父にもそう言われたから身に染みる。


『……ネコ坊主にそれを教えられるとはのう。

 墓参りには、行ってやる……!』


「まだ死んでねーよ馬鹿野郎!」


 まだオレは死んでねぇ!

オレは……アイツを倒さなきゃなんねぇ……!


 ハッとすると、水の上に浮かんだままだった。

いつの間にか、少しは泳げるようになっていたらしい。

……にしても、走馬灯ってやつかもしれねーが、妙なものを見た。


 頭を振ると、隣にガルターが流されてきた。

鎧を脱いで、なんとか身体を軽くしている。

……そういや、ガルターは親父を倒したとかなんとか。


「なぁ騎士のおっさん……

 親父と戦った時って、どうだったんだ」


「……今と同じよう、全く歯が立たなかったな」


「でも勝ったんだろ。

 どうやったんだ」


「……地の利。

 自然を利用した。

 ギルガンナは大柄だったからジャングルにおびき寄せて、奇襲。

 正攻法ではないが、勝ちは勝ちだ」


「おっさんのこと、真面目でお硬いヤツだと思ってたぜ。

 でもちげーみてーだな」


 ずる賢い。

素直にそう思った。


「……自然、か」


 空から降り注ぐ雨粒を見る。

激しい雨がオレやガルターを叩きつけている。


「……ん?

 雨、だと?」


「どうした?」


「なんだ、簡単じゃねーかよ」


 オレはなんでこんな簡単なことに気が付かなかったんだ。

雨が降ってるなら、簡単にアイツが見えるじゃねーか。


 急ぎ泳いで、どこからか流れてきた屋根に乗る。

槍を構え、心を研ぎ澄ます。


「騎士のおっさん。

 アンタもそこらの屋根に乗っててくれ!」


「わかった……!」


 ガルターもどこからから流れてきた家の屋根に乗る。

そして剣を構えた。


「さて、どっからでも来やがれ」


 しばらくの沈黙。

雨の音が鼓膜を支配する。


 その時は、突然訪れた。

降りしきる雨。

その雨を弾きながら、何かが高速で接近してくる。


「見えたぜ、ハエ野郎!」


 槍を回転させ、斬るように振り回す。

攻撃は金属音を奏で、ガルナに当たったことを知らせた。

先程まで見えなかった敵が、そこに現れる。


「まだだ……!」


 直後、構えを変え、ガルナを絡め取る。

一瞬だけ相手を拘束し、ガルターの方に投げ飛ばした。


「おっさん!

 頼むぜ!」


「承知!」


 ガルターが剣を振り下ろすと、ガルターの胴体に剣が直撃。

身体もかてーのか、切り傷はつかず、剣での攻撃は打撃になった。


「う……っぐあぁっ!!」


 たまらずガルナは声を上げた。

ガルターは攻撃を休まず、連撃。

フィニッシュに相手を掴むと、こちらに投げ飛ばした。


「トドメを……!」


「あぁ!

 オレにやらせろ!」


 槍に紋章の力をありったけ流す。

オレの力、全て使ってでもお前を倒す。

そして、ルクスの野郎もぶっ倒す。


「こんな……こんなところでは終われません……!」


 ガルナは翼を槍のように変化させた。

吹き飛ばされた勢いをままに、オレを貫くつもりだろう。


「……終わりだ!」


 槍を放つ。

稲妻を纏った槍が一閃、ガルナを貫く。

同時、ガルナの攻撃がオレの左肩を貫通。


 痛みわけでは終わらない。

ガルナを突き刺した槍に、さらにエネルギーを流す。

そして、勢いよく引き抜いた。


「ぐああああぁあぁぁぁああああああアアアアアアアアアア!!!」


 ガルナが断末魔を上げると同時、空に浮かんでいた黒い太陽がぶっ壊れた。

どうやらガルナがあの太陽にバリアを張っていたらしい。

この感じだと蛇女もバリアに関与してそうだが、多分、倒せたんだろう。


 雨が止み、太陽が復活。

見たこともない暖かな光が差し込んでくる。


「ハッ……やったみてーじゃねーか、カーミラ」


 視界が揺れる。

しかし、ここで倒れたら意味がねー。


「……さ、て。

 ノアんところに行くか……」


 今にも倒れそうだが、止まれねぇ。

ルクスの城まで行かねーと。


「いま……いくぞ、の……あ……」


 意識がブラックアウトする寸前。

右手の紋章が優しい光を放ったように見えた。

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