04話 戦いの果てに ~違う、俺は敵じゃない! を添えて~
「なんだ、これ」
光が収束した時、ようやく自分の姿が確認できた。
竜を模した鎧……のようなものに全身が包まれている。
いや、というよりも一体化している。
「な、なんじゃこりゃ!?」
先程までの威勢は困惑の方へ流れた。
感じたこともない不思議な感覚に、脳が追いついていない。
「グガ……ギィガ!」
怪物が俺に向かって走ってくる。
鋭利な爪を出現させ大きく振りかぶると、凄まじいスピードで振り下ろす。
「あああ!
ちょっとタイム!」
咄嗟に両腕でそれをガード。
腕がチョンパでもされるかと思ったが、ヤツの爪は金属音とともに俺の腕に防がれた。
「ガギっ!?」
「あ、あれ。
なんか大丈夫だぞ」
不思議と痛くもない。
あの時感じた力は、確かに今も宿っているようだ。
「よ、よし!
これなら!」
怪物を見ると、まさか防がれるとは思ってなかったのか困惑しているようだった。
今ならいけるかもしれない。
「うおりゃあ!」
拳を固め、体重を乗せて殴る!
拳は怪物の顔面に直撃し、鈍い音をたてた。
「ギガァ!!」
怪物は回転しながら吹き飛び、地面を転がる。
多分まだ倒せてはいないが、パンチ一発でこの威力。
「マジか……ボウガンが効かなかった相手だぞ?」
怪物を見ると、ヨロヨロと立ち上がり、再び構えた。
諦めが悪いらしい。
「よっしゃ、こい!
この力でお前を倒してやる!」
敵を補足した時、視界の端に文字列が展開した。
どうやら敵を分析し、表示してくれるようだ。
内容はというと……
「えーと、マガツスパイダー?
こいつの名前か!」
糸による攻撃と、毒牙が武器らしい。
いくらこの状態でも、毒は受けたくない。
「毒に気をつければいいんだな!
いくぜ!」
俺はマガツスパイダーに向けて走り出す。
気づいたヤツも走ってくるが、こちらのほうが構えるのが早い。
一撃、二撃と拳を与え、敵の攻撃は的確に防ぐ。
隙が出来たら思いっきり蹴り飛ばす!
「ギャガァッ!」
マガツスパイダーは大げさに吹き飛んだ。
それでもなんとか立ち上がり、俺に糸攻撃を放ってくる。
「やべっ!」
避けるのが遅れ、腕に糸が巻き付いてしまった。
凄い力で相手は俺を投げ飛ばそうとしてくるが、そうはいかない。
「力比べなら、こっちが上だ!」
糸を利用し、相手を引っ張る。
そしてそのまま糸を持ち、腕を振り回し敵ごと投げ飛ばす。
「ガガガガッ!」
敵は空中で放物線を描いて俺の後方へ墜落。
糸は千切れ、最早相手は満身創痍である。
「トドメだ!」
俺は走り、勢いを利用してジャンプ!
2階建ての建物を有に超える跳躍力だ。
「落ちる力を利用して!」
マガツスパイダーが倒れている場所めがけてニーキック!
全体重を乗せて放ったニーキックは、マガツスパイダーに直撃。
その場から跳んで離脱すると、マガツスパイダーは断末魔とともに爆発大炎上した。
赤黒い炎がしばらく燃えていたが、すぐに消えた。
敵の痕跡は一つも残っていない。
「ば、爆発した……
な、なんで……?」
何故マガツスパイダーが爆発したのか考えていると、城の方からガチャガチャと音が聞こえてきた。
どうやら王立騎士団のご到着らしい。
でも、一足遅かったな。
騎士団は大人数を引き連れ俺の眼の前までやってきた。
感謝状でもくれるのだろうか。
やがてやたら装飾の入った鎧を着た、髭面で偉そうな騎士が前に出る。
「貴様か!
街で暴れまわっているという化物は!」
一瞬、固まってしまった。
えっと、この人は何を言っているんだ??
「えぇっ!
違うって! 俺じゃない!
俺は倒したんだよ、そいつを!」
「嘘をつけぇい!
その凶暴そうな見た目……どうみても怪物ではないか!」
「……えっ?」
俺は近くの広場の噴水まで行って、水面に映る自分の顔を見た。
そこには、凶悪な竜を模した兜……をかぶった俺がいる。
というか、全体的なデザインがトゲトゲしくて、凶暴で、パッと見マガツスパイダーよりも俺の方がヤバイヤツに見える。
竜を模した黒い鎧。禍々しい赤のライン。
あちこちから歪な形の爪? 牙? が生えている。
どう見ても敵です。本当にありがとうございました。
「えっと……これは、その……」
後ろを振り返ると、騎士団の全員が武器を構えて俺ににじり寄っていた。
「確保おおおおおおおおおおおおお!!」
「うおおおおおおお!!
待ってくれ! 誤解だあああああああ!!」
俺は街を破壊し人間を襲う敵を倒しただけなのに!
迫る王立騎士団から走って逃げる俺。
走力は強化されているはずなのに、なぜか騎士団の奴らは追いついてくる!
さすが騎士団! 皆のヒーロー!!
「違うんだあああ!!
俺は……俺は味方だあああああ!!」
突然、竜の戦士に変身できるようになった俺。
でも、その見た目から敵と勘違いされてしまった。
一体どうなるんだよ! これから!!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
これからも更新していきますのでよろしくお願いします。
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