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24話 英雄

 決着は一瞬で着いた。

全身全霊の一撃がザサンを貫き、ザサンはその場に倒れこんだ。


「勝った……のか」


 リースの言葉に、頷いて答える。

ザサンにはもう、戦う力は残されていない。


「い、生きてんのか……コイツ。

 とんでもねー生命力だ」


 ヴァイトが言う。

それもそのはず。

俺の放った一撃は、辺りの地形を変えるほどのパワーを持っていた。

普通の敵なら、まず塵すら残らず消滅するところだ。


「腐ってもマガツビト最強の戦士ということじゃな。

 しかし、今回の戦いは流石の妾でもくたびれたわい」


 元の姿に戻っていたカーミラは、地面に尻をついた。

夜は明け、朝日が大地を照らす。


「なぜ……

 なぜ、貴様ら劣等種如きに……!」


 ザサンが立ち上がる。

しかし、力が足りず、すぐ膝をついた。


「なんつーやつだ……」


「ザサン。

 君は強かった。

 俺一人では、勝てないほどに」


「フン……!

 謙遜などいらん。

 我の闇を貴様たちの光が凌駕した。

 ただそれだけの話だ」


 「だから敗けたのだ」とザサンは呟く。

この結末になることを、ザサンは知っていたのかもしれない。


「街に現れるマガツビト……

 あいつらを操ってるのも、テメーなのか?」


「あんな木偶の坊と一緒にするな。

 奴らは我らの模造品に過ぎん。

 そして、我らが操っているわけでもない」


「ということは……

 何かまだ、裏がありそうじゃな」


 カーミラが腕を組む。

街を襲っている奴と、ザサンは関係がない……?


「ザサン。

 君たちはマガツビトだよな?」


「そう名前をつけたのは、昔の人間どもだ。

 今、人間どもの街を襲っているのはもっと別の存在。

 我らを生み出した創造主が、新たに生み出した生命体だ」


「……どういうこと?」


「そこまでは知らん。

 我らも、創造主が何者であるか知らんからな。

 だが、気に食わないことは確かだ」


 ザサンは吠えるように喉を震わせた。

ザサンたちマガツビトと、今の怪物は別物。

となると、黒幕はザサンたちを生み出した創造主ということになる。


「マガツビトの戦士よ。

 なぜ、お主らは我らを襲ったのじゃ?」


「簡単な話だ。

 まぁ、少し長くなるがな」


 そう言ってザサンは語りだした。

遥か昔、創造主によってザサンたちは生み出された。


 創造主である天の声は言った。

ザサンらは、人間、ハイエルフ、セリアンスロープ、ヴァンパイア。

どの種族よりも強い力を持っていると。


 だからこそ、人間はその力を恐れた。 

人間たちはザサンらを『マガツビト』と名付け、迫害した。


 度重なる迫害に耐えかねたマガツビトたちは、反乱を起こす。

人間、ハイエルフ、セリアンスロープ、ヴァンパイア。

世界中を巻き込んだ、激しい戦いが起こった。


 反乱は、マガツビトらの勝利で終わろうとしていた。

しかし、突然、天から光が降り注いだ。

その光を浴びた者たちに、信じられないことが起こった。


 その力はマガツビトさえも凌駕する力。

伝説の戦士の力を手に入れただのだ。


 人々はそれを、奇跡と呼んだ。

伝説の戦士の力を手に入れた人間たちは、逆襲を開始。

ついにはマガツビトを封印するに至ったのだった。


「そして、この戦いを記したのが……」


「光竜伝説ってわけか」


 俺は光竜伝説を、正義の味方の物語としか見ていなかった。

だから、伝説の戦士の力は、正義の力だと信じていた。

マガツビトを迫害し、報いを受けた存在に宿った力だとは、思いもしない。


「我らは、強い憎しみにのみ支配されていた。

 創造主がそう創ったのだろう

 嬉しさやぬくもりよりも、我らは憎悪と冷たさをよく記憶する

 一度覚えたら、忘れないほどに、しっかりとな」


 ザサンはゆっくりと立ち上がった。

ボロボロになりながら、どこかへ向かおうとしている。


「……我らも、貴様らと同じ光を見たかった。

 それがたとえ、望まれぬ誕生だとしても。

 それだけなのだ」


「だったら……

 だったら、これから見ればいい。

 俺たちがしたことは、許されるものじゃないし、君たちがしたことも、きっとそうだ。

 でもやっぱり、俺たちが共存していく道も、あると思うんだ」


 ゆっくり、でもしっかりと言葉を紡いだ。

ギロリと、ザサンが俺を睨みつけた。

目線を逸らさず、しっかりとザサンを見る。


「共存か。

 我にはまだ、わからん道だ」


 そう言い残し、ザサンは去っていた。

朝日の向こう側へ。ゆっくりと。

俺たちは、それをただ見守ることしかできなかった。


「さて……と。

 何か辛気臭い雰囲気だが、帰ろうぜ、王都へ」


「じゃな。

 こんな状態では、まともに考え事などできん」


「館に戻って馬車を出そう。

 クロッカスの件は、私が報告しておく」


「大丈夫なのか? リース」


「あぁ。

 何かしら処分はあるだろうが、事件は一応解決したしな」


 リースの手には、ザサンから毟り取った体毛があった。

狼のものにしては大きすぎるそれは、オオカミ種のセリアンスロープの体毛よりも繊細だ。


「人狼伝説……か。

 そーいや、結局人狼伝説の正体ってなんだったんだ?」


「さぁのう。

 マガツビトのことやもしれんし、そうでないかもしれん。

 じゃが、我らの証言次第で、人狼伝説は息を吹き返すじゃろうな」


「信じるか信じないかは、オレたち次第ってことか」


 ヴァイトたちは、馬車がおいてあるエレナ卿の館へ歩き出した。

なんとなく、その後ろ姿を見ていると、ヴァイトが振り返った。


「帰ろーぜ、坊主」


 ヴァイトの声に合わせて、カーミラ、リースも振り返った。


「何をしておる、はようせい。

 帰ったら、妾専用のはにーらってを頼むぞ」


「さぁ、一緒に帰ろう。

 私の英雄ヒーロー


 俺はゆっくりと頷き、その場から駆け出した。

朝日を背にエレナ卿の館へ向かう。


 モヤモヤすることは、沢山ある。

でも、俺たちの使命が終わったわけじゃない。

まだまだ闇は襲いかかってくる。


 それでも、やらなければならない。

闇を払い、光を照らす。

俺たちは、伝説の戦士なのだから。

閲覧、ブックマーク、感想等ありがとうございます。


お陰様で大変励みになっており、執筆のモチベーションとなっております。


第三章はこれにて完結です。

第四章からは、今までの1日2話投稿ではなく、1日1話投稿に切り替えます。

毎日投稿をやめるわけではありません……!


これからもよろしくお願いします!

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