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16話 素直という心

 辺りは、すっかり暗くなっていた。

優しい月の光が、辺りを照らす。

俺とカーミラは魔法による遠距離攻撃と、剣による近接攻撃でマガツカメレオンを追い詰めていた。


「妾と戦ったことが、運の尽きじゃな」


 赤い魔法陣を展開し、魔法を放つカーミラ。

しかし、カメレオンは突然透明化し、姿を消した。

カーミラの魔法は何もいない空間に放たれる。


「くそっ!

 どこ行った!」


 辺りを見回すが、敵は見えない。

見えないことをいいことに、カメレオンは透明化したまま攻撃してきた。

一撃、二撃と俺とカーミラは攻撃を受けていく。

反撃しようにも、透明な相手をどうしたら!


「……っ!

 このまま攻撃を受け続けていたら、ちとヤバイのう……!」


 ガードを固める俺たち。

敵の攻撃は激しさを増す中、防戦一方だ。


「どうにか……透明化を解除できれば!」


 マガツカメレオンの猛攻に耐えかねた俺とカーミラは膝をつく。

すると、姿を現し近づいてくるカメレオン。

弱った獲物相手に透明化は必要ないってか……!


「このやろっ!」


 力を振り絞って剣を振るうが、カメレオンの舌に巻き取られ、持って行かれる。

黒竜剣を握ったマガツカメレオンは、自分には合わなかったのか、地面にそれを投げ捨てた。


「ギュルルルガガガ!」


「あぁっ!

 剣まで!」


 ゆっくりとカーミラに近づくカメレオン。

魔法攻撃が厄介だと判断し、先に潰すつもりなのだろう。

カーミラにトドメを刺そうとマガツカメレオンが腕を振り上げた時、どこからともなく飛んできた槍がカメレオンに直撃した。


「ギュルガッ!?」


 たまらず透明化するマガツカメレオン。

槍を投げたのは、ヴァイトだった。


「ヴァイト!」

「ネコ坊主!」


「危ないところだったな。

 チビガキ」


「ふっ……!。

 今回ばかりは、助けられたわい、ネコ坊主」


 体勢を整える俺たち。

透明化したマガツカメレオンは、今も俺たちを狙っている。


「おい坊主。

 何かいいアイディアはねーのか?」


「……昼間は気が付かなかったけど、1つだけわかったことがある。

 俺とヴァイトでチャンスを作るから、カーミラは全力の一撃を!」


「ふむ、いいじゃろう。

 ヴァンパイアの女王の力、見せてやろう」


 巨大な魔法陣を展開するカーミラ。

紋章の光と魔力が混ざり合い、空間を歪める。


「よし、ヴァイト。

 背中合わせになってくれ」


「こ、こうか?」


 ヴァイトと背中をぴったりくっつける。

できるだけ死角がないようにするためだ。


「で、どーすんだ?」


「影を見るんだ。

 透明化してても、影だけは消せないことに気づいたんだ。

 今は隠れてるけど、きっと隙を見てあいつは飛び出してくる」


「なるほどな。

 そこをとっ捕まえてやろうってか。

 いーじゃねか、腕がなる」


 沈黙。

穏やかな風が、草木を揺らす。

どれくらい経ったろうか、意識を集中させていた時、チャンスはやってきた。


「来たっ!」


 不自然に動く影。

こちらに向けて猛スピードで接近している。

俺とヴァイトは拡散し、構えた。


「おし、合図で飛び込むぞ」


「わかった!」


「3……2……1……!

 今だ!」


 2人で影めがけて思いっきり飛ぶ。

何かにぶつかり、俺とヴァイトは地面を転がった。

何もないはずの空間を、なぜか掴める。

俺とヴァイトはがっちりとそれを掴んで離さない。


「ギュルルガガガガアガガ!!!!」


 たまらず姿を現すマガツカメレオン。

俺とヴァイトが拘束しているので、動くことができない。


「カーミラ!」

「チビガキ!」


「わかっておる!!」


 カーミラのほうを見ると、凄まじい大きさの魔法陣が展開していた。

そして、魔法陣が光ると同時、カーミラの姿が変化する。

今までのちっこいヴァンパイアの姿ではなく、大人の、成熟したヴァンパイアの姿だ。


「えっ!?」


「やるじゃねーか、吸血鬼の女王さん!」


 膨大な魔力に地面が揺れ、解き放たれるのを今か今かと待ちわびている。

まさに、必殺魔法。


「さぁ讃えるがよい!

 我こそ、ヴァンパイアを統べる女王!

 カーミラ=ヒュッケンベルグ=ブラッドじゃ!」


 魔法が解き放たれる。

恐ろしく巨大なクリスタルの槍が、マガツカメレオン……、もとい、俺たちへと飛んでくる。


「坊主! 絶対避けろよ!」


「わかってるよ!」


 魔法が直撃する寸前、俺とヴァイトは全力でその場からジャンプする。

ギリギリまで押さえつけていたマガツカメレオンは、カーミラの魔法を避けきれずに直撃。

一瞬で大爆発し、炎上した。


「あー、危ねーとこだった」


「し、死ぬかと思った」


 地面に倒れ込んでいると、大人のカーミラが近づいてきた。

黙って手を差し出すカーミラ。

俺とヴァイトは顔を合わせ、笑う。


「へっ!

 素直じゃねーな!」


 カーミラの手を借りてヴァイトは立ち上がる。

俺も手を借りて立ち上がると、大人になったカーミラが照れくさそうにしていた。


「ま、まぁ。

 今回の活躍は、なかなかのものだったぞ、ネコ坊主。

 この活躍に免じて、妾への侮辱を許してやろう!」


 顔を真っ赤にさせて言うカーミラ。

なんだかそれが可笑しくて、俺とヴァイトは腹をかかえて笑った。

要するに、「今回は助かりました、ありがとうございます。そして、この前はごめんなさい」。

そういうことだ。


「な、なんじゃ!

 何がおかしいんじゃ!」


「いや、なんでもないよカーミラ」


「はっはっは!

 本当、素直じゃねーな! ヴァンパイアってのは!」


「なんじゃと~!?

 そっちのほうが素直じゃなかろうに!

 生意気なネコ坊主が!」


 ヴァイトに飛びつくカーミラ。

走って逃げるヴァイトと、追いかける俺たち。


「はーはっはっは!

 このオレに追いつけるかぁ!?」


「何を!

 今の妾なら瞬じゃぞ、瞬!」


 気づけば、全員が笑っていた。

俺たちの戦士としての絆が……いや、俺たちの絆が。

ようやく、1つになろうとしていた。

閲覧、ブックマークありがとうございます。

お陰様で大変励みになっており、執筆のモチベーションとなっております。

これからもよろしくお願いします!

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