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15話 本音という素肌

「ノア……

 ヴァイト殿とカーミラ殿に、一体何があったのだ?」


 喫茶店に戻ってきた俺たちは、再びプチ円卓会議を開いていた。

現場を見ていなかったリースは、状況を把握していないため困惑している、


「仕方ねぇだろ! だってこいつが!」

「仕方ないじゃろ! だってこやつが!」


 ヴァイトとカーミラがお互いを指差す。

そして睨みあう。

火花でも散っていそうな感じだ。


「落ち着くのだ、2人とも。

 何があったか知らないが、喧嘩はよくない」


「そうそう。

 ここはパッと仲直りして、マガツビトのことを考えようぜ

 あの透明野郎……次会ったらただじゃおかないぞ」


 リースと2人でなだめると、ヴァイトとカーミラはため息をついた。

ため息のタイミングがぴったりだ。

実はこの2人、仲がいいのでは?


「まぁ、チビガキがどうしてもって言うなら、考えてもいいぜ」

「まぁ、ネコ坊主がどうしてもというなら、考えてもいいじゃろう」


 言うと同時、再び睨み合う2人。

一触即発とはこのことを言うのだろうか……


「もうよい!

 あの敵は妾1人で倒す。

 お主らの力など借りぬわ!」


 カーミラは立ち上がり、ドアを勢いよく閉めて、どこかへ行ってしまった。

誰も追いかけることができず、部屋に沈黙が流れる。


「ヴァイト……

 ちょっといい過ぎなんじゃ?」


「馬鹿、坊主は甘すぎるんだよ。

 この先ずっと、仲間の誤射で戦況が不利になるなんざ、オレはごめんだ」


 ふん! と鼻を鳴らして後ろを向くヴァイト。

尻尾を見ると、少し元気がないように見える。

もしかしたらこれでも、内心言い過ぎたと思っているのかもしれない。


「ノア、話し中すまない

 あの日傘はもしかすると、彼女のではないのか?」


 リースが指差す方を見ると、たたまれた日傘が立てかけてあった。

あれはカーミラが使っていた物で間違いない。


「カーミラ……まさか日傘なしで外に?」


「ヴァンパイアは日光を弱点とする。

 人工太陽とはいえ、長い間浴びると灰になって死んでしまうぞ!」


「マジかよ!

 あの女王様ったら……!」


 俺は日傘を持って、勢いよく部屋を飛び出した。

喫茶店を出て、大通りへ向かう。

カーミラは小さいので、そんなに遠くへはいけないはず。


 走り回っていると、少し離れた道端に、倒れているカーミラを発見した。

人が倒れているのに周りの人は何もしない。


「おい! カーミラ!

 大丈夫か!」


 駆け寄り、日傘をさす。

 日光が日傘でガードされると、カーミラは弱々しく顔を上げた。


「志半ばで倒れるかと思ったが……

 まさかお主に助けられるとは」


「勢いで出ていくからだよ!

 ほら、日陰で休もう」


 カーミラを抱き上げ、日陰へ行く。

しばらく休んでいると、具合が良くなったのか、カーミラが立ち上がった。


「助かった。

 お主がいなければ、妾がここで灰になっていたかもしれぬ」


「別に、全然。

 それより、さっきのことだけど」


「まぁ、妾も言い過ぎたと思っておる。

 長い間、ヴァンパイア以外の種族と接してこなかったからの。

 距離感……というものが、わからなくなってしまったようじゃ

 妾がもう少し、大きければ違ったかもしれんがの」


 ため息をつくカーミラ。

愛しそうに空を見上げると、ゆっくり口を開いた。


「ヴァンパイアの女王は、ある程度成長した後、後継の儀式まで眠りにつく。

 1000年くらい眠り、力を蓄える。

 前女王が力尽きた時、新たな女王として目覚めるのが、ヴァンパイアの掟」


「でも、カーミラは200歳って……」


「そうじゃ。

 目覚めるのがちと早すぎた。

 史上最年少の女王というわけじゃ」


 ヴァンパイアは、多種族とあまり関わらない。

どこかにヴァンパイアの国があり、闇と共に暮らしていることくらいしか俺たちは知らない。

学校でも、詳しくは教えてくれない。

俺たちは、ヴァンパイアについて知らなすぎる。


「ヴァンパイアは多種族とあまり関わらん。

 それゆえ、仲間内でしかコミュニケーションをとらぬ。

 ヴァンパイアは言葉だけではなく、テレパシーでお互いの意志を共有できるからの」


「だから、ヴァイトと喧嘩ばかり?」


「じゃな。

 本音が伝わることに慣れ、甘えすぎた。

 言葉にしなければ、伝わらないこともあるということじゃな」


「カーミラ……」


「他者の血を吸えば、もっとわかるのじゃがなぁ」


 からかうように、誘うように笑うカーミラ。

しかし、すぐにその笑みは消えた。


「人間、セリアンスロープ、ハイエルフ。

 異なるコミュニケーションを持つ種族の中で、ヴァンパイアは特に異質。

 故に孤高の種族などと言われてきたが、臆病者の集まりみたいなものじゃ」


ゆっくりと太陽が沈み始めた。

辺りは夕暮れに染まり、茜色の空が美しい。


「次会った時は、あのネコ坊主にちゃんと謝罪しよう。

 妾はヴァンパイアの女王。

 それくらい出来ねばいかんじゃろうに」


「……だな」


 思わず笑みがこぼれた。

なんだかんだ、ヴァイトとカーミラはうまくやれそうである。

そう思った瞬間、紋章が光った。

ゆっくりと脈打ち、マガツビトが現れたことを知らせる。


「カーミラ……!」


「あぁ、出おったな。

 今度こそ仕留めてやろうぞ」


 街を駆ける。

人々が城に向かって避難を始めていることを見ると、リースが動いてくれたようだ。

ヴァイトもきっと、マガツビトの出現に気がついているはず。


「見つけた!

 あそこだ!」


 街の中心近く。

木々が多くあるこの広場は、森林広場と言われており、子供がよく遊んでいる。

相変わらず、ヤツは木に掴まっていた。


「ギュルルル……!」


「見つけたぞ、目玉の。

 先の戦いの続きをしようではないか!


「「変身!!」」


 声を合わせて変身する。

辺りには、夜の帳が降りようとしていた。

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