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89.回想~情報~

八重樫の回想回の続きです。長くなる予感

 「どういう事だ…?」


 明らかに致死量の血溜まり。しかも乾いた様子も無い事からつい先ほど流れ出した物である


 「…さっきの青年」


 そこで八重樫は頭の中で引っ掛かっていた物の正体に気付く。先程現れた高校生くらいの青年と、車内から聞こえてきた声が同じ物だったのだ


 つまりあの青年の身に何か起きていた事になる。しかし、路地裏から現れた青年に怪しい様子はなかった。それが引っ掛かる


 「兄貴…」

 「あぁ、遅かった様だな」


 険しい顔つきで血溜まりを見る二人は悔し気に声を漏らす。冬治が腹いせに路地裏の壁を殴る


 「クソッ!」

 「落ち着け、八重樫さん戻りましょう。これ以上この場所に居ても意味はなさそうだ」

 「分かった」


 八重樫の言葉で四人は停めている車へと引き返す。ふと【美奈子】を見ると内心が読み取れない何かを隠した様な無表情を浮かべて血溜まりを見ていた


 それから暫くして八重樫の拠点の一つのビルへと到着した。少しばかり年代を感じさせる古びた灰色のコンクリート地の建物の横にある住民用の駐車場に車を停め、二階にある玄関から数メートル先にあるリビングに真っ直ぐ向かうと、左側の壁に設置した大型テレビと向かい合う様に置かれた黒い革張りのソファーに倒れ込んだ


 「はぁ、今日一日で酷く疲れた」

 「そんな状態で申し訳ないが俺達はどうすれば良いんだ?」

 「あぁ、そうだね。右側の部屋二つが客室になっているよ。申し訳ないけど兄弟二人で同じ部屋で構わないかい?」

 「こちらは部屋を借りている立場だから構わない」

 「そうか。仕事道具や資料があるから余り他の部屋に入らないでくれ」

 「分かった」

 「僕は自分の部屋に戻る。暫く一人にさせてもらえるかい?」

 「分かった。何かあれば部屋の前で呼ぶことにする」

 「頼むよ」


 八重樫は心底疲れた様な表情で物憂げにソファーから立ち上がると、右手で少し俯いた頭を髪を掻く様に押さえるとヨロヨロと覚束ない足取りで客室と反対にあるリビングから見て左側に並ぶ扉の一つを開けて中に消えた


 室内に入った八重樫は扉を閉め、鍵をかけると先程までの疲れ切った様子を一瞬で霧散させ、スマホを取り出して迷い無くとある人物に電話を掛けた


 『何の用だ。八重樫』

 「本職の依頼だよ」

 『詐欺のターゲット探しか?』

 「冗談を言い合う程時間はない。手短に聞く。【飯島敦夫】、【片山美奈子】、【血溜まり事件】。この三つに関する情報を調べて貰いたい。特に最初の二つを重視してくれ」

 『分かったよ。ちょっと待ってろ……出たぞ。【飯島敦夫】と【片山美奈子】は交際関係があった様だな。しかし一年くらい前に交通事故で【片山美奈子】は死亡している。即死だったそうだな

 その後、葬式を行ったが、どうも火葬の直前で死体を回収したらしい。その頃から近所付き合いがかなり減って、同時期から中国系人間売買店(ヒューマンショップ)で女を買っている様だ。但し、現在は取引が停止している様だな』

 「交通事故…、【片山美奈子】の死…、人間売買店…」


 八重樫の脳裏に今日、あの曲線の部屋で【飯島敦夫】から聞いた言葉が浮かび上がる


 『あぁ、そうだ。人間は脆い。だから簡単に死ぬ。例えばそう、車で轢かれた程度でも簡単に死んでしまうんだ』

 『だから俺は【死】を超越する方法を探した』

 『そう、【数】がいるんだ』


 それぞれの言葉が一つに繋がっていく。そして最悪な予想が的中した事が分かった


 「【飯島敦夫】を探し出してくれ。令状等は既に出ている情報で十分だろう」

 『色々聞きたいがまぁ良い。準備しよう。人間売買店の位置と番号を送る』


 その言葉と同時にスマホに人間売買店の情報が送られる


 『それから【血溜まり事件】に関しては監視カメラの死角になっている場合が多いが完全に映っている物を見つけた。対象は人間に擬態する能力を持つ粘性生物。ショゴス・ロードやその亜種、遺伝子情報関連の場合【イドラ】関係かもな。後は【ウボ=サスラ】、【アブホース】辺りか?』

 「分かった。助かった」

 『百は貰うぞ』

 「終わったら振り込む」


 そう言って通話を切ると部屋を出る。リビングに出ると【美奈子】が一人先程まで八重樫が倒れ込んでいたソファーに座っていた


 「君一人か」

 「うん、二人は近くのコンビニだって」

 「そうか。戻ってきたら直ぐに移動だ」

 「分かった」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「それで何か分かったのか?」


 那智兄弟が戻った後、車で近くの暗くなって人が疎らになったファミレスに移動して、開口一番に大也が八重樫に尋ねる。対する八重樫は氷が浮かぶ水の入ったグラスを傾けて口を潤すと声を潜めて口を開いた


 「【飯島敦夫】は人間売買店を利用していた。まぁ既に取引は行われていない様だが」

 「人間売買店だと?犯罪じゃないか」

 「あぁ、理由は分かるが…」


 そこで【片山美奈子】に視線をやる。那智兄弟も【片山美奈子】を見るとそれに関係した事だと理解したのか追及をする事は無かった


 「って事は目的地はその人間売買店か」

 「そうだ。最近まで取引があった以上、何か情報が掴めるかもしれない。行く価値はあるだろう。序に警察にでも突き出せばいい」

 「それで作戦は?」

 「正面からの強襲だが?」

 「は?」


 八重樫の言葉に大也は思わず呆けた表情を浮かべる。八重樫はそれに構わず言葉を続ける


 「潜り込むには偽装やらの準備が必要だがこちらには時間が無い。よって速攻で制圧に掛かる」

 「そんな無茶な…」

 「君達銃は?」

 「一応あるが」

 「では問題ない。食事が終わり次第行くぞ」


 そう言って八重樫は運ばれてきたピザを切ると食べ始める。その様子にこれ以上の問答はしない事を理解すると大也達も食事を始めた


 夕日すら沈み闇が辺りを包む中、八重樫達は人気のない路肩に車を停めると素早く目的地の近くまで移動した。目の前には少し古びた二階建ての建物がある


 「此処だな。行くぞ」


 スマホで間違いないかを確認した八重樫はそういうと素早く移動する


 「鍵開け出来るか?」

 「一応な」


 八重樫の問いに大也が答えるとキーピックを取り出して鍵穴に突っ込む。ガチャガチャと音を鳴らして暫くするとガチャリと音が鳴って開錠された


 「開いたぞ」


 大也が扉の前から退いたと同時に一気に開け放ち建物に侵入する


 「何だお前、グッ!?」

 「止ま、グエッ!?」


 見張りらしき屈強な男達を武道を伴った一撃で瞬く間に無力化し、最奥の部屋に足を踏み入れる


 「おやおや、これはこれは。礼儀正しさしか取柄のない日本人(リーペェンレェン)ではないか。随分と手荒な訪問だが何の用だ?」

 「【飯島敦夫】という男の居場所を聞きに来た」


 アサルトライフルを構えるスーツ姿の屈強な男達に囲まれるように、一人用の小さい革張りの椅子に三十代後半のアジア系の一段階上質なスーツを着た女が足を組んで座っていた。女の皮肉交じりの軽蔑する言葉に八重樫は顔色一つ変えずに【飯島敦夫】の居場所を尋ねる


 「【飯島敦夫】?…あぁ、あの男か。あいつがどうかしたのか?」

 「捜索依頼を受けていてな。居場所を教えてもらおうか」

 「生憎と奴との取引は終了していてな。あんたの力になる事は出来なさそうだ。尤も、知っていても只で教える気なんざ更々ねぇがな」

 「そうか」


 八重樫はそれだけ返すと何かをボソボソと呟き始めた。女達がそれを訝しむと程無く急速に体中に圧迫感と脱力感を覚える。男の手から銃が落ち、膝をつく。女も座った椅子の上で丸まりながら気力を振り絞って顔を上げると、八重樫を睨み付けて言葉を絞り出した


 「テメェ…、何しやがった…!?」

 「さぁな、あんたが知る必要はないよ」


 顔を歪ませてそう問い掛ける女に八重樫は飄々とした態度でそれを流して魔術を強める。歯を食い縛って抵抗しようとしたが、程無くして意識を失い床に倒れた

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