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7.対、キメラ

戦闘回ですよ

 風を切って飛ぶ【爆隼ばくじゅん】と【戦烏せんう】は進路先で旋回する白い影を視認する


 『上空に障害となりそうな存在は無し。警戒を厳とし援護に回る』

 『了解。上昇を開始。【偵鳥】、目標への誘導を頼む』

 『了解。残り150mを突破。残り予測時間20秒』


 式神間の思念伝達で必要な情報を集め纏める。通常の紙を用いた式神にはこうした自我の様な物は存在しないが、アルベルト程の使い手になると簡易な魂位なら創造出来る。その為、アルベルトが使う式神は術者が操作する必要がなく、更に使えば使う程成長する


 それは死線を潜り抜けた式神が力を得る事で格が上がる事を意味し、その式神が新たな術者として式神を扱う事で軍団すら作れる事を意味していた。何より術者が攻撃を受けて操作出来ない時、式神が背後から敵を奇襲して隙を作る事も出来るという中々優秀な物だった


 高度に飛び上がった【爆隼ばくじゅん】と【戦烏せんう】が木々の合間からキメラを確認する。鷲の頭、鰐の背に馬の胴体、蜥蜴の太い尾を持つ体長6m程のそれは強靭な四肢で木々を薙ぎ倒して真っ直ぐ突き進んでいく


 『目標確認。これより爆撃体勢に入る!我に続け!』

 『『『了解!!』』』

 『『了解』』


 キメラとの横の距離が残り10m程になった所で【爆隼ばくじゅん】は翼の角度を変えて反転し、頭を真下に向けて急降下する。吹き付ける風で体が細かく震える。しかし鋭い白き双眸は決してぶれず、急速に大きさを増す標的を捉えていた


 残り20mの所でキメラが【爆隼ばくじゅん】の群れに気付き、顔を上げるがもう遅い


 『投下開始。爆炎に巻き込まれるな!』


 そう仲間に思念を飛ばす先頭の【爆隼ばくじゅん】が頭を持ち上げ、脚から黒い結晶体を投下する。結晶体はキメラに当たると同時に炸裂し、爆炎と爆音を響かせる。続く9羽もキメラに向かって結晶体を投下すると空を滑る様に体を持ち上げ上昇した


 「ギオアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 『爆撃成功!これより帰投する。尚、敵は未だ進行中。再度の攻撃を要す』

 『了解。引き続き護衛する』

 『了解。引き続き哨戒を継続する』


 【爆隼ばくじゅん】と【戦烏せんう】は思念での連絡を終えると真っ直ぐアルベルトに向かって飛ぶ。後方からは怒りに満ちた咆哮が轟いていた

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 【偵鳥】の報告があった方向から爆炎が見え、爆音と苦痛による咆哮が聞こえてくる。如何やら攻撃は成功したようだ


 「何だ今のは!?」

 「僕の式神の攻撃ですよ。攻撃は成功、されど再度の攻撃を要す、か。第二次攻撃隊を出すには距離が近いな」


 俺は戻ってきた【爆隼ばくじゅん】と【戦烏せんう】を上空に確認するとてのひらを上に向けて掲げると途中で紙に戻った【爆隼ばくじゅん】と【戦烏せんう】が宙を滑る様に順に掌に乗る。俺はそれぞれ紐で縛るとポーチに仕舞った


 「そろそろ来ますよ」


 俺は上空を旋回する【偵鳥】と木々が力任せに押し倒される音が近付くにつれ、アルグスら騎士団の表情がどんどん険しく引き締まっていく中、俺は逆にこれから起こる戦闘を思い浮かべてナイフを両手で抜きながら思わず笑みを浮かべる


 どんな攻撃をするのだろうか?どれ程強いのだろうか?楽しみでしょうがない!能力を使う等、無粋な真似はせずに己の技能で存分に相手しよう。だから早く俺の下に来い!


 「グオガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 これからの戦闘を思い浮かべて狂笑と言うべき笑みを浮かべる俺の目の前の木々が薙ぎ倒され、今か今かと待ちわびたキメラが咆哮と共に遂に姿を現す。現れたキメラは所々焦げて血を流しており、背部の鱗が幾らか吹き飛んで肉が見えている。熱か破片が眼に入ったのか右眼が閉じられており、ダメージが大きかったのか体がふら付いていた


 開かれた鳶色の隻眼に垣間見える赫怒と殺意の炎が見ていて心地良い。向けられる圧力を感じさせる殺気と敵意が懐かしく、気分が高揚する


 これだ!これだ!これだ!この感覚なのだ!久し振りの感覚に気が高ぶり、血が騒ぐ。完全に戦闘モードに入った俺は瞳孔が開き、頬を上気させ、口の端が深く鋭く裂けた笑みを浮かべながら気配が希薄になっていく


 《練気隠密術》【気薄影身】


 これは纏い循環する魔力と外界の魔力を同調させ、自身の臭い、姿、音、気配等に対する認識を薄くさせる技で、簡単に言うと影を薄くするものだ。例えば普段、道を歩いている時に道端にあった石ころや花を詳細に覚えているだろうか?それと同じである


 他に強い気配が近くにあれば目の前に居ても確実に認識から外れるし、この技を使ってから目の前に出てもそのまま無視される。勿論、接触すれば認識されるが、気配に紛れれば直ぐに外れるので暗殺者にとってかなり重要な技能である


 熟練のアルベルトの場合、本気で使えば例外を除き大抵の存在に認識されず、多少接触しても認識される事は決して無い。しかし、それでは面白くないので半分以下の力で発動していた


 この世界の住民が知る訳がないが、嘗て転生前の世界では眼に入った敵対した組織の人間や神話生物を決して逃がさず、何処までも追い掛け確実に殲滅する事から幾つかの異名で呼ばれていた


 【狂犬の弟子】、【餓狼】、【副王の猟犬】、【死神】と

解説

《練気術》

体内魔力を操作して身体能力の強化や、外界からの認識や気配を変化をする技能


魔力を循環させる事で活性化し、代謝が上がる事で解毒なども早くなる


《練気隠密術》は其の中で、周囲との気配の同調や遮断、足音や布擦れ音、呼吸音や鼓動音等を極限まで抑える事で対象から認識をされなくなる


 『其れは世界のシステムである造られた現象(魔法)でも、人為らざる者共の深淵の叡智(魔術)でも無い


 未だ人類(科学)の理解が及ぼずとも、其れは確かに太古より人類が生み出し、研鑽と継承を以て研ぎ澄まされた人類が生き抜く為の技術(武器)である』

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