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76.断罪と処刑

孝義の戦闘回です

流血表現、不快な表現があります。ご注意ください

 パンツ一丁のムキムキの白人系の巨漢が現れた。ニヤついた顔は力なく壁に背を預ける男に向けられ、周りの状況に気付いた様子が無い


 【血金】による攻撃を捌きながら、先程飛んできた男と現れた巨漢を眼で交互に観察していた孝義は、スーツ姿の男性の血の付いた、左胸にあるポケットに付いた物に気付いた。それは大小の花弁が交互になった花の様な―旭日章に中央に左を向いた羽ばたく鷲と右に掲げられた銃剣が交差する様に刻印された記章であった


 孝義はその記章に見覚えがあった。【公安0課】そこに所属する者に与えられる記章だった。そしてそれはあの男が敵であると判断するには十分な要素だった


 「ん?おぉ、爺さんじゃないか。お楽しみ(・・・・)は終わったのか?」

 「フォッフォッフォ、お主のお陰での。済まんがこの小僧を頼めるかの?儂はそこの女子おなごを頂くからの」

 「お楽しみ?…テメェまさか!」

 「フォッフォッフォ」


 権蔵は嗤いながら【血金】を操って先程までいた路地に伸ばす。そして引き戻された【血金】の触手の先に、細い首に巻き付けられた十歳位の全裸の少女がぶら下げられて晒されていた


 手足に軽度の火傷と重なる様に縛られた事で出来る痛々しい圧迫痕が浮かび、涙の跡が残る半開きの眼は既に死んでしまっているのか虚ろで光が灯っていない。半開きの口からは力無く舌が僅かに零れ、全身が汗と手足の裂傷から流れた血、そして生臭い白濁の粘液で汚されていた


 孝義は直ぐにその哀れな少女に襲い掛かった理不尽を理解した。そして眼の前の外道な老害は大切な仲間であり、家族である―戸籍上カナリアと鏡華は孝義と姉妹になっている―二人を事もあろうに孝義の眼の前で凌辱しようと言ったのだ


 孝義の中で何かが切れた。顔からあらゆる感情が抜け落ちると共に全身に力が湧き上がり、少し前まで考えていた力の温存をする事を止めた


 孝義は【異形化】すると【鬼斬】を納刀し、全身に魔力を纏わせて腰を落とし前傾姿勢になる


 纏う雰囲気の変化を察知してか、孝義に向き直った権蔵から伸びる【血金】で作られた無数の鋭利な触手が先程までの牽制から明らかな攻撃の意思を持って孝義に向かって先程まで比べ物にならない程の数と速度で襲い掛かってきた


 次の瞬間、キンッという澄んだ音が鳴ると同時に、幾条もの銀閃が宙を縦横に走り【血金】が切り刻まれて飛び散った。驚愕の表情を浮かべる権蔵の目の前に、何時の間にか左目に燃ゆる黄金の焔の一筋の軌跡と共に、一瞬で肉薄した孝義は下に傾けた柄に手を掛けている【鬼斬】を鞘走る様に素早く抜き放って擦れ違いざまに権蔵の脇腹を深く切り裂き、返す刀で左腕を根本から斬り飛ばした


 「ギ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」


 権蔵は鮮血が噴き出す斬り飛ばされた左腕があった肩の傷口を押さえ、体を折り曲げて蹲り、激痛に醜いしゃがれた悲鳴を上げる。その横に斬り飛ばされて宙を舞った左腕が重力に引かれてグシャリと水っぽい音を立てて地面に落ちた


 孝義は【鬼斬】を納刀すると、制御を失って融ける様に崩れた【血金】から落下した犠牲者の少女を柔らかに両手で受け止めて、ビルの近くに下す。そして振り返ると抜いた【鬼斬】の切っ先を権蔵に向けて冷たい声で話し掛ける


 「終わりだ、権蔵。再び牢獄暮らしだな。今頃【東京第一特殊刑務所】での調査も終わっている頃だ。今度は逃げられねぇぞ」

 「グゥウウ…!オノレ!よくもこの儂の腕を!許さん!許さんぞ小僧!」


 憎悪と憤怒に満ちた血走った眼を孝義に向けると、肩の傷口から手を離すとヨロヨロと立ち上がる。何時の間にか脇腹と左肩から流れ出す【血金】を操作して傷口を塞ぎ、更に左肩の傷から急速に噴き出す様に溢れた【血金】が海外映画のターミ〇ーターの様に変化し、赤熱する銀の形の崩れた左腕を形作った


 「醜い執念だ。もうお前を生きて捕える気も起こらない。せめてもの慈悲で一撃で頸を刎ねてやる。閻魔に宜しく言うんだな」


 孝義は嫌悪に顔を歪めてそう吐き捨てると、【鬼斬】を構えて首を斬る為に攻撃体勢を取る。だがその前に横合いから水晶で出来たかの様な先端にトランプのスートの一つであるダイヤの様なひし形の八面体の錘が付いた透明な鎖が権蔵の手足や首に巻き付き、宙に持ち上げられてダヴィンチのウィトルウィウス的人体図の様に大の字に手足を広げられて固定された


 「グッ!?何…が…?」


 首を絞められて声を途切れさせながら鎖が伸びる方向を見ると、そこには獲物として見ていた高校生くらいの少女が爛漫な笑みを浮かべ、その後ろに立つ白杖を持つ女性が薄い笑みを浮かべて、前に突き出す右腕から五本の鎖が伸びていた


 「捕らえました」

 「うん。じゃあ、始めようか。断罪の時だよ」


 孝義は二人の言葉を聞くと途端に権蔵への興味を無くし、今まで動かず、特に構える事無く悠然と立つボディービルダーの様な巨漢に向き直り、立ち塞がる様に【鬼斬】を構える。権蔵は手足、そして【血金】で造られた左腕を動かそうとするが、自由に変形できる筈の左腕すら動かず拘束から抜ける事が出来ない


 「精々苦しんで死んでね?」


 爛漫とした笑みを浮かべるカナリアは手を複雑に、しかし何処か規則的に動かしながら何かを小さく口ずさみ始めた


 「《破壊》」

 「グ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?顔が!?痛い!痛い!」


 カナリアが印の構築と呪文の詠唱を終え、魔術名を口ずさむと権蔵の顔ブツブツとできものみたいな物が現れ、次の瞬間、それが破れて血が混じった膿混じりの体液がそこから溢れ出した。権蔵は苦悶の叫びを上げ、無様に暴れ回る。しかし四肢と首に絡み付く鎖はそこから抜け出す事を許しはしなかった


 「まだまだあるから楽しんでね?」


 カナリアはそう言って嗤う。少女の薄く開かれた眼の奥に妖しく輝く狂気を湛え、権蔵にはそれが死神の笑みにしか見えなかった

次回、鏡華の能力が公開されます

マッチョの出番は···まぁ、直ぐあるでしょ?多分

···思い付きを直ぐに実行した結果です。はい


 因みに、

 【神怪課】:殆どが【魔人】や【特異体質者】

 【公安0課】:基本的に能力の無い通常の人間だが、【魔人】や【特異体質者】もそれなりにいる

 【怪異対策班】:殆どが通常の人間です


 但し、魔術を扱える人間は【怪異対策班】にもそれなりにいる


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