75.【血金】の権蔵
孝義達新キャラ三人組の戦闘回です
後、二、三人の戦闘回の後にアルベルトに戻る予定です
孝義はアルベルトを降ろした後、車を走らせ担当区域の住宅街に辿り着いた。辺りは相変わらずの惨状で、暴徒化した【特異体質者】が暴れている
「よし、民間人は無力化。【東京特殊刑務所】の脱獄者は生死問わずらしいから手加減するなよ」
「分かった」
「分かりました」
「じゃあ、出るぞ。【鬼斬】取ってくれ」
「はい」
孝義は後部座席にいるカナリアから【鬼斬】と呼んだ漆塗りの美しい鞘に納められた日本刀を受け取ると運転席から出る
「ウガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
車から降りて直ぐに大声を上げて襲い掛かってきた、両腕に長さや太さ、並びが不規則な骨の刃が生えた小太りの中年の男の首を流れる様な動きで納刀されたままの【鬼斬】で打ち、その意識を一瞬で刈り取る。その隙にカナリアと鏡華も車から降りた
襲い掛かる【特異体質者】達を無力化して進んでいると、二十代位のスーツを着た男性が立っていた
「おい!直ぐに避難所へ行け!」
「俺達は【神怪課】の者だ」
「お前らが?…そうか。何かあれば直ぐに避難しろよ。命あっての物種だからな」
「あぁ、分かった」
男性と別れて荒廃した街を走っていると、細い路地から突然赤熱する先端が尖った何かが先頭を走る孝義の首に向かって伸びた
「うおっ!?」
寸前で停止し、体を反らして躱した孝義は伸びてきた細い路地に眼を向ける
周囲に建つ高いビルに光が遮られた事で日中にも関わらず薄暗い細い路地に赤熱する何かは巻き戻るかの様に消えていき、逆に足音が近づいて来る。足音の主の草臥れたスニーカーと裾が解れた薄水色のズボンが路地の入口から差し込む光に照らされ、直ぐにその全体が明らかになった
それは一言でいうなら老人だった。僅かな白髪に覆われた頭皮に皺だらけの薄く眼を開けた顔、薄緑色の長袖シャツから伸びる手は枯れ枝の様だ。しかし、背は若干丸まっているものの杖等は突いておらず、足取りもしっかりしており、何より纏う雰囲気は一般人のそれでは無かった
廃退的な気配を纏い、路地から出る。そして首を巡らせて孝義の後に続くカナリアと鏡華を見ると、細められた双眸に醜悪な欲情を湛え、不気味な笑みを浮かべて舌なめずりをした
カナリアと鏡華はそれに言い知れぬ不快感を感じて、嫌悪感に顔を顰めて思わず背筋を震わせて一歩後退る。孝義はそれを横目に眼の前の老人に問うた
「【血金】の権蔵だな?」
「フォッフォッフォ、如何にも儂はかつて【血金】と呼ばれた者じゃ。して何か用か?」
「あんたを刑務所か地獄に送りにきた。おとなしく捕まるなら手荒な真似はしないぞ」
「フッフッフ…」
権蔵が無造作に右手を上げて掌を上に向ける。良く見ると掌の中央に小さな切り傷があるのが見えた
「余り儂を舐めるなよ?小僧」
次の瞬間、その傷から流体的な赤熱する銀の何かが孝義に向かって伸びた
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【血金】の権蔵
かつて平成、令和で過去最悪の連続強姦殺人を起こした死刑囚である。美女や美少女を襲い、楽しんだ後に殺害してその場に隠す事なく捨てて、次の犠牲者を求めて彷徨う色欲に塗れた人の姿をした化け物だった。その被害は百人以上にも及び、その被害状況とある理由で【公安0課】が動く事態となった
その理由が異名にもなっている【血金】である。この【特異体質】は自身に流れる血液を中心とした体液が通常の物とは違い、赤熱する流体金属になるという物である。外気に触れると急激に温度が上昇して赤熱し、またそれを操作出来る為、変幻自在の武器や拘束具等として扱っていた
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伸びる【血金】が空中で先が鋭い刃に変化する。孝義は首を傾げると共に腰を落として地面を蹴ると、即座に腰に【鬼斬】の鞘の中程を当て、一気に白刃を抜いて斬り掛かった
権蔵の手から更に【血金】が溢れて瞬く間に赤熱する銀の壁を形成する。それに構わず孝義が【鬼斬】を振るうと只の紙であるかのように容易く銀壁を切り裂いた
「(手ごたえが無い。外れたか)っ!」
斬った手応えが無い事が分かった瞬間、距離を取る為に一旦下がろうと膝を曲げ、重心を後ろに下げ始める。しかし、第六感とも言うべき背筋を襲う怖気に無理矢理体を動かして横に跳んだ
―シュッ!
空を切る軽い音が耳に届く。横目で確認するとそれは最初に伸びてきた刃が途中で引き返して先程までいた場所、それも心臓がある位置を通過して地面に突き刺さった光景だった
若干の冷や汗を額に掻きながらも笑みを浮かべ、地面を踏み締め【鬼斬】を構える。赤熱する銀の刃が引き抜かれて縮み、銀壁が縮小していき、その奥から権蔵が姿を見せる
「ほう。あれを躱したか」
意外そうな僅かに驚いた表情を浮かべた権蔵は、掌から複数の先端が刃物になった触手じみた【血金】を伸ばして孝義を牽制しながらカナリアと鏡華に向かって歩き出した
その時、孝義の背後の空き家らしき古びた二階建ての木造一軒家の中央に轟音と共に大きな穴が開き、暫くして軋む様な音を立てて崩落すると共に、ズドンと音を立てて四人の間を何かが通り過ぎてビルの壁にぶつかった。四人がそれを見ると、それは口から血を吐き、ぐったりとして凹んで亀裂が走った壁に背中を預けるのは、血塗れになった先程出会ったスーツ姿のニ十代の男性だった
「ハッハッハッ!他愛無いなぁ!もっと骨のある奴は居ないのか!?」
崩壊した建物の残骸から上がる土煙の向こうから大柄な人型の影が浮かびあがり、直ぐにその主が現れた
それは両手を滴る鮮血で赤く染めた身長が優に2m以上はある白人系の巨漢だった。逆立つくすんだ金髪に彫の深い目力のある碧眼とやけに白さが目に付く整った歯を持つ角ばった顔。そして秋の僅かに寒さを感じる程の涼やかな気温にも関わらず、惜しげもなく晒された幾らかの大小様々な傷が刻まれた筋骨隆々としたボディービルダーの様な肉体が暑苦しさを感じさせた
海パンにも只のブーメランパンツにも見える物を履いた、そもそもそれ以外身に付けていないその男を見て権蔵を除く三人は思った
筋肉モリモリマッチョマンの変態だ!と
血金の能力だけ決まっていて何やかんやで権蔵になりました




