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69.契約者としての価値

契約した神格が出ますよ

会話回です

序にタイトル変更のお知らせ【刻界の転生魔術師】から【刻界の魔術師は生まれ直して気儘に歩む】に変更します

 『こちらへ来い。我が契約者よ』


 脳内に響いた声にアルベルトは意識を自身の内部に沈めていく。本来はするべきでないが、どのみち身体が動かないので気にしない事にした


 己の内にある黒いだけの空間に入ると、そこには既に先客がいた。体長が何十メートルもある毛皮の代わりに蒼い膿の様な粘性の体液で身を包んだ四足獣が、その体の大きさや形を絶え間なく変化させながら金色(こんじき)の双眸をこちらに向けている


 輪郭が朧で、常に変化し続けているにも拘らず、何故か一目でそれを【狼】と認識する事が出来るその存在は大きく裂けた口を開いて先程聞こえた声を発する


 『何だこの様は?』

 「……」


 俯いて何も答えないアルベルトに、その存在は苛立たし気な様子で続ける


 『確かに今のお前は能力を十全に扱う事(・・・・・・・・・)が難しいだろう(・・・・・・・)。だがこの様はあんまりではないか?』

 「……」

 『何も答えんか。儂と契約を交わした時のお前は全てを赫怒の豪焔で焼き尽くし、儂ら神格であろうと喰らい、自らの血肉にせんとする気迫があった

 しかし、今のお前にはその気迫が全く感じられない。かつて掲げた復讐を果たして腑抜けたか?』

 「……」


 ここまでずっと黙ったままのアルベルトに、いよいよ落胆したとばかりに視線をそらすその存在は溜め息を吐くと、興醒めとばかりに吐き捨てる


 『……もう良い。儂は好きにやらせてもらう。貴様には失望したぞ。()我が契約者よ』

 「待てよ」


 アルベルトの精神領域から立ち去ろうとして背を向けた存在に、この場所に来て初めてアルベルトが声を出して呼び止める


 億劫そうに首を回らせて振り返ったその存在はアルベルトを見て目を見開いた。アルベルトは俯いたまま顔に手を当てて笑っていた


 愉快気に、自嘲する様に、何かが吹っ切れた様に喉を鳴らして、やがて呵呵と狂った様に嗤い続ける。一頻り嗤うと顔を上げてその存在を見た


 その存在の眼を写し取った様な金色の双眸を怪し気に輝かせ、深く裂けた三日月の如き笑みを浮かべていた


 「久し振りに呼ばれて何を言われるかと思えば【腑抜けた】?【気迫が感じられない】?嗚呼、確かにそうかもな?まだ身体が馴染んでないにしても確かに無様だ。そう言われても仕方ない。先程の黒雷に対しても良く考えればやりようは幾らでもあったし、何よりお前の言葉に今まで何一つ返す事すら出来ていなかった」


 アルベルトは自らを嘲る様に、愚かさを噛み締める様に嗤いながら独白する。心底どうしようもないと、不甲斐なく確かに滑稽で無様で物も言えないと


 しかしその眼に諦めは無い。一度でも地面に膝を付いた事を恥じて、その事実に狂わんばかりの怒りを宿し、僅かに心の奥底に巣食っていた諦念や弱さを激情の焔が焼き尽くす


 「確かに復讐を果たし、何処か気が抜けて平和ボケしていた様だ。今までそれでもどうにかなっていたしな。全く反論の言葉が見つからない


 確かに無様で、哀れで、度し難い程に愚鈍でこれ以上にない程に救い難い醜態を晒した。お前が失望して見区切るのも仕方ないと自分でも思える程だ」


 アルベルトの周囲に蒼靄が漂いだす。そして獰猛な、それこそ【狼】の様な笑みを浮かべると共に、その左眼に纏う靄と同じ蒼い焔が噴き出し、そこから頬にかけて絡み合い伸びる、三本の砕けた蒼い鎖の紋様が浮かび上がった


 それはかつて背負い具現化した【大罪】の証。目につく全てを呪い、灰塵に帰さんとする【憤怒】の焔は決して消えず、力に餓えた【暴食】は未だ留まる所を知りはしない


 背負う二つの【大罪】はやがてその内に混ざり合い、【憤食】となってその眼に宿る


 「だが、【元】といざ告げられると些か不愉快な物だな。如何に滑稽な道化師だったとしても期待外れと嘲笑されて背を向けられるのは心底腹立たしい。反吐が出る


 お前のその態度もそうだが何よりその様な無様を晒した自分が許し難い。最高に最悪で正しく嗤う事しか出来ない程だ!


 嗚呼、不甲斐ない!この程度にまで墜ちて日和った自らの矮小で愚かなまでに弱い己の心がなぁ!!」


 アルベルトは熱を込める様に段々と声を大きくしていき、やがて吠える様に独白すると、憑き物が落ちた様なすっきりとした表情でニヒルな笑みを浮かべてその存在に冗談混じりに言う。その存在はアルベルトのその姿に待ちわびた様な隠し切れない喜悦を浮かべてその軽口に言葉を返した


 「さて、情けない所を見せたな?」

 『全くだ。…だが、それでこそ我が契約者に相応しい』

 「はっ!相変わらず偉そうに。さて、それじゃあ―」

 『うむ、それでは―』

 『「―狩りを始めるか(の)』」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 その頃、御影と【怪異対策班】の男―高藤がぶつかり合っていた。アルベルトはその場から動かない事もあり、既に死に体であると判断されたのか、二人共一瞥すらしない


 血の外套を纏った御影が背後に浮かべた血の短槍を打ち出して、その物量で叩き潰そうとする。対する高藤は獣化した両腕に黒雷を纏わせ、打ち出される短槍の弾幕の密度が最も少ない場所に移動すると、その強靭な筋力と黒雷の超電圧で破壊し、打ち落としながら身体を一条の黒雷へと変えてその隙間を駆け抜け、御影に急接近する


 肉薄された御影は重力球を操り、自身を斥力で後ろに弾いて距離を取ると共に、高藤の周囲の重力を数倍にも引き上げようとする。しかしその前に高藤が上げた獣じみた咆哮と共に、無差別に放たれた荒れ狂う放電に全ての重力球が御影ごと呑み込まれ、その数秒後に蒸発した


 「グアァアアッ!?」


 文字通り身を焦がす苦痛に思わず身体を曲げ、声を上げる御影だが、その眼に宿る闘志は未だ消えず、顔にはこの圧倒的に不利な状況にも関わらず笑みさえ浮かべていた


 御影は敢えて高藤に接近すると、新たに生み出した重力球の力を加えた膝蹴りを溝尾に打ち込む。急所への重い一撃によろけて後退した高藤に、御影は重力球で周囲の瓦礫を浮かび上がらせると血の短槍と共に撃ち放った


 膨大な物量攻撃を黒雷が迎え撃ち焼き尽くす。二人の戦況が拮抗し始めた時、突如吹き抜ける様に放たれた圧倒的な気配の波動に、二人は目を離す事が出来ない状況であるにも拘らずほぼ同時に同じ方向を向いた


 その視線の先には死に体で、既にこの戦場から脱落した筈の青年がいた。周囲には蒼い靄が漂い、黒い刀は地面に突き立てたまま俯いている


 その時、顔を上げた。頬が深くまで裂けた口角を赤い三日月の様に釣り上げ、挑発的な笑みを浮かべる金色こんじきに輝く双眸の内、左眼に蒼い焔が溢れ出し、そこから顎に掛けて、頬に絡み合って伸びる砕けた三本の蒼い鎖の紋様が現れていた


 その笑みに二人は同時に背筋を氷刃で刺し貫かれた様な感覚に襲われた

解説


【大罪化】

遺伝子内の【大罪の■■】の因子が感情や衝動により活性化する事で、主に眼球から炎の様なオーラや刺青の様な紋様を発生させる


基本的に【特異体質者】にとっての火事場の馬鹿力であり、一時的な能力の出力強化や位階の一段階の引き上げを起こす。極稀に【■■】へと【覚醒】する事もある




ブクマ、感想お待ちしております

次回、戦闘再開

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