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66.支部への襲撃

流血・少々残酷な表現があります。苦手な方はご注意下さい

 外が異常事態に混乱する中、【第十三支部】でも問題が発生していた


 『侵入者だ!銃武装複数!叩き潰せ!』


 突如、支部内に響き渡った短い放送に、支部内にいた者達が一斉に動き出す。一方の侵入者である銃で武装したスーツ姿の集団は、銃を構えて古びた蛍光灯が瞬く無機質なコンクリートの廊下を見回しながら進んでいると、隔壁が突然下りてきて分断される


 直後、侵入者の存在を告げる放送が流れると、地面が大きく揺れて、思わずよろける。ある者は浮遊感を、ある者は軽い重圧を感じて気付く。この場所その物が(・・・・・・・・)動いていると(・・・・・・)


 ガタンと音が鳴ると、隔壁が上がる。侵入者達が恐る恐る出ると、そこは20m四方の何も無い空間だった


 黒い軍服の様な外套を、同じく黒い何処にでもある様な動き易そうな服の上に羽織った、黒髪の中程から先が銀糸の様に変色した長い髪を後ろに一纏めにした白人系の顔立ちの青年―アルベルトが立ち、何かを呟きながら悠然と侵入者を待ち受ける


 侵入者が戦闘態勢に入り、警戒しながら全員が室内に侵入すると隔壁が下りて退路が断たれる


 アルベルトの呟く声が止まると、室内のあらゆる隅から蒼靄が幾つも湧き上がり、次第に立体的な曖昧な形を作るとそれぞれに一対の眼が開き、深くまで裂けた口から鮮烈なまでに赤く長い鋭い切っ先の舌を伸ばす四足獣へと姿を変えた


 この世にあり得べからざる異界の猟犬を従えたアルベルトは鋭い眼光を放つ紅い瞳で睥睨すると、ニヤリと残忍に嗤って言う


 「楽しませてくれよ?」


 その言葉と共に侵入者が構えていた銃から無数の銃弾がアルベルトと猟犬に向けて放たれた

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 アルベルトと侵入者の戦闘が開始した頃、別の場所でも戦闘が始まろうとしていた


 アルベルトの下に来た者達と同じ様に銃を構えながら進んでいた侵入者達は正面のひらけた場所にニコニコと無邪気に笑うセーラー服を着た高校生くらいの少女が、後ろに手を回して一人で立っている事に気付く


 「ようこそ。ねぇ、お兄さん達、何の用?」


 鈴の音の様な問いに侵入者の一人が前に出る


 「俺達は此処を潰しに来たのさ。お嬢ちゃん、ちょっと案内してくれよ」


 そう言って男が拳銃を構えたまま近付いて、直ぐそばまで来た瞬間、少女―カナリアが小さく跳んで、背後に隠されていた手を真横に軽く振った。その数拍後、男は首から勢い良く血飛沫を上げて膝から崩れ落ちた


 侵入者達がカナリアの方を見ると、僅かな返り血一つ無いカナリアが白銀に煌めくナイフを持って相変わらず無邪気に侵入者達を見て笑っていた


 侵入者達は一斉にカナリアに向けて銃弾を放つ。しかし、突如現れた五つ程の高速回転する黒い球体に吸い寄せられる様にその軌道をカナリアから逸らして、球体へと銃弾が殺到した


 銃弾は呑まれる様に音もなく球体の中へと消える


 銃撃が無駄だと悟った侵入者達の内、数人がカナリアに向かって駆けだした。中にはナイフを持たず素手のままの者もおり、一見取り押さえる為だと思われたが次の瞬間、片腕がスーツの袖を内側から破れる程肥大化し、神話の悪魔や化け物の様な鉤爪へと変わる


 華奢きゃしゃなカナリアの体を鋭い爪で刺し貫こうと、或いは豪腕の圧倒的な膂力で叩き潰そうとする怪物と冷たい輝きを放つナイフを握るスーツ姿の男女が退路を奪う様に回り込んで囲む


 それでも可憐な笑みを崩さないカナリアはナイフを無造作に真上に投げると、途中でナイフが粉々に砕け散り、無数の煌めきへと変わったかと思った瞬間、カナリアを中心に放射状に銀の豪雨となって降り注いだ


 極細の長い針へと変わったナイフの破片は露出した肌や服の薄い部分を貫いて突き刺さる。その痛みに呻くのも束の間、一斉に力が抜けた様に全員倒れた


 半開きの口からは唾液が零れ、全身が小刻みに痙攣している。状況を飲み込ずに呆然と立つ侵入者にカナリアは優しく、何処か妖艶な微笑みを向けると一言


 「もう良いよ」


 そう告げると右手を軽く振った。それと共に一陣の柔らかな風が吹き抜けたかと思うと、鼻や口から血が吹き出し、血涙を流して立っていた侵入者達は全員、即死した


 カナリア。その二つ名は【毒華麗姫(ハイドランジア)】であり、汎ゆる薬物を体内で精製し、創造した武器に付与して周囲に浮かぶ重力球によって撃ち出すという戦闘スタイルの暗殺者(アサシン)であった


 また、同じくあらゆる薬物を検知し、中和する彼女はSPとしても指折りの実力者である


 その彼女を相手するのに数だけの集団ではまるで意味が無い。彼女を相手するのに必要なのは彼女を上回る質と薬物を無効化する方法なのだから

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 時が経ち午後三時、アルベルト達【第十三支部】のメンバーは一部を除いて大会議室に集まっていた。荒八木は一度、静かに注目する集まった者達を大きく見回すと、口を開く


 「【第六支部】以下の支部に襲撃があり、【第八】、【第十二】、【第十五支部】に甚大な被害を受けたようだ

 更に同時刻に都内の各地でトラックやタンクローリーの爆発事件とその付近の住民、及び観光客の暴動が発生。目撃証言から人為的に何らかの薬剤や細菌を散布する目的で行われたと見られる

 また、暴動を行っている者達は一様に【特異体質者】と見られる能力を有しているとの報告もある

 現在、可能な限りの外部との封鎖が完了している

 最後にこれを公安と共に鎮圧してもらいたい。質問がある者はいるか?」

 「担当地点の指示と公安との合流地点は?」

 「各自相談して各々で決めて構わん。公安との合流は指示があるまで行う必要は無い。他はあるか?」

 「……」

 「目撃情報には【東京第一特殊刑務所】から脱獄した囚人とみられる存在の物もある。充分に注意して事に当たる様に。それでは解散!」

 「はっ!」


 その言葉と共に室内にいた支部員達は慌ただしく退室する。そして各自に割り当てられた部屋で装備を整えると一斉に街へと飛び出していった

カナリアの能力モデルはTRPGのDX3のトライブリードオーバードです

構成はバロール、モルフェウス、ソラリスの三つです

仮に深度を決めるなら99%辺りの設定となっています。それに伴い48話の移動法をワイヤーガンから壁を足場に移動に変えました


 解説


 【特異体質者】


 ・Dx3のオーヴァード。身体変化系の【キュマイラ】や【エグザイル】、重力操作の【バロール】等、基本的には呼称や能力は元ネタのままだが、【ハヌマーン】は移動能力特化で、振動能力は【フルクトゥース】と云う別カテゴリに分類されたり、【ブラックドッグ】は【インドラ】と云う呼称になったりしている


 ・因みに、【リザレクト】は使えず、一部の【特異体質者】は【コンセントレート】を、【キュマイラ】や【エグザイル】の様な身体変化系の【特異体質者】は超回復が可能


 ・能力を過剰使用した場合、基本的に身体変化系は恒久的に異形と化し、其れ以外は精神等の変調や暴走で死亡する

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