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63.襲撃

予告通り投稿です。見張り組スタートで後半はアルベルトsideに戻ります

 アルベルトとジャンヌが中華料理店に入って少しした頃、孝義達は店の前に車を停めて道中で買ったハンバーガーやポテトを食べていた


 「大将とジャンヌはあの店で中華なのに、俺たちゃマ○ドのジャンクフードか~。悲しいぜ」

 「文句言わないの。お父さんに言いつけるよ?」


 運転席でハンドルに凭れ掛かりながら食べかけのハンバーガー片手にそうぼやく孝義を、真後ろでポテトを摘みながら双眼鏡で辺りを見回すカナリアが注意する。孝義はハンバーガーの残りを一気に食べきると、缶コーヒーを一口飲んで言葉を返した


 「大将がその程度で怒る奴じゃねぇよ。むしろ埋め合わせに奢ってくれるかもな?」

 「…ちょっとおねだりしてみようかな?」


 孝義は真剣な表情で思案するカナリアの姿に苦笑すると、目に入ったスーツ姿の怪しい一団に気付いて顔を引き締める


 「雰囲気が一般人じゃねぇな。動きもそれなりに訓練されている様だ」

 「報告?」

 「あぁ、一応な」


 一団が中華料理店に入った事を確認して、孝義がマイクを起動させた時、車のラジオから速報が流れる


 『速報です。本日昼頃、【東京第一特殊刑務所】が襲撃を受けていた事が分かりました。被害状況は不明ですが、現場からはその状況から壊滅したのでは?との報告が上がっています

 詳しい情報が入り次第、お伝え致します』

 「何だと!?」


 慌ててカーナビにテレビをつけると、身振り手振りで状況を伝えるリポーターの背後で、規制線の向こうで慌ただしく動き回る数人の人の姿や、一目見て只事で無い有り様の【東京第一特殊刑務所】の壊れた有刺鉄線が絡まった塀の向こうにある廃墟と化した建物が映っていた


 「マジかよ···」

 「どうしたの?」

 「【東京第一特殊刑務所】が落ちた」

 「本当!?」


 孝義はカナリアの驚いた声を聞き流してマイクを起動させると、中華料理店にいるアルベルトに報告する


 「怪しい連中がそっちに行ったぞ。六人組、まぁ、只の客かもしれんが雰囲気がこっち側っぽくてな。後、クソッたれな話があるが聞きたいか?」

 『あぁ』


 アルベルトの感情が込められていない平坦な短い言葉に苦々しさが滲んだ顔で答える


 「さっき緊急速報があった。【東京第一特殊刑務所】が襲撃され、陥落したらしい」

 『何…だと…?』


 思わず漏れた様な信じられないと言った様子の僅かに途中で途切れた言葉がイヤホンから伝わる。小さくアルベルトと女性の声が聞こえたその時、イヤホンと車の外から同時に乾いた銃声が小さく鳴り響いた


 「っ!?銃声!?」


 孝義は突如、鳴り響いた銃声に後ろにいるカナリアに振り返る。カナリアが無言で首を振ると、孝義は直ぐにエンジンを掛けて車を急発進させた

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 中華料理店の中、銃声と共に男が倒れた


 「ジャンヌ、お嬢とSPの近くに行って障壁を張れ。俺は客の相手をする」

 「畏まりました」


 ジャンヌはシャルロットと二人のスーツの男の近くまで行くと、直ぐに呪文を詠唱する。それから間もなく六人の男女が現れた


 リーダー格らしき白いスーツ姿の、くすんだブロンド髪を後ろに撫でた眼鏡の神経質そうな男が前に立ち、その後ろに黒いスーツ姿のサングラスを掛けた男女がアサルトライフルの銃口をこちらに向けて立っている


 「お食事中、申し訳ないが君達には死んでもらう」

 「いきなり何だ?お前達」


 獰猛な笑みを浮かべた白スーツの男の宣言に対し、俺は胸ポケットにある潰れた煙草の箱から一本取り出し、咥えるとライターで先に火を着けた


 「ふん、随分と余裕だな。何か手でもあるのか?」

 「まさか。どうせ詰んでいるんだからせめて最後の一本を味わいながら職務を全うしようと思っただけさ」


 男の問いに、俺は諦念混じりのニヒルな笑みを浮かべて目を閉じると、口内の紫煙を薄く開けた口の隙間から吐き出す。立ち上る煙の向こうで男が笑みを深めると、右手を小さく上げると、素早く下ろした


 次の瞬間、五つの銃口から細かく刻まれる乾いた炸裂音と共に無数の銃弾がアルベルトに向かって放たれる。殺到した銃弾によって、激流に呑まれる木葉の様に左右に体を弄ばれながら、料理が置かれたテーブルまで押されて下がる


 しばらくして銃声と排出された空薬莢が床に落ちて奏でる高い金属音による二重奏が止む


 男達は無数の銃弾を受けて尚、立つ俺の姿を見て目を見開いた。とはいっても白スーツ以外はサングラスを掛けているので分からないが、こちらに向いている銃口が揺れているので動揺はしているだろう


 銃弾を受けて、血を流す体中に開いた穴から燻る様に黒い焔が漏れ出すと、燃え広がる様に着ていたスーツへと広がり、軈て全身を包み込む


 黒焔が蝋燭の火を吹き消す様に、一瞬で大きく揺らめいて消えると、髪が黒く染まったアルベルトが俯いていた顔を上げる。それを見て男達の表情が引きつった


 アルベルトの着ているスーツは何故か穴一つ無い状態に戻っており、両目は煌々と輝く鮮血の様な紅の猫目へと変化して男達を見据えている


 先程の残滓を思わせる黒焔を燻らせる煙草を咥えたまま、先程の諦念混じりのニヒルな笑みからは考えられない程、酷薄で眼前の獲物を見定める絶対的な捕食者であるかの様な、あるいは質の悪い悪戯が成功した子供の様な、そんなある種の残酷な無邪気さを感じさせる口角が大きく裂けた笑みを浮かべて、男達を見下して小馬鹿にする様な嘲笑を浮かべていた

次回予告『物語は加速する…!』(仮)

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