幕間.その頃、異世界では
GWですし幕間2を投稿します
異世界sideです
アルベルトがかつて生まれ、暮らしていた前世の世界へと消えて更に数日が経った。アルベルトの失踪は残されていた手紙に書かれていた事もあり、余り広がる事はなかった
しかし、幾つかの場所―アルベルトが良く顔を出していた騎士達の訓練場の付近や冒険者ギルドでは姿を見せない事から様々な推測や噂が流れていた
―ある者は武者修行の旅に出たと
―ある者は実家のレイガード領に帰ったと
―ある者は大陸に広がる大樹海【ギルム・ヘルムの大森林】に挑んだと
他にも様々な推測や噂があるもののまさか異世界にいると予想している者は誰一人としていなかった。それに娯楽目的の数ある他愛ない雑談程度で本気で考える者は大していなかった。何より単独で貴族の一師団を蹂躙し、襲来したレッドドラゴンを撃退する様な人物を心配する様な者などいなかったのだ
しかし、そうも言っていられない者達がいた
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昼過ぎ、王城の一室に三人の男が難しい顔をして顔を合わせていた
「それでレイガード辺境侯爵、アルベルト子爵は現在、何処にいるか把握しているか?」
「いえ、冒険者ギルドの依頼を受けてそのまま、手紙だけを残して帰っておりません。その手紙にも居場所は書かれておりませんでした」
「その事ですが私が直接、依頼しました。行き先は【エルガド】です」
「【エルガド】だと?あそこに何があるというのだ?」
「【ギルム·ヘルムの大森林】内にある遺跡の調査を依頼したのです」
「【ギルム·ヘルムの大森林】だと!?アルベルト一人で行かせたのか!?」
「お言葉ですが彼の実力は本物です。加えて【教会】の連中にバレない様に少数で挑む必要があったのです」
ガリウスの非難する言葉にルシウスは正面から向き合って説明する。アーサー王は【教会】という単語に顔をしかめると口を開く
「【教会】か。最近、【ニクル聖国】からの圧力も増えてきたしどうにかしたい所だが…」
「そう言えば【帝国】の動きはどうですか?」
「今の所は問題ないな。戦争の予兆になる様な食料や武器の大きな移動は見られないし、傭兵の募集や徴兵を行っている様子も無い」
「【帝国】?何かあったのですか?」
ルシウスの疑問にアーサー王は他言無用である事を伝えると、【魔物の氾濫】の報告の内容を伝える。ルシウスは顎に手を当てて考える
「成る程。確かにきな臭いですね。それにそれぞれ片方ならまだしも両方相手取るのはかなり難しい」
「そう言えば【異端審問官】が最近現れたらしいが何か知っている者はいるか?」
その言葉で二人、特にルシウスの顔が強張る。何故ならルシウスはその事を把握していた上に、その排除も依頼していたからだ
更に言えばアルベルトから【偵鳥】を使って送られた報告書に【異端審問官】に遭遇し、全滅させた事を隠す様に指示されていた事もある
そしてその顔の強張りを一国の王であるアーサー王は見逃さなかった
「ルシウスよ。何か知っているのか?」
「…後日送られてきた手紙に書かれていたのですけど、実は【異端審問官】と接触し、戦闘になったようです。接触した【異端審問官】は全員殺害したようですが、生き残りの危険性から口止めをされていました
また、アルベルト子爵と接触前に村が【異端審問官】に襲撃され壊滅。生き残りの少女を保護して身を潜めると書かれていました」
「そうか…。行き先に心当たりはあるか?」
「いえ」
「そうか」
アーサー王はそう言うと目を閉じて背凭れに寄り掛かる。暫く、瞑目して動かずに考え込むと、ゆっくりと目を開けて口を開いた
「ルシウス殿もレイガード辺境侯爵も忙しい中呼び出して長い時間、済まなかったな。ここまでにしよう
手紙を出したという事は少なくとも無事であるだろう
レイガード辺境侯爵は息子の行方が分からず不安かも知れないが、領地の運営を頼んだぞ
ルシウス殿は何か分かれば連絡をして欲しい」
「畏まりました」
「分かりました。分かり次第、連絡します」
二人は椅子から立ち上がるとその横に移動し、片膝をついてアーサー王に臣下の礼をする。数秒して立ち上がって二人が退室した後、残ったアーサー王は、娘であるセレスティアに聞いた内容を脳内で反芻し、呟く
「一年か。この期間に何の意味があるのだ?」
誰も居ない室内で、当然答えを返す者はいなかった




