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56.対【八尺】戦 (改稿中)

次かその次位で【八尺】戦は完結します

そして今度こそ本番になります

 孝義は【八尺】の攻撃を捌きながら思う。


 (想定したよりもかなり弱い。大将が何かしたのか?)


 実際に、【八尺】は左腕が凍結した事により完全に封じられ、体内から蝕む癌細胞によって行動の精彩は欠き、時折胸を押さえて身体を揺らしている。だが――


 (攻勢には出られそうに無い、か…)


 其処迄に力を削られ更に対抗策を用いた上で、尚も人一人では辛うじて受け流す事しか出来ないからこそ、【八尺】は特一級指定されているのだ。


 地中から勢い良く噴き上がる水を僅かな異変に気付いて避けた孝義に、態と避けさせた(・・・・・・・)【八尺】の開かれた右手が獲物を狩る蛇の如く鋭く伸びて孝義の首を掴む。


 「ウグッ……ガッ!」


 孝義が【異形化】して防御力を高め、且つアルベルトの中に潜む何者か(・・・)が【八尺】を大幅に弱体化させていなければ、確実に掴まれた瞬間に圧し折れていたと分かる程の握力に孝義の顔が歪み、苦悶の声が漏れる。


 其れでも孝義は、自らの得物である日本刀――【鬼切丸國綱】を握る手に力を籠め直すと右手を振り上げて順手に持つ【鬼斬丸國綱】の鋒を【八尺】へと向ける。其れに気付いた【八尺】は掴む右手を軽く上げると手首を返して頭から孝義を地面へと叩き付けた。


 「ガハッ!!……グウゥ……ッ!!」


 受け身を取る間も無く叩き付けられた孝義は手放し掛けた意識を辛うじて繋ぎ止めるも、【鬼斬丸國綱】を握る手からは力が抜けて持ち上げる事が出来ない。【阿紫霊狐】達は紀矢子や【怪異対策班】の男の治療を行っている上にそもそも戦闘員では無いので期待出来ず、【結界】内にいる為に紀矢子の支援も間に合いそうに無い。


 此処までかと覚悟した時、何かに気付いた【八尺】が振り向いた。


 「大丈夫か?」


 孝義は顔を上げて聞こえてきた其の声の主を確認すると、そこには銀糸の様な長髪が黒みがかって背中へと流れ、膝下まで伸びた漆黒の外套を纏って右手に長手袋を着けた、背後に輪を描く様に浮遊する八つの黒い火球を背負うアルベルトが中折れの【蛇蝎】を左手に軽く持って、背後に人化した【ダインスレイフ=グリム】を伴って立っていた。

 

 下からゆっくりとした風に吹き上げられる様に不気味に長い黒髪を漂わせる【八尺】の首はせわしなく動かしていた口を噤むと、脳内に邪悪さが滲むしゃがれた老婆の呪詛の様な声が響いた


 『アァ、忌々シイ。ウヌハ確カニ壊シタ筈。何故ウヌガ其処ニ立ツ?』


 【八尺】があの機械的な音以外の、しかも言葉として認識出来る言語を話した事に内心驚く。いや、或いは強い思念を送り込まれたというべきか?どちらにしても程々の知能がある事が確認された訳だ


 「生憎と頑丈さが取り得でね。さぁ、第二ラウンドと行こうか?」


 俺は【蛇蝎】を突き付ける様に構えると、目の前で警戒心を顕にこちらに向き直る【八尺】を紅い猫目で悠然と見据える。口角を釣り上げて挑発気味に笑うと、【八尺】は仮面の様に表情を変える事無く、しかし放つ気配に先程迄の苛立ちを塗り潰す様に敵意と殺意等のより強くある意味純粋な程に渾沌としたドス黒い感情が乗せられた事で威圧感が格段と増している。


 「ダイン」

 『此処に』


 妙に緩慢とした時間の中で短く名を呼ぶと、答える声と共に広げた右手に【ダインスレイフ=グリム】が左手を乗せて、発光と共に刀剣の姿へと変化する。


 「【鍛冶と金属を司りし【金山彦命】、【金屋子神】、【天目一箇命】、【火之迦具土】の大いなる日の本の神々よ。今こそ、御身等に恐み恐み白す。


 我が火を種火、折れた刃を玉鋼、握る一振りを芯とし、相対する荒御魂を調伏する力を振るう一刀を我が手に与え給え!!】」


 その言葉と共に、折れた【蛇蝎】が左手ごと黒い焔に包まれて消失する。そして燃えた左手で真横に構えた【ダインスレイフ=グリム】の刃の根本から撫でると、その黒い焔が左手から刀身に移って纏わり付き、刃を黒く眩い焔が煌々と燃え上がりアルベルト以外に誰も居ないにも関わらず、刀身から規則正しい鎚を打つ音が鳴り響く。


 下から吹き上がる暴風に煽られる様に怒髪天を衝くと云う言葉を体現するかの如く長い黒髪を逆立たせる。


 其れと共に、田畑や家屋に変化はないものの異常な速度で時間が進み、夕暮れの薄暗い黄昏時、所謂逢魔が時と呼ばれる時間へと変化していた。


 周囲に漂う雰囲気がより一層重く、より一層不穏になり、熱を奪い去る様な涼風が吹き抜ける。何処からともなく鴉やヒグラシの鳴き声が聞こえ、田畑や山に生えた草木が揺れて騒めく。





 黒髪を振り乱して、間近まで迫る中、アルベルトは居合の様に左腰の横に構えると、次の瞬間、刀を振り抜いたアルベルトが【八尺】の後ろに、漆黒に変化した刀を右に下して片足で軽やかに着地をする様に立っていた


 「燃え尽きろ。《仙刀術》終天【瞬閃華・黒陽別チ】」


 アルベルトのその呟きと共に、乱雑に切り裂かれた【八尺】の長い髪が、アルベルトが最初にいた場所から宙に浮かぶ【八尺】の頭部へと真横に走る様に切り口から黒い焔が噴き出して散り、黒焔が頭部に辿り着き、下から上る様に顔の中心に黒い縦線が走ると、其処から左右に黒い業火が溢れ出して真っ二つに分かれて燃えながら落下する


 『オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?』


 焔で黒く染まる【八尺】の絶叫が辺りに響き渡る。空間を震わせるそれは精神を犯す猛毒の様であったが、アルベルトにとってはそよ風の様な物で容易に受け流す事が出来た


 軈て頭が燃え尽きた灰が風に流されて消えて、残された胴が全身から怒気が混ざった殺気を放ち、アルベルトに向かって飛び掛かろうと脚を曲げる


 「おいおい、俺の事忘れるなよ。切り裂け【鬼切】、【居合・流閃】」


 孝義は困った様に笑うと、鞘に収められた美しい、しかし禍々しい輝きを放つ白刃に魔力を纏わせ抜刀し一閃する。上下に分かたれた胴に対して、孝義は更に一歩踏み出すと返す刀で縦横無尽に速く鋭い無数の斬撃で切り刻むと、【八尺】の体は地面に倒れる


 上半身が残った片腕で体を起こそうとするが、ぐらりと揺れると力が抜けて崩れ落ちた


 「これで終わり。…ではなさそうだ」


 【八尺】は倒した。その筈だったが、


 その時、ある場所から急速に邪悪な気配が膨れ上がる。アルベルトと孝義が一斉にそちらを見ると、先程孝義が倒した【八尺】の体が膨れ上がり、破れて湧き出した黒い粘性の液体の水溜まりからそれ(・・)は現れた


 それは【八尺】だった。だが、大きく異なる点があった


 白いワンピースは襤褸切れの様で泥や血で汚らしく汚れ、長いストレートの黒髪の先が絡み合い群れる蛇の様に揺らめき、悶える様にのたうっている。痩せ細り筋張った蒼白の両手には長く鋭い鉤爪があり、身の丈程の血濡れた大鎌が握られていた


 そして大きく違うのは、かつて微笑を湛えていた顔が存在しない事だ。そしてそれは比喩では無く、文字通り顔そのもの(・・・・・・・・・)が存在していな(・・・・・・・)かった(・・・)


 顔があるべき場所には先の見えない空虚な洞穴か、闇を湛える深淵の様に黒い何かが存在し、見つめているとまるでそこに引き込まれる様な錯覚を覚える。あるいは存在しているが、脳が認識する事を拒否しているのかもしれない


 静かに立つ【八尺】から放たれる廃退的な大瀑布の如き殺気と神威に、アルベルトと孝義は冷や汗を流して戦闘体勢を取る。ひりつく様な張り詰めた緊張感の中、次の瞬間、【八尺】はのたうつ髪を一斉に突き出した


 「っ!やる事あるから時間を稼いでくれ」

 「了解!」



 膨大な量の黒髪が途中で複雑に枝分かれ、絡み合いながら荒れ狂う濁流の様に空中でのたうち回って襲い掛かる。孝義が構えていた【鬼切丸國綱】を振るうと、圧倒的な物量で叩き潰さんとする黒い奔流が白刃の一閃で真っ二つに割れる


 返す刀で黒髪を切り裂くその背後では、アルベルトが【八尺】を今度こそ仕留める為の準備を行っていた。アルベルトが瞑目し、集中していると背後に浮かぶ八つの黒い火球が浮かび上がり、空中で輪を描いて回転する。その輪は徐々に回転が加速し、狭まっていく


 「クソッ!」


 そこまで来て荒れ狂う黒髪が遂に抑えられなくなり数本が孝義の後ろに抜けてアルベルトへと伸びる


 「させないわよ!」


 その時、腫れて片目が閉じた、泥まみれで額から血を流す鬼瓦が片手で大刀を振り下ろして迫る黒髪を真横から両断した。鬼瓦は地面にめり込んだ大刀を引き抜くと体を起こす。よく見てみると左腕は血塗れで力無くぶら下がり、纏う装備も汚れている


 「【酒呑童子】、無事だったか」

 「【憑影】、あたしを見くびらないで欲しいわね。とは言え腕が一本持ってかれたけど」


 横目で鬼瓦の様子を見てニヤリと笑う孝義に、鬼瓦も獰猛に笑って返す。人数が増えた事で先ずは眼の前の邪魔者から排除する事にしたのか【八尺】は髪を伸ばすのを止めると、踏み出して大鎌を横薙ぎを振るった


 「ハッ!」


 風を切り裂き襲い来る大鎌を孝義は気合と共に受け止める


 ニヤリ


 孝義は【八尺】の存在しない顔にこちらを嘲る様な笑みを幻視して、最悪の予感に背筋を凍らせてしゃがむ。その数瞬後に素早く引き戻された大鎌の刃が通り過ぎて髪が幾らか刈り取られる


 「おいおい、マジかよ」


 冷や汗が流してそう呟く間に【八尺】は手元で小さく鎌を回すと鋭い切っ先を向けて下から真上に斬り上げる。後ろに跳んで回避した孝義に【八尺】は大鎌の柄を回して刃を反転させると、そのまま孝義の脳天目掛けて振り下ろした


 「グッ!」


 孝義は半身になり、【鬼切丸國綱】を間に滑り込ませて受け流す。火花が飛び散り、僅かに軌道がずれた大鎌の刃はそのまま深々と地面に突き刺さった


 これを好機と鬼瓦と孝義が接近し切り掛かるが、【八尺】ののたうつ黒髪に阻まれて中々本体に刃が届かない。その時、


 「出来たぞ」


 アルベルトの声が聞こえてきた

 解説

 【八尺】の最終形態はニャルラトホテプの化身【赤の女王】の亜種をイメージしています


 【赤の女王】が圧倒的なカリスマで多くの人々を破滅に導くのに対し、【八尺】は見初めた個人に執着し、POWやCONを吸収してとり殺す土着の大女の怪異という設定です


 最初の構想ではここまで形態変化する予定じゃなかったんですけどねぇ?書いている内にこうなりました



 因みに、此の【八尺】、実は完全体じゃないって云うね。抜け殻と迄は言わないけど、とある理由で其れなりに弱体化している

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