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4.魔法

 レイチェルの後についていき、レイチェルの部屋に入る。中は広く淡い桃色の壁と奥にある大きく柔らかそうなベットの横にある棚に飾られたぬいぐるみが女の子らしさを醸し出していた。窓側にある机の横には赤毛とやや吊り目の紅眼のレイチェルが成長した姿の様な女性―ジャクソンやレイチェルの母親のマリエル・レイガードが教本を持って立っていた


 因みに第一夫人のマリエルと第二夫人のエミリーは仲が良く、二人で紅茶を楽しんでいるのを見かけた記憶がある


 「レイチェル、遅かったわね。あら?アルベルトもいるの?体は大丈夫?」

 「えぇ、回復致しました。ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」

 「そう。良かったわ」

 「あのね。アル君が魔法を学びたいんだって」

 「そうなの?まだ早いんじゃない?」


 この世界では一般的に魔法を学ぶのは10歳からだ。因みにジャクソンは11歳、エイブラハムは13歳、レイチェルは14歳だ


 「レイチェルお姉様の邪魔をしない様に後ろで見ているだけでもいいので僕にも教えてくれませんか?」

 「まぁ、構わないわよ。とは言っても今日は実習だから訓練場に行くわよ」

 「分かりました」

 「は~い」


 マリエルを先頭に廊下を進み訓練場に戻る。既にガリウスとエイブラハムはおらず、気絶したジャクソンも片付けられたのかいなかった。マリエルは訓練場の中央に立つと俺とレイチェルに話し掛ける


 「さて、アルベルトは私の横で見ててね」

 「はい」


 俺はマリエルの言葉に頷いて横に移動する


 「さて、レイチェル。今日は《炎壁ファイヤーウォール》を使ってみなさい」

 「はい。【炎よ、我に迫る攻撃からこの身を守り焼き尽くせ】《炎壁ファイヤーウォール》!」


 レイチェルが正面に掌を前に向けて両腕を前に出し、呪文を詠唱すると掌の前に40cm程の魔法陣が浮かび、そこから炎が溢れて地面に落ちる。落ちた炎は横に広がると緩やかな弧を描く高さ2m程の炎の壁へと変わった


 …ふむ。まぁ、大体わかった。やはり詠唱は必要ない(・・・・・・・・・・)様だ(・・)。魔法陣にはある程度の情報が書かれていたが内容は魔法の属性、性質、形態、状態、範囲位だったし、それ位なら火を魔法で起こして魔力操作と魔力制御を使って同じ事が出来るし、応用も利く


 それに若干、魔法陣の発生が詠唱を終えるよりもコンマ数秒早かった事からも必要ないと言えるだろう。必要も無いのに悠長に詠唱していたらその間は容易く近付ける上に、殴り放題なのでハッキリ言って無駄でしかない


 とまぁ、そんな事を考えながら適当に魔力を弄っていたのが間違いだったらしい。掌を上に向けて軽い気持ちで『炎よ、出ろ!』なんて思ったら急に40cm程の魔法陣が浮かび上がり、そこから青白い5m程の火柱が上がった


 「うおあっ!?」

 「どうし、…えっ!?」

 「今の何!?」

 「う、お、えっ?」

 「アルベルト!今のは何!?」

 「ちょ、マリエル、お母さま!ちょっと、落ち、着いて、ください!」

 「お母さま、落ち着いて!」


 マリエルに肩を掴まれて詰問されながら激しく揺さぶられて、俺は気分が悪くなってきたので懸命に落ち着く様に声を掛ける。途中、レイチェルも止めに入ってくれたのでどうにかマリエルを落ち着かせる事が出来た。振られ過ぎて舌を噛むかと思ったわ


 「取り乱してごめんなさい。所で今のは?」

 「いや、何か適当に『炎よ、出ろ』って思ったら出てきて」

 「って事は無詠唱って事!?アル君凄い!」

 「えぇ、本当にね。ちょっとレイチェルと模擬戦してみない?」

 「僕は良いですけどお姉様は…」

 「良いよ。やろう!」


 そんな訳で模擬戦をする事になった。魔法以外は禁止で降参か戦闘不能にしたら勝ち。ヤバそうな時はマリエルが止めに入るそうだ


 「レイチェルお姉様、準備は出来ましたか?」

 「うん、何時でも良いよ」

 「では始め!」

 「【炎よ、我に迫る攻撃から―」


 開始の合図と共にレイチェルが詠唱を始める。俺は空気中の水蒸気を凝縮して幾つかの1cm位の水球を作るとレイチェルの詠唱が終わると同時に流線型にして分子の運動量を0に固定し、回転を加えて発射する。水の結晶弾は炎の壁を容易く貫くと狙い通りに詠唱中のレイチェルの足元に着弾する。着弾した結晶弾は地面に当たると同時に砕け散るが、完全に崩壊するまでにラグがあり、地面を深く抉る位の威力があった


 「【穿て】」

 「【炎よ、我が敵を―】って、うわぁ!?」

 「【陥没】、【隆起】」


 俺は驚いて仰け反ったレイチェルの背後の地面を陥没させ穴を作り、余った土を棒状にして斜めに隆起させて突き落とした。既に片足が落ちていたレイチェルはそれで完全にバランスを崩し穴に落ちる。俺は直ぐに土を操作して腰から下を埋め固めた


 「んぐー!んぎー!」

 「降参ですか。お姉様?」

 「くっ!まだまだ」

 「そこまでよ。勝者、アルベルト」


 マリエルの宣言で模擬戦が終了する。俺は地面を操作してレイチェルを押し上げるとレイチェルは汚れを叩いて落とすと俺の前まで来て称賛の声を上げる


 「凄いね。手も足も出なかったよ」

 「本当にね。何かコツでもあるのかしら?」

 「多分、魔力操作と制御を身に付けてしっかりとしたイメージを持てば誰でも出来ますよ」

 「何時の間にそんな事をしていたの?」


 俺はその問いにどう答えるかを考えて親には俺が転生者である事を打ち明けようと思った。教えても何とかなるだろうし


 「そうですねぇ。その件については後でお父様とエミリーお母さまと三人の時で構いませんか?」

 「分かったわ。後で時間を作る」

 「どういう事なの?」

 「僕の秘密ですよ。お姉様も知りたければどうぞ?」

 「分かった。一緒に聞かせてもらうね?」

 「では僕は部屋に戻るので時間が出来たら呼んでください」

 「分かったわ」


 そう言って俺は部屋に戻った。途中であった使用人の人達に頭を下げられるのは中々慣れてない事もあり、若干、こそばゆかった

用語解説


【魔法】


 ・この世界を構成する、現象や改変を人為的に発生させるシステム(ルール)の一つ


 イメージを元に魔力を使用して変換装置である魔法陣から投射される事で顕現する。但し、理論やイメージ、アイデア等の相応の能力さえあれば魔法陣を出現させずとも使用可能


 世界其の物の外部に適応される為、この世界以外では使用不可


 尚、【魔術】とは別の物である


『世界の【法】たる魔法は理解さえすれば、望むがままに火を起こし、風を吹かせ、水を湧かせ、土を耕す


 万能故に何物にも変わり我々の助けとなるが、【理】たる力には及ばず、同じ【魔法】でも未熟ならば時として相性を容易く覆し、時として自らの足を掬う事になるだろう』



















 『旧き『ソウゾウ』の大鯨は泡沫(世界)を呑んだ。より面白く、より劇的に、幻想と空想を泡沫(世界)に込めて広げて(宇宙外)へと解き放つ』

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