53.【青梅村】の探索
ちょっとした報告です
今までパソコンを使って小説を編集しているんですけど最近、その充電器が破損してしまいました
今はスマホで編集していますので多少、文字の変換が幾つか出来ない以外は今の所影響はありません
それはそうと花粉辛いです(´・ω・`; )
尚、実在する青梅市とは全く関係ありません
【青梅村】の民家の一つの一室に迷彩柄の服を着た二十代の男が荒い息を吐いて壁に寄り掛かっていた。全身から流れる汗は外の猛暑だけが理由ではない。
彼はアルベルト達が派遣される前に【青梅村】にやって来た【怪異対策班】の一人だった。
彼らの部隊は【青梅村】に到着後、【八尺様】の影響で現れた怪異をやり過ごしながら探索して、遂に【八尺様】と遭遇した。
彼らは即座に展開して攻撃を仕掛けるも歯が立たず、逆に彼が見初められ退却する事になったのだ。
隊長の男は民家に撤退後、彼を部屋の一つに入れるとカーテンや雨戸を全て閉め、食料と、四方に盛り塩を置いて言った。
「良いか、高藤。俺達が部屋に入るまで絶対に此処から動くなよ」
「隊長達はどうするんですか?」
「あいつを足止めする」
「そんな!俺も一緒に!」
「良いか!?お前は今、奴に狙われている!出ていけば殺されるぞ!」
「っ!」
「お前はまだ若いんだ。だから生きろ」
自分も戦おうとする男に、隊長は彼の両肩を掴んで怒鳴る。その迫力に身を竦ませた隙に隊長は肩から手を離すと部屋から出て扉を閉めて足音は遠ざかっていくのだった。
男は自衛隊に入った頃から愛用している拳銃を握ると、思わず言葉が零れる。
「誰か、誰でもいい。早くこの悪夢を終わらせてくれ…!」
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【青梅村】に入ったアルベルトと紀矢子は周囲を警戒しながら進んでいく。此処に来るまでの間に着ていたコート等の上着は既に脱いで《倉庫》の中だ。
「人の気配がないな」
「えぇ、【八尺】もそうだけど先ずは【怪異対策班】の人達を見つけないとね」
特に何事もなくあぜ道を進んでいると、青々とした田畑の中に小さく揺れる白い物が見えた。
気になって良く見てみるとそれはくねくねと揺らめく人型に見える物だった。風に吹かれて揺れている様には見えないそれの正体を悟った俺は直ぐに視線を逸らすと鬼瓦に伝える。
「畑の中に【CSO-1032-JP】がいる」
「そう、面倒ね」
俺の言葉に鬼瓦は心底面倒臭そうに返す。
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此処で【CSO-1032-JP】について説明しよう。
【CSO-1032-JP】とは通称【くねくね】と呼ばれる怪異で、田畑の中に現れる輪郭がはっきりとしない人型の蜃気楼の様な存在で、その名の通りくねくねとした揺らめいた動きをする。
この怪異は基本的に田畑の中から出て来る事は少なく、物理的な脅威は一切ないが、とある性質から特一級怪異に指定されている。
それは理解する事で発狂するという物だ。
【CSO-1032-JP】の動きによる物かどうかは調べる術がないので詳しくは未だに分かっていないが、【CSO-1032-JP】がどのような物かを理解した瞬間、発狂する事が判明している。
故に【CSO-1032-JP】らしき物を確認した瞬間、それを視界に入れない事が優先されるのだ。
尚、約四年前に【CSO-1032-JP】が、磁場異常によって変質した【宇宙からの色】の変異個体である可能性について論文が出され、植物や小型生物の異常変質や、成長に伴う生物の蒸発現象による地方の居住地域の無人化や生物の喪失の報告が急増した事から【CSO-1032-JP】は準一級怪異から特一級怪異へと格上げされた。
されど未だに将太が分からなず脅威度が高い為、【CSO-1032-JP】が存在する場所の長期滞在は禁止されている。
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田畑から視線を逸らしながら進むと道中に何か光る物が転がっている事に気付いた。近付いて拾い上げてみると如何やら薬莢の様だ。
「薬莢か」
「見た感じ自衛隊で使われている小銃の物ね」
「という事は【怪異対策班】の物か」
薬莢は弧を描いて幾つも転がっている。その事から何かを囲んで銃撃した事が分かった。それが【八尺】か、それともそれ以外の何かかは分からないが戦闘があった事は間違いなさそうだ。
「血痕や死体は無いな」
「撃退したか。それとも何等かの理由で撤退したみたいね」
粗方調べ終わったアルベルトと紀矢子は近くの民家に向かう。アルベルトが扉に手を掛けると如何やら鍵は掛かっていない様で僅かに動いた。
音を立てない様にそっと引き戸を小さく開けると、隙間から中を覗き込む。中は何の変哲もない玄関で、【領域】の作用なのか長い間住民がいない筈にもかかわらず埃が積もっている様子がない。
暫く聞き耳を立てながら見回し、特に異常がない事を確認すると、ゆっくりと開けて中に入った。
中は如何にも日本家屋といった物で荒れた様子も無く、家主が回収していなかったのか、それともこの【領域】で再現されているのか一通りの家具が残されたままになっている。
「何かあったか?」
「いいえ、特に目ぼしい物はなかったわ」
「こっちも何もなかった」
一通り民家を調べたアルベルトは広い和室で紀矢子と合流して尋ねるが、思った様な報告はなかった。
「だが、【怪異対策班】の奴らは此処に逃げ込まなくて正解だったな」
「そうねぇ」
アルベルトと紀矢子の視線の先には部屋の隅に置かれたすっかり黒ずみ、湿気るどころか半ば溜まった水に溶けている盛り塩があった。あれではもう何の効果もないだろう。
民家を出て幾つかの民家を探索していると、引き戸が開かれた民家を発見した。中を覗くと、こちらに向けて幾つもの弾痕が刻まれ、床に転がる薬莢の中に迷彩柄の防弾チョッキ等を装備した男が下駄箱に寄り掛かって座り込んでいる。
アルベルトが男の肩を揺すろうと触れると、男はそのまま横に倒れる。首に触れて脈を調べると全体的に湿っており、既に死んでいる事が分かった。
「遅かったか」
「まだ生存者がいるかもしれないわ。慎重に調べるわよ」
紀矢子の言葉に頷くと警戒を厳として音を立てない様に廊下を歩く。所々に【怪異対策班】の死体が転がっており、そのどれもが全身が湿っていて、同じ方向に向けて攻撃した痕跡を残していた。また、どの死体にも致命傷になる様な外傷は見られず衰弱が原因の様に見えた。
「精神に影響を与えるタイプか?」
「又は体力を奪うタイプね。どちらにしても厄介だわ。其れと見付けた全員の身体が湿っているのが気になるわ」
鬼瓦と話していると近くの階段の上辺りから突然、銃声が鳴り響いた。直ぐに音の発生源に向かって駆けだすと、そこには呪符を貼り付けた扉を背に力無く寄り掛かる四十代程の男の姿があった。
最初は彼も死んでいると思ったが、僅かに肩が上下しており如何やら生きている様だ。
「おい、大丈夫か?」
「…う、…誰…だ?」
「【神怪課】の者だ。何があった」
「奴が…【八尺】が、来た。この奥に…部下がいる。あいつを頼、む」
絞り出す様な声でそれだけ言うと彼の体から力が抜ける。脈や呼吸を調べると如何やら気絶しただけの様だが明らかに衰弱しており、このまま放置するのは明らかに危険だろう。
アルベルトは扉と反対側の中空に手を翳すと空間が歪み、穴が開く。
「シュレディンガー、《門》を開いたからこいつを連れていってくれ」
「分かったよ」
シュレディンガーはそう言うと、向こうの世界で再会した時の様に嘗ての樋口圭吾の肉体を使って男を背負い《門》の向こうに消える。
「シュレディンガー、あいつが戻るまで見ていてくれ」
「分かった」
シュレディンガーが《門》の向こうに消えた事を確認してから《門》を閉じた俺は鬼瓦を見る。
「俺が行く」
「分かったわ」
短いやり取りで紀矢子は廊下で警戒を行い、アルベルトは呪符が貼られた扉を押し開けた。
「!?誰だっ!?」
扉を開けた瞬間、部屋の最奥の壁に寄り掛かるまだ二十代の男が恐怖に顔を引き攣らせ、拳銃をこちらに向けて鋭い誰何の声を放つ。しかし男の恐怖や不安からか腕は震え、その所為で照準はまるで合っていなかった。
俺は両手を頭の横に上げると男に話し掛ける。
「【怪異対策班】の者だな?俺達は【神怪課】の者だ。お前達の支援、及び救助に来た」
「ほ、本当か!?他の皆はどうなった!?」
「扉の前にいた男は生きていたが他の奴らは駄目だった。尤も見付けたのが全員かは分からないがな」
「そんなっ!畜生!」
「それよりも此処から出るぞ」
「分かった」
男はよろけながら立ち上がるとこちらに歩いて来る。その時、雨が降る前兆の様な冷たく湿った風が室内に吹く。ふと部屋の隅に置かれた盛り塩を見ると、急速に黒く変色していき、湿気って皿が結露し瞬く間に水が溜まっていく。それと共に物理的な冷気とは違う邪気、或いは濃縮された悪意と形容するべき重苦しい底冷えする気配が近付いてくるのを感じた。
室内に急速に不自然な迄に濃く局地的な濃霧が生じる。それに嫌な予感を覚えた俺は駆け出すと、男を抱きかかえて結露する窓を突き破って飛び出した。
中空で先程までいた部屋に振り返ると、其処には直前迄室内に充満していた濃霧の代わりに現れた白い帽子を被った白いワンピース姿の異様な女がこちらに向けて手を伸ばしている姿があった。
次回、ボス戦···!




