44.仲間との再会
三人の新キャラが出ます
俺は片手を上げると待合スペースにいる彼女達に声を掛ける。その声で俺に気付いた新しく来た三人の内、セーラー服を着た少女が満面の笑みを浮かべて駆け寄って来た
「お前達、久し振りだな」
「久し振り~!」
「おっと、あぁ、久し振りだな。カナリア」
駆け寄って来た少女―転生以前に色々あって義理の娘になっているカナリアは減速せずに俺に飛びついた。俺は一歩下がって勢いを殺すと、嬉しそうな笑みを浮かべてこちらを見上げるカナリアの頭を優しく撫でる
その後ろで残りの二人が顔を見合わせて苦笑しながら歩いて来ると、ある程度の所で立ち止まり口を開いた
「やっぱり生きていたか大将!久し振りだな!随分とまぁ変わっちまったなぁ~?」
「ハハッ、生憎また死に損なったよ。お前は少し背が高くなったか?久し振りだな、孝義」
男―転生前の俺の部下である孝義はポケットに入れていた片手を上げて少年の様な悪戯っぽい笑みを浮かべて可笑しそうに俺を見る。その隣でワンピースの女性―鏡華が手本の様な礼をした後、俺を気遣う言葉を掛ける
「お久し振りです、樋口様。此処を離れている間、お体は大丈夫でしたか?」
「あぁ、心配いらないよ。鏡華」
「それで大将、何があった?」
「あぁ、それは―」
俺はカナリアの肩に手を置いてそっと押して離すと三人に簡単に転生した事、異端審問官との戦闘、遺跡であった事を話す。三人の内、黙って相槌を打ちながら話を聞いていた孝義は眼を閉じて暫く腕を組んで唸ると、話し終えた所で上に向けた掌に拳をポンと叩いて何処か納得した様に口を開いた
「成程、要するに中身だけ異世界に行ってなんやかんやで好みの娘をお持ち帰りしてきたと。流石大将だな。恐れ入るぜ全く」
「人聞きの悪い事言ってんじゃねぇぞ、孝義。今言った様にクウの保護と情報収集に一時的に戻っただけで終われば向こうに行くわ。シオンも家族どころか村が全滅したから引き取っただけだ」
「ほぉ~?でも好みではあるだろ?」
「ハァ、いい加減にしろよ?孝義」
面白がる様に笑って態々顔を下から覗き込む孝義の言葉に半眼になってやや低めの声で返すと一歩下がってニヤニヤと笑って問い掛ける。俺はそれに答えずに溜息を吐くと少し威圧を漏らし、更に低くなった声で孝義にこの話題を止める様に促した
孝義は俺の威圧を降参する様に両手を上げてヘラヘラ笑って受け流すと、全く笑っていない鋭い眼光の眼で俺を見て尋ねる
「ヘイヘイ、分かったよ。それで俺達を呼び出した理由は何だ?」
「あの二人の教師と護衛になって貰おうと思ってな。どうしてお前らかはジャンヌに聞いてくれ」
「あいよ」
「それでは【旧星】は如何しますか?」
鏡華の言う【旧星】とは俺が立ち上げた何でも屋の様な会社の名である。表向きの活動拠点で俺を社長、ジャンヌがその秘書をしている。目の前にいる三人も社員で分野は異なるもののそれなりの地位にいる者達であった
「今のまとめ役は?」
「ジャンヌ様でございます」
「そうか。…ジャンヌ、今から転生先の時空座標を送るから連絡したら頼む」
「畏まりました」
「うおっ!?」
音も無く孝義の隣に立って右手で眼鏡の位置を直すジャンヌに向かってそう言うと、それまで気付いていなかった孝義が上擦った声を上げて数歩ジャンヌから遠ざかる。その様子を女子二人は面白そうにクスクスと笑っていた
それに憮然とした顔をして孝義が戻ると俺を見て尋ねる
「それで?話を聞く限り俺達も大将の転生した世界とやらに行くって事か?」
「何か問題か?」
俺がそう問い掛けると孝義は肩を竦めると不思議そうに尋ねる
「いや、あんたの命令なら従うさ。だが、大将だけでは駄目なのか?」
「俺一人だと限界があるからな」
「そうか。分かった」
「それでどの様なご予定ですか?」
「一年程こっちに滞在してから向こうに行く。各自それまで用意をする様に」
「了解」
「畏まりました」
「は~い」
三人の返事を聞いた後に俺はジャンヌ達の座るソファーの向かいに座るとシオンとクウに向かって口を開く
「さて、二人共。改めて自己紹介をしよう。俺はアルベルト・レイガードだ。宜しく頼む。早速で申し訳ないが二人にはそれぞれある程度の自衛が出来る様になってもらいたい」
「分かりました」
「は、はい」
「それで疲れているかもしれないが俺とそこの兄ちゃんが模擬戦するから移動するぞ」
「えっ!?おい、聞いてねぇぞ!?」
俺は孝義の慌てた声を無視して立ち上がると右側にある扉の内、左の扉を開けて先に進み、シオンとクウが等間隔に鉄扉が並び、天井一面の曇りガラス越しに照明が照らす白い壁とタイル張りの廊下を物珍しそうにキョロキョロと見回しながら其の後を追いかける
廊下に並ぶ幾つかの扉の内の一つを開けて入ったアルベルトを追った先に広がっていたのは、表から見た銀行の建物の構造上あり得ない程に広い窓の無い学校の体育館の様な直方体の空間だった




