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幕間.残された者達

アルベルト達が《ゲート》に消えた後の話です

時間軸は2章【前災狂厄】編の始まりから数日後です

 アルベルトが日本に消えて数日後、王都にある屋敷にいるレイチェルが窓から外を見ていると一羽の白い鳥がこちらに向かって飛んで来るのが見えた。鳥は翼を広げてゆっくりと下降するとレイチェルのいる部屋の窓枠に止まった


 レイチェルはその鳥に見覚えがある事に気付く。足には何か結び付けられていた


 「あれ?アル君の使い魔だ」


 レイチェルを見上げて止まる【偵鳥】から足に結び付けられた物を解いて取ると、それは如何やら細く丸められた紙の様だった。しかしレイチェルの良く知る羊皮紙とは違い、表面が滑らかで手触りが良く、何より美しい白だった


 レイチェルは紙を伸ばして中を見ると複雑な小さな文字の様な物に囲まれた円と中に五芒星を描いた魔法陣の下に線が細い少し手荒な崩れた文字でこう書かれていた

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 突然で申し訳ないが一年程、元の世界に向かう事になった

 又、異端審問官を始末したので教会の連中に目を付けられた可能性がある

 最後にこの紙は魔力を流す事で燃える様になっている。読んだ後、直ぐに処分して欲しい

    アルベルト・レイガード

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「えっ!?」


 驚いたレイチェルは何度も読み返すが内容は一向に変わる事は無い。思わず窓枠に止まる【偵鳥】を見るが小首を傾げてレイチェルを見返すだけだった


 「えっと、あ、そうだ!お父様に伝えないと!」


 思い出した様に口に出して手紙を持って部屋から駆け出すレイチェルの後ろ姿を【偵鳥】は黙って見つめていた

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 同時刻、王城にいるセレスティアの下にも【偵鳥】は向かっていた


 王城の周りを飛び回っていた【偵鳥】は私室の窓際で本を読むセレスティアの姿を見つけて窓から部屋に入ろうとするが窓が閉まっていて入れない。仕方ないので窓枠の僅かな足場に止まると窓をつつ


 コツコツという音に気付いたセレスティアが机に本を置き、椅子から立ち上がって窓を開けると【偵鳥】は開いた窓の隙間を擦り抜ける様に室内に入り、机に置かれた本の上に止まった


 レイチェルが席に戻って【偵鳥】を観察すると、足に巻き付けられた物に気付いて手を伸ばす。【偵鳥】はそれを気にせずに毛繕いをしている間に解いて伸ばすと、それはセレスティアに当てられた手紙だった

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 セレスティアへ

 君がこれを読んでいる時には俺はもうその国にはいないだろう。急用で暫く離れる事になった

 一年以内には戻れる筈だから心配しなくても良い。その鳥は俺の使い魔の様な物だから何かあれば頼ると良い。きっと役に立つ筈だ

 追伸 魔法陣に魔力を流せば燃えるので読んだ後は燃やす様に

 アルベルト・レイガード

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「何があったのでしょうか?それよりも」


 セレスティアはそう言うと窓際まで移動して腕を外に突き出すと手紙に魔力を流す。手紙の文章の上に書かれた魔法陣が赤く輝くと一瞬で燃え上がり、灰も残さずに消え去った


 手紙が消えた後、セレスティアは困った様に頬に手を当てると首を傾げて呟く


 「さて、お父様にご報告しませんと。それにこの子は何を食べるのかしら?」


 セレスティアはその事を考えながら父親であるアーサー・ヴァルト・ガルグルムの下へと頬に手を当てたまま歩きだした

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 冒険者ギルド【ヴァルト王国】本部事務室でルシウス・エルガーレが積み重なる書類を片付けているとコツコツと背後の窓を軽くて硬い物で叩く音が聞こえてきた。振り返ると窓の外に止まる白い鳥―【偵鳥】がいた


 「おや?珍しいな。何か用かな?」


 そう言いながら窓を開けると【偵鳥】は羽ばたいて先程までルシウスが座っていた椅子に止まると、自分の足をくちばしついばみ始めた。よく見てみると啄んでいるのは足に結び付けられている何かである事に気付く


 ルシウスが近付いて手を伸ばすと【偵鳥】は啄むのを止めてルシウスを見る。じっと動かずにいる【偵鳥】から足に結び付けられている物を解いて広げるとそれはアルベルトからの報告書だった


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ギルドマスター・ルシウス殿

 先ずは依頼の遺跡を発見・調査した結果、暫くこの国から離れる事になった。身を潜める為連絡は取れず、冒険者としての活動も休止する事になるだろう

 次に到着前に異端審問官によって村が壊滅した。異端審問官は分かる範囲で始末したが討ち漏らしがあるかもしれない。家族を巻き込みたくないので可能な限りしらばっくれて欲しい

 又、生き残りの少女を保護した事も報告しておく

 最後に教会の奴らは思った以上に危険な可能性が高い。十分に注意して欲しい


 追伸 この紙は直ぐに始末する様に

  アルバト

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ルシウスは読み終えると直ぐに無詠唱で炎を生み出して報告書を燃やす。赤々と燃える炎を報告書を一瞬で灰にすると魔法で吹いた一陣の風に乗って開けられた窓の外に飛んでいく


 窓を閉めたルシウスは応接用のソファーに座ると頭に手を当てて心底面倒な事になったという表情を浮かべる。脳内ではこれからの方針を決める為の候補を列挙して精査していく


 「先ずは情報収集だね。とは言え慎重に動かないと」


 無意識に口に出た言葉で思考を纏めると立ち上がって執務机の上に置かれている呼び出し用の魔道具のベルを鳴らす。チリンチリンという高い音が室内に響くと元の場所に戻して再びソファーに座り込んだ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 時は遡り、アルベルトがシオンとクウを保護して数時間後某所


 大理石で造られた装飾が施された美術的価値を感じさせる円柱が左右対称に並び立つ半円の白亜の壁に、聖書に描かれる様なルネサンス期の天井画が描かれた天井近くにあしらわれたステンドグラスが並ぶ、中央にレッドカーペットが伸びる静謐さを感じさせる広い部屋


 その最奥にある半円状の階段の先の聖母マリアをかたどった背中に鳥の様な翼を持つ慈愛を感じさせる柔らかな笑みを浮かべた高さ4m程の女性像の何かを受け止める様に下に伸ばして掌を対称に斜め上に向けた手の下にある玉座に一人の女が座っていた


 一目見て分かる程上質な素材と装飾が施された純白の法衣を着た女は物憂げな表情で足を組み、手摺の片方に頬杖をついていると、数回ドアノッカーを叩く硬質な音が室内に響いた後、この部屋に繋がる唯一の扉である高さ3m程のエデンの園をモチーフにした浮き彫りの装飾が施された両開きの扉が開かれる


 扉を開けた人物はこの部屋の主よりも質が劣ってはいるが一般的な人間から見てもそれなりに上質な物と分かるフードの付いた純白の法衣を纏っていた。フードを目深に被っている上に俯いている為に顔は見えず、体形も着ている法衣がゆったりとした造りの為、男女の判別が出来ない


 フードの人物は音を立てずに階段の前まで歩くと片膝を付く


 「ご報告致します。異端審問官セルタスらの行方が分からなくなりました。更に監視の【眼】も何者かに排除された様です」


 男の様な、女の様な、長い時を生きた老人の様な、それでいてまだ何も知らない無邪気な子供の様な捉え所のない不明瞭で曖昧な声音のフードの人物からの報告に部屋の主は姿勢を戻すと眼を閉じて口を開く


 「そうか。【眼】を潰した者を探せ」

 「ハッ!!其れと、【異界転送実験】の暴走し失踪した【失敗作】の反応が消失していました」

 「【眼】を潰した者との関係は?」

 「不明です」

 「調べろ」

 「かしこまりました」


 フードの人物が退室した後、部屋の主は誰もいない広い部屋でポツリと呟く


 「もしかして【()から来た(・・・・)魔人(・・)()特異体質者(・・・・・)()?…調べる必要がありそうだな」


 その声は誰に聞かれるでもなく部屋の隅に消えた

解説する事はありません

これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いします

それでは皆様、よいお年を!!

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