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40.日本へ

今回の話で1章は完結します。この後は幕間を一話投稿して2章の【日本編(仮)】を投稿します

新キャラも出て来るのでお楽しみ

 「クウ、日本に行くぞ」

 「え?」


 クウはアルベルトの言っている意味が分からないといった様に怪訝な顔をして首を傾げる。まぁ、そうだろうなと思いながら続ける


 「少しこれから教会とやり合う準備をしたいんだ。何時までも此処に引きこもっている事も出来ないしな」

 「そう…ですね…。でもどうやってですか?此処はそもそも地球ではないですよ?」

 「それは大丈夫だ。だが、その前に一つ聞きたい事がある」

 「何ですか?」

 「君の左腕と目はどうしたんだ?」


 俺の問いにクウはビクリと体を大きく震わせると隠す様に顔を伏せて左に体を俺から逸らす。垂れ下がった長い髪の奥から覗く紅い眼には怯えや困惑等の表情が窺える


 「…分からないんです。昔、お母さんとお茶を飲んでいたら急に眠くなって気付いたら…」

 「そうか」


 クウがか細い泣きそうな声で答えると俺は内心で感じる怒りを抑え込む様に短く返す。自分の娘を生贄の材料にしようとする等、アルベルトには許し難い行為だった


 「…気持ち悪いですよね?こんな化け物みたいな腕…」

 「いや、全く?」

 「え?」


 自嘲気味に嗤うクウの言葉に俺は本心からの言葉であっけらかんと返すと、俺は左腕の袖を捲り少しの間瞑目する


 「【シュレディンガー】」

 「あいよ」


 名を呼ばれたシュレディンガーが身体を黒い霧の様に変えてアルベルトの左腕に纏わり付く。眼を開くと左腕は黒い光沢のある獣毛に覆われた鋭い爪を持つ肉食獣の前足の様な形へと変化していた。恐らく俺の眼は今、黒い人の眼では無く真紅の猫目へと変わっているだろう


 「生憎俺達の周りでは珍しくない物でな。全く気にする物じゃない」


 変異した俺の腕を見て口を水から打ち上げられた魚の様にパクパクとさせているクウの前で腕を軽く振って元に戻すと軽く笑っていた顔を真剣な表情に戻す


 「取り敢えず、準備が出来次第此処から出るぞ。初対面の人間である俺を信用してくれとは言わない。だが、今は俺に従って欲しい」

 「…分かりました。よろしくお願いします」

 「終わりました」

 「あぁ、シオン。ありがとう」


 クウとの会話を終えた所でシオンが纏められた資料を持ってきた。俺はそれを受け取ると袋に仕舞い、入れ替わりに包帯を取り出す


 「腕を出してくれ。気休め程度には誤魔化しが利くだろう」

 「分かりました」


 俺はクウの左腕に包帯を巻き終えると荷物を背負ってからクウの手を引いて立ち上がり、机の上に止めていた“偵鳥”を横にした左腕に移してエレベーターを操作する。エレベーターが降りてきた所で二人に短く声を掛けた


 「行くぞ。シュレディンガー、手伝え」

 「しゃ〜ねぇなぁ」

 「分かりました」

 「はい…」


 開いたエレベーターに乗り込み三階の医院長室に戻ると部屋から出て、廊下の崩落した天井に向けて左腕を横に払う様に振って止めていた“偵鳥”を放った


 “偵鳥”は翼を勢い良く羽ばたかせると一瞬でその姿が小さくなって曇り始めた灰がかった空に消える。それを見送った俺はクウから手を離すと右手を突き出し、シュレディンガーと協力して《門の創造》と《術式の偽装》の呪文の詠唱を開始した


 「【我、欺く者。我、偽る者。今紡がれる理を隠し、神秘に至る道筋にヴェールを掛ける者也。――】」

 「【ウルム・グル・ヨグ=ソトース、エルムグル・フタグルム――】」


 その詠唱は凡そ人間が発する事の出来る様な物とは思えない程低く虚ろで、アルベルトとシュレディンガーの一人と一匹での詠唱の筈なのにそれぞれの声が二重にも三重にも聞こえる不規則で脳内に反響する様な抑揚は精神を逆撫でる様な不安を煽る不気味さがあった


 長く不気味な詠唱が終わるとアルベルトの正面の空間が夏場にコンクリートが熱せられて起きる陽炎の様に微かに歪むと、次第にそれは大きくなって直径3m程の透明な空間の渦巻きに変わる


 渦巻く速度は段々と早くなり、端まで向こうが認識出来なくなると中心部に黒い点が生まれ、それは直ぐに空間の歪みを染め上げた


 シオンとクウは一連の光景に驚愕で固まっている


 「繋がった。さて、じゃあ行こうか。【日本】へ」


 俺は固まっている二人に声を掛けるとハッとした様にびくりと体を揺らして俺を見る。不安気な二人に笑い掛けると俺は先導する様にゆっくりと深淵を映す闇を湛える《門》の中へと足を踏み入れた



―――――――――――――――――――――――――――――――――

 日本にあるとある病院の一室。白い清潔な部屋に一人の長い黒髪の頬の痩けた女性が、窓から差し込む夕日に穏やかな顔を照らされてベッドに横たわっていた。直ぐ脇には点滴治療のパックが金属の支柱にぶら下がり、心電図モニターが一定のリズムで波を作り、ピッピッと音を奏でる


 反対側に立つブロンドの髪の女性が、悲しげな表情で横たわる女性を静かに見下ろす


 暫く無言で見つめていた女性は横たわる女性に一礼してから病室から退室する。室内に一人横たわる女性は穏やかな寝息と心電図の音だけが響く

解説

《門の創造》

異なる場所に繋がる《ゲート》を創る魔術。距離によって異なり、最低でもPOWを1失う

又、移動の際には《ゲート》を創る際に消費したPOWと同じ量のMPを消費する

例・消費コストがPOW1の場合、一回通るとMP1消費。往復する場合は二回通るので二倍になってMP2を消費する

但し、アルベルトは【魔人】としての能力でコストは掛からない。この効果は同行者にも適用される

更に同行者以外がアルベルトが創造した《ゲート》を使用した場合、一定確率で【副王】ヨグ=ソトースの領域に迷い込んで捕らわれる

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