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2.模擬戦

一か月毎日投稿頑張ります

 訓練場の倉庫の中で俺は革鎧を着て動きを確かめていた。生前にあった防刃ジャケットに比べると重く動きにくいと言わざるを得ないが何とかなる範囲だった。素材も良い物を使っているようで訓練用にするのは勿体無いと思わなくも無かったが、まぁ、そこら辺は何か考えがあるんだろう


 「アルベルト様。ナイフをどうぞ」

 「ありがとう。レイラ」


 俺は受け取ったナイフを持って確かめる。個人的にはダガーの様な両刃の短剣より使い慣れたコンバットナイフの様な片刃でソードブレイカーの付いた軍用ナイフの方がいいのだが贅沢は言ってられない。刃渡りは目測40cm強と従来の物より大型で、肉厚の為やや重い。俺は少しダガーを振って扱う時のバランスを調整した


 「…こんなものか。レイラ、行こうか」

 「アルベルト様、無理はなさらないでくださいね」

 「分かっているよ」


 俺は腰のベルトにダガーを刺すとレイラの頭を撫でる。と言っても身長が130cm位の俺では背伸びしてやっとなのだが。やってから気付いたがこれセクハラにならないよな?そう思ってレイラを見ると最初は驚いた様に鳶色の眼を見開くが直ぐに嬉しそうにほほ笑んでいた。良かった。嫌がられてなくて


 俺はそれをうれしく思いながら訓練場に戻る。訓練場では兄のエイブラハムが長剣で素振りをして待っていた


 「用意は出来たかい?」

 「えぇ、お待たせしてすみません」

 「構わないよ。では、始めようか」

 「はい。お父様、お願いします」

 「では、これよりエイブラハム対アルベルトの模擬戦を始める。相手の殺害は禁止。勝敗は相手を無力化するか降参とする。双方構えっ!」


 ガリウスの指示でエイブラハムは体の前に長剣を構える。俺は腰からダガーを抜き、右は逆手に、左は順手に持って右を体の前に、左は腰のやや左斜め後ろに構えて開始の言葉を待つ


 「それでは始めっ!」


 開始の指示と共に俺は地面を蹴る。エイブラハムは迎え撃つつもりの様でその場から動かず俺の動きを眼で追っていた。なので縮地で距離を詰め、右手のダガーをエイブラハムの肩に振り下ろす。頸にしないのは下手にダメージを与えて後遺症が残ると困るからだ


 エイブラハムは急に接近した俺に驚くも兄としての意地なのか、それとも訓練の賜物か右手の動きに反応して遮る様に剣を動かす


 なので予定通り(・・・・)右手を素早く引いて、魔力を纏って強化した左手のダガーでエイブラハムの鳩尾を抉る様に突き上げた


 「ガハッ!」


 エイブラハムは体をくの字に曲げて少し浮かせると唾を吐きながら後ろに倒れる。俺はダガーを腰のベルトに刺すとエイブラハムに歩いていき、右手を差し出した


 「大丈夫ですか?お兄様」

 「あぁ、効いたよ」


 エイブラハムは痛みで顔を歪めながらも笑顔で俺の手を取った。俺が引き起こすとエイブラハムは不思議そうに俺に問う


 「それにしても何時の間にダガー何て使える様になっていたんだい?」

 「常日頃から扱える様に修練はしてましたよ?」

 「そうだったのか。知らなかったよ」


 俺の言葉に嘘はないがエイブラハムの台詞も間違っていない。何故なら今の台詞は転生前の事であり、十六歳の時に東京にある軍事学校に入学して以降、近接戦闘の相棒はナイフだった。大型の剣や斧も使えなくはないが余り使い慣れていない為、武器の力を十全に扱えるとは言い難い。因みに銃剣格闘も身に付けているので短槍も同じ位扱える


 「兎に角これで問題ないですね?」

 「あぁ。それに私もお前がどれ程出来るのか興味が湧いた。相手をしよう」


 そう言ってガリウスがエイブラハムと入れ替わる様に訓練場の中央に立って剣を構える


 「さぁ、掛かって来い!」

 「お手柔らかにお願いします、よ!」


 笑みを浮かべて悠然と待ち構えるガリウスに向かって俺は振れ幅に緩急をつけてジグザグに駆ける。2m程の距離で左側から一気に跳びかかる体勢に入る。ガリウスは剣の腹を向けて防御しようとしたので直前で向かう方向と距離を右側に短く修正すると跳躍する


 「はっ!」

 「うおっ!?」


 俺が目の前で着地すると逆手に持ったダガーで突きを放つとガリウスは後ろに下がってそれを避けた。俺は素早くガリウスに向き直ると両手のダガーで連撃を行う。剣での防御や体を捻る事で回避が出来ているが中々隙が見られず攻撃も止まない事にガリウスの顔から余裕が消える


 「やっ!」

 「ぐおっ!」


 ダガーを振った勢いを利用してガリウスの脇腹に向かって魔力を纏って強化した蹴りを放つ。今までダガーだけで攻撃していて先程ダガーの斬撃を剣で防御していた為、反応が遅れ俺の脚がガリウスの脇腹を打つ。思わず声を漏らしたガリウスに向かって更に右手のダガーを振り下ろすと縮地で左側をすり抜けて背後に回った


 すぐさま振り返って俺に向かって振り下ろされる長剣を逆手に持ったダガーの刃で右に受け流すと左手のダガーをガリウスの胸に突き出した。ダガーの先端は革鎧で守られた胸の中央に当たり止まる


 「見事だ」


 ガリウスは胸に当たったダガーを見て驚いた様に眼を見開くと剣を下ろして眼を閉じ、笑みを浮かべて短く称賛の言葉を俺に送る。俺はそれに笑って返した


 「いえいえ、まだまだですよ。お父様が手加減した上に僕に対して慢心していなかったら負けてましたよ。それにその気になればあの攻撃も避けられましたよね?」

 「まぁな。だがそれにしても見事だったぞ」

 「ありがとうございます」


 そう言って差し出された手を俺は握り返す。吹き抜ける涼風すずかぜが連戦で火照った体を冷まし心地良く、気分が良かった

人物紹介

アルベルト・レイガード

銀髪黒目。レイガード辺境伯爵家の三男

転生以前は戦闘の才能があまり無く、部屋で読書している事が多かった

転生後、やや目付きが悪くなる


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