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28.襲撃と逃走

魔術使います

 【オロナミン商会】の馬車の護衛依頼を受けて十五日目、森の中を進んでいた


 あれから十二、三日経った頃から天候が崩れ、風は無いものの土砂降りで視界が悪く、雷鳴と雨音で音が幾らか掻き消され、泥濘ぬかるんだ地面に馬車のタイヤを時折取られながらも魔物や盗賊に見つかる前に抜ける為に走っていた。泥濘に足を取られ、雨による視界不良によって低速の馬車は襲撃するには持って来いの獲物だろう


 俺も馬車の幌の上でローブのフードを被って雨に濡れながら、耳をそばだてて、時折【生命感知】を使って辺りを警戒していると、両側が崖になっている狭い谷間に差し掛かった所で両側の崖の上に複数の生命反応があった。その反応は直ぐに離れると、暫くして数を増やして戻ってきた。知能の高い統率の執れた魔物か盗賊の様だ


 俺は御者台で馬車の操作をしているギルネスに向かって、幌の上から見下ろして告げる


 「ギルネスさん、両側の崖の上、前方に魔物か盗賊がいます」

 「何ですって?数は?」

 「複数としか言えませんね。それらしい影が幾つか見えただけなので」

 「回り込まれた様子はありますか?」

 「今の所なさそうですね。どうしますか?」

 「止まっても襲われるだけです。突っ切ります」


 ギルネスはそういうと馬車の速度をやや上げる。この狭い谷間では馬車一台がすれ違うのがやっとの幅の為、左右に避ける事は勿論、反転して引き返す事も出来ない。止まって囲まれれば、普通に考えてそれでおしまいだろう


 だが、向こうもそれが分かっているのか動きが早かった。崖の上から倒木が落ちてきて道が塞がると、数人の粗末な服を着た男達が崖の傾斜を滑る様に降りてきた。後ろを見ると同じ様に塞がれ、囲まれている。ギルネスが慌てて馬車を止めると男達はニヤニヤとしながら斧や剣を構えてゆっくりと馬車に近付いて来た


 馬車の中から護衛が出てきたが見た所三十人以上いる相手に六人では流石に不味いだろう。仕方ないので働くとしよう。空を見上げると、相変わらずの豪雨で時折、雷鳴が轟いている


 だからそれを(・・・・・・)利用する事にした(・・・・・・・・)


 「【我は今、天に命じる。雨よ、乾いた大地を今こそ潤せ。陽よ、その光で作物を育てよ―」


 俺は幌の上で静かに詠唱を始める


 それはこの世界に存在するイメージを具現化するシステムを補助する為の暗示等では決して無い。太古から潜む異形の狂気の科学と、有史より尚も古くからそれらに抗った偉大なる先人達の研究の結晶たる魔術はまさしく理を捻じ曲げ、事象を書き換える外法のうた


 それが今、アルベルトの口から今尚荒れ狂う雷雨を支配せんと誰にも聞こえぬ声で静かに紡がれる。大量の雨を降り注ぐ黒く分厚い雲の表面に走るいかずちは徐々にその量を増し、バチバチと音を立ててアルベルト達の頭上へと何かを溜める様に集まっていた


 「―我はクロノスの代行者なり!天よ、我が命に従い断罪の雷霆を落とせ!】《天候の操作》っ!」


 アルベルトが最後の一節を言い終えたと同時に黒雲が白く瞬き、次の瞬間、正面にいる盗賊達に向かって光の柱と呼ぶべき一条の極太の雷が落ちた


 劈く轟音にギルネスや護衛達は身を竦ませて耳を押さえ、馬はパニックを起こして暴れる。そして落下地点にいた盗賊達は前方の道を塞ぐ倒木ごと消し飛び、馬車の近くにいた者は衝撃に押されて倒れる。俺は幌から御者台に飛び降りるとギルネスから手綱を奪い、馬を宥めると護衛に向かって叫び、そのまま走りだした


 「良し!お前ら、早く乗れ!」


 その際、倒れていた盗賊を轢いて大きく馬車が揺れて、ギルネスが壁に頭をぶつけて意識を取り戻すと俺を驚いた表情で見る


 「ロテアウルさん、馬車の操作出来たんですか!?」

 「昔、練習してましたからね。このまま逃げますよ!」


 その間に護衛達が馬車に乗り込んだ事を確認すると馬車の速度を上げる。そして両側の崖の端に落雷を起こし、豪雨で元々地盤が緩んでいた事で崩れた土砂や落石で道を塞いだ


 何人か飲まれた様だが気にしない。数日間この道を使えなくしたが非常事態だったので気にしない!


 まぁ、飲まれたの盗賊だし何か言われても偶然とでも言えば良いやと思っていると、ギルネスが声を掛けてきた


 「ロテアウルさん、もう大丈夫です」

 「分かりました」


 俺はそう言うと手綱をギルネスに返す。雷雨がやや収まり、日が落ちて薄暗くなってきた頃に道幅が広くなった辺りでギルネスは馬車を止めると大きく溜息を吐いた


 「いやはや酷い目に遭いましたよ」

 「本当ですよ。私は荷台に戻らせてもらいますよ」

 「えぇ、お疲れ様でした」


 俺が荷台に戻ると、中には護衛達が横になっていた。フードを被ったまま俺は濡れた体を叩いて水分を落とすと、踏まない様に奥に移動して壁を背に座る。するとシュレディンガーが近くの積荷の隙間から現れ、足の上に乗ってきた


 シュレディンガーは胡乱な目で俺を見上げると短く問いかける


 『魔術使ったな?』

 『あぁ、問題ないだろ?』

 『お前がそう思うならそうだろうよ。所で後、どれ位だ?』

 『後、十日位だ。野宿が多いからもう少し早いかもな』

 『そうか』


 そう言うとシュレディンガーは丸くなって寝息を立て始める。俺は荷物から革で包まれたカ〇リーメイトの様な携帯食料を一つ取り出すとモソモソと食べる。脂っこくパサついたそれで喉が渇き、水を飲むと思わず一言呟く


 「クソ不味いわ、これ」

解説

《天候の操作》

クトゥルフTRPGのルルブにも載っている魔術の一つ。MP10につき天候のレベルを一段階変化

尚、アルベルトが使用した魔術は魔改造がされている為、追加のMPを込める事で落雷の落下地点の指定や竜巻の結界の作成を可能にしている

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