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27.依頼

 翌日、俺は関所近くにある馬車の待機所に来ていた。俺は待機所を見回すと、目的の馬車を見つけてそちらに向かって歩いていく。周囲の物よりやや大きい実用性を重視した装飾の無い要所を鉄で補強した木製の馬車の近くには既に数人の専属の護衛とみられる統一の金属鎧を着た男女と、小太りの指輪や絹らしき高そうな服を着た男がいた


 俺は片手を上げるとこの馬車の持ち主であろう小太りの男に声を掛けると、小太りの男はやや驚いた様な表情を浮かべて尋ねてきた


 「えぇっと、貴方が【オロナミン商会】の者で宜しいでしょうか?」

 「えぇ、【オロナミン商会】のギルネスと申します。貴方は?」

 「依頼を受けたロテアウルと申します。一応、ランクはBですよ」


 俺はそう言うと銀のプレート(・・・・・・)を取り出してギルネスに見せる。ギルネスは先程よりも驚いた表情を浮かべて俺をまじまじと見ると、感心した様な声で年齢を聞いてきた


 「いやはや驚いた。今、幾つですか?」

 「フフフ、秘密ですよ。まぁ、よく若く見られますけどね」

 「中々心強いですね。では、【エルガド】まで宜しくお願いしますね」


 俺は年齢をはぐらかして答えると、ギルネスは笑みを深くして手を差し出す。その際、ギルネスの眼は俺の腰に下げるダインスレイフ=グリムに向けられており、柔和な笑みの中にある目は、その表情の仮面では隠し切れない欲深さが漏れ出していた


 「最善を尽くしますよ」


 俺は不快感を胸に秘め、向けられている視線の事を分からない振りをして笑みを浮かべて、ギルネスが差し出した手を握り返して握手をする。俺は他のメンバーに頭を下げると馬車の荷台に座り、昨日の依頼を思い出していた

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 昨日、アマルに呼ばれて執務室に行くと、笑みを浮かべながらもやや緊張した面持ちのルシウスが書類の積まれた執務机の前にあるソファーに座っていた。俺が入り口側のソファーに座ると、ルシウスが口を開いた


 「やぁ、依頼があるけど構わないかい?」

 「仕事をしにきたからな。それで何をすれば良いんだ?」

 「要塞都市【エルガド】の近くにある遺跡の調査を依頼したい。それも極秘でね」

 「どういう事だ?」

 「あそこは神話で関わる遺跡として【ニクル聖国】が立ち入りを規制していてね。ギルドとしては遺跡の情報が欲しいんだ。君は神なんてどうでも良い上に実力もあるからね。何とかして遺跡の調査をお願いしたいんだ」

 「まぁ、構わないがもう少し情報が欲しい」

 「先ず、【エルガド】は分かるかい?」

 「当たり前だろ?【レイガード】領の隣街だ」

 「だから当然、【ギルム・ヘルムの大森林】に面している。遺跡はそこにあるらしい」


 ルシウスはそこまで言うと顔を不快そう、そして悔し気に顰めて話の続きを言う


 「後、最近、【ニクル聖国】の【異端審問官】が付近に来ているらしい。奴らは救済を謳う狂信者の殺人鬼集団だが。【ニクル聖国】の後ろ盾がある為、我々は手を出せないんだ」

 「要は始末しろと?」

 「話が早いね。お願い出来るかい?」

 「むしろ、それが専門だったからな。喜んで引き受ける」

 「良かった。さて、何時出る?」

 「明日出よう。その前にギルドカードの偽装(・・・・・・・・・)って出来るか?こういう仕事をやるには足が付かない様にしたい」

 「分かった。Bランクの仮のギルドカードを発行しよう。名前は?」

 「そうだな……ロテアウルにする」

 「変わった名前だね。分かったそうしよう。アマル、頼むよ」

 「了解したよ」


 出入口の横に立っていたアマルにルシウスがそう言うと、アマルは短く了承して退室する。ルシウスはそれを見た後、俺に顔を戻す


 「直ぐに出来るよ」

 「そうか。俺は【エルガド】に向かう護衛か何かの依頼を探してくる」

 「だったら【オロナミン商会】のギルネスという男の依頼を受けてくれ」

 「何故だ?」

 「彼もどうにもきな臭くてね。お願い出来るかい?」

 「分かった」

 「出来たよ」


 話が終わるのとほぼ同時に扉が開かれて手に銀色のギルドカードを持ったアマルが現れる。俺はそれを受け取ると屋敷に戻り、翌日の早朝に髪を黄色く染め、前世の時に着ていた軍服に似た仕事着の丈を直すと、それと上にローブを着て、腰にダインスレイフ=グリムを下げると、食料等が入った革袋を背負って馬車の待合所へと向かった

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 回想を終えて意識を戻すと、既に馬車が走りだして街を出ていた。舗装されていない土が丸出しの道をガタガタと揺られながら、目の前に広がる草原と小さくなっていく【ガルグルム】の外壁を茫然と眺めていると、風を浴びて目を細めていたシュレディンガーが頭から降りて、足の上に乗ってきた


 「どうした?」

 『暇だ』


 視線下げずに俺が尋ねると、シュレディンガーは短くそう答える。俺は溜息を吐くと大きく欠伸をするシュレディンガーに向けて呆れた声を出す


 「まだ街を出たばかりだぞ?もう少し我慢しろ」

 『まぁな。しかし、バイクは完成していたんだからそれ使えば良かっただろ』

 「入る時、面倒だろ。それに折角だから経験するべきだろ」

 『そうかよ』


 シュレディンガーは胡乱な目で見てそう言うと、完全に興味を失くしたのか丸くなってそのまま寝息を立て始める。俺は再び溜息を吐くと、起こさない様に横に移動させ、景色を眺めるのを再開した。暖かな日差しが降り注ぐ青い空には雲一つなく、まだ天気は持ちそうだと感じた

解説

【オロナミン商会】

大商会の一つ。ギルネスは輸送担当の一人

武器や回復薬等を主に取り扱っている。別に栄養剤を売りにしている訳ではない

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