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24.騎士団長戦再び

団長戦2です

最後の方に少し過去に関わる話があります

 応接室から出た俺は騎士団の訓練に参加していた。簡単に言うと一対多人数で五分間の模擬戦である。因みに《練気術》は使用していない


 「クソッ!当たらな、ウオッ!?」

 「危な、って痛っ!?」

 「ほらほら、まだ時間は残ってますよ~?ほらそこ!」

 「ウオッ!?ってうわぁあ!?」


 俺は振るわれる剣をバク宙で間に入って躱すと、空中でワイヤーを巻き付けたナイフを投げて操り反撃する。それに注意が向いている隙に他のワイヤーの付いたナイフを操って牽制しながらナイフを投げた騎士に肉薄して足を払って転倒させた


 「そこまで!!結局、当たらなかったか」


 ジークフリートの言葉で俺達は構えを解く。俺は手を軽く振ると、ワイヤーを引いて左右二本ずつナイフを指の間に回収した


 「ふぅ。良い運動になりましたよ」

 「そうか。さて、では大切な部下の無念を晴らさせてもらえるか?」

 「構いませんよ。やりましょう」


 話ながらそれぞれ片方のナイフを仕舞うと、騎士達から離れた俺とジークフリートは互いに向かい合うと静かに構える


 「では、…始め!」


 騎士の一人の合図で二人は一気に接近する。俺は中程まで行くと強く踏み込み左手のナイフを額目掛けて投擲した。ジークフリートは剣を翳して弾くと最小限の動きで横薙ぎに斬りつける。俺は直前で前転すると頭が下になった所で腕と足を伸ばして剣を蹴り上げた


 剣を打ち上げられて無防備になったジークフリートに向けて片手でナイフを投擲するが、ジークフリートは受けた力に逆らわず後ろに転がる事でナイフはそのまま空を切った。俺は腰からナイフを取り出すと空中で体を捻って手首の動きと回転を利用して投げる


 ジークフリートは投げられたナイフを剣の腹で逸らすと駆け出し、真上から振り下ろす


 「はぁああああああ!!」

 「ふっ!よっ」


 俺は腰から左手で逆手に抜いたナイフの腹で剣を滑らせて逸らすと空いた右手首を回してから引き、二本目と三本目に投げたナイフに取り付けたワイヤーを操って刃の向きを反転させると時間差をつけて一気に引き戻す


 ジークフリートは後ろを見ずに左に移動したので俺は二本目のナイフの峰を指で軽く押して反転させると三本目のナイフを打ち上げて回転させ、ジークフリートに向かって峰で柄を打って飛ばす。ジークフリートは剣で払うと距離を詰めた


 「よっと」


 俺は一本目のワイヤーを引くと大きく横薙ぎに回す。ジークフリートはそれを察知して素早く地面に伏せるとワイヤーが空を切り裂いた。それと同時に左手を振り下ろし、ワイヤーを操ってナイフをジークフリートに真上から叩きつけた


 直前で横に転がって回避したジークフリートがいた場所の地面が轟音を立てて爆ぜる。土煙がもうもうと立つ中からジークフリートが飛び出し、剣を構えて斬りかかる。俺は半身になると左手を引いてワイヤーを引き、剣を受け止めると右手のナイフを突き出した


 「ふっ!」


 ジークフリートは素早く剣を引くと、剣の腹でナイフの刺突を防ぐ。更に、後ろに下がる事で衝撃を減少させ、剣を振るい易い間合いを作り出した


 「はぁっ!」


 ジークフリートが振るった横薙ぎに剣を、俺は飛び越えるとナイフを投げて剣にワイヤーを巻き付け、着地と同時に引っ張った。ジークフリートは剣で斬ろうとするが切れず、解こうにも絡まり、アルベルトが解けない様に動かしているので叶わない


 「おっと!…先程も思ったが細いのに丈夫な糸だな」

 「鋼鉄線ですからね。さて、斬れない様ですがどうしますか?」

 「そうだなっ!」


 剣の動きを封じられたジークフリートは話ながら剣を大きく引くとアルベルトに向かって体当たりをする。アルベルトは油断していたのか一瞬、反応が遅れながらも跳躍すると、ジークフリートの肩に手を付いて飛び越えた


 更にアルベルトはジークフリートの首にワイヤーを絡めようとするが、ジークフリートが勢いよくしゃがみ込み、更に剣を斬り上げた。アルベルトは剣に巻き付けたワイヤーを外し、操り絡めて網状の即席の盾を作ると剣を受け止め、弾かれた


 後方宙返りをして空中で体勢を整えて着地したアルベルトはナイフを構えて腰を落とす。剣に巻き付いていたワイヤーが外れて自由になり、剣を構えて迎え撃つ姿勢のジークフリートにアルベルトが突撃しようとしたその時


 「そこまで!」


 騎士団員の一人の男が終了の宣言をした事で、両者はその場で構えを解いた


 「仕留めきれませんでしたか。私もまだまだですよ」

 「そんな事はありませんよ。かつて経験した魔物の氾濫(スタンピード)の時の死線を潜り抜けた記憶が蘇る思いですよ」

 「その圧倒的な危機察知能力は流石、王宮騎士団長といった所でしょうかね?」

 「そんな大層なものではないですよ。只、生きるのに必死で気が付いたら身に付いていただけです」

 「成程。やはり大切なのは経験ですね」

 「そうですね。では私達は一度、宿舎に戻りますがアルベルト様はどうしますか?」

 「だったら私は図書室にでも行きますよ」

 「ではまた何時かお願いしますね」

 「えぇ、それでは」


 俺はジークフリート達と別れた後、図書室に向かって歩いていると向こうからセレスティアが数人のメイドと共に歩いてくる事に気付く。初めて会った時と違い、赤系で統一された装飾の少ないドレスを着ている


 「おや、セレスティア。何処に行くの?」

 「あら、アルベルト様。図書室から部屋に戻る所ですわ。もし宜しければ一緒に紅茶でもどうです?」

 「それではお付き合いしましょうか」


 俺がそう言うとセレスティアは嬉しそうに微笑む。そして俺はセレスティアの後についていき、王城の中庭に面したテラスに向かった。テラスの中央には白い装飾の施された大理石の机と深い暗赤色のクッションの付いた椅子が二つ置かれて、中庭には青々とした芝生と、様々な花が咲き誇る庭園が見える


 俺はセレスティアが先に座った事を確認してから椅子に座ると、クッキーの様な焼き菓子が載せられた銀の盆とティーセットが載せられたワゴンがやって来た


 メイドの一人が手際よくそれらを並べると、ティーカップに紅茶を見事な所作で注ぐ。眼の前に置かれた紅茶は綺麗な紅色でミントの様な香りがする。一口飲むと程よい温度で、まろやかな甘みの中にスーっとする後味があった。焼き菓子もサクサクとした食感がして、練り込まれていると思われる果実の甘さが紅茶と合っていた


 「…美味しいな」

 「スツール茶といって私の好きな紅茶なんです。お菓子もお口にあった様で良かったです」


 暫く互いに紅茶を静かに飲んでいたが、セレスティアの一杯目の紅茶を飲み終えた所で、セレスティアが口を開いた


 「アルベルト様、お聞きしたい事があるのですけど宜しいですか?」

 「何ですか?」

 「あの時、お父様が言っていた転生者というのは本当ですか?」


 セレスティアのその問いに、俺は動きを止めると持ち上げていたカップをソーサーの上に戻す。浮かべていた笑みを消すと、真っ直ぐセレスティアを見た


 「えぇ」

 「貴方の強さと関係があるらしいと聞きましたが転生する前の話を聞いても良いですか?」

 「聞いて面白い内容ではないよ。敢えて言うなら全てを呪い抗い、そして届かなかった男だったかな…?っと、雰囲気が悪くなってしまったね。今日は失礼させてもらうよ」

 「あ、はい…」


 俺はセレスティアの問いに僅かに残った波打つ紅茶に目を落とし、自嘲気味な笑みを浮かべて答える


 脳裏には周りが燃える湾口で自分を地に伏せたスーツ姿の筋骨隆々とした2m程もある強面のサングラスをした男と、男と俺の間に立つある女性が顔だけ振り返って優しい笑みを浮かべているのを地面に倒れている事で見上げている光景がフラッシュバックしていた


 俺は未だに抱いている後悔と怒りを抑え込み、直ぐに顔を普段の物に取り繕うとそのまま席を立ち、そのまま王城を出た

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「……」


 セレスティアはアルベルトがいなくなった後も少しの間、椅子に座って出口の方を見ていた。貴族、それも王族という事もあり、人の感情を読み取る事に長けている彼女には、アルベルトの寂し気で自嘲する様な笑みの奥にある今尚残る絶望と憎悪、怒りを感じ取っていた


 「私はその傷を癒せるのでしょうか?」


 セレスティアのその小さな尋ねる声は一陣の風と共に消えたのだった

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